ヤシの葉の団扇で生活向上
2016年04月09日付 Prothom Alo紙
この暑さにはヤシの葉の団扇の風が心地よい。扇風機の恩恵を受けられないひとたちに、ヤシの葉製の団扇は今も大いに愛好されている。ベンガル暦の大晦日と年の始めの日に行われる祭りでは、国内各地でこの色とりどりの団扇が売られているのを目にすることができる。ボグラ県のカハル郡、パイコル・ユニオン(行政区)に属する3つの村の女性たちは、すべての種類のヤシの葉団扇を作っている。家族のかじ取り役は男たちだが、女性たちは家事のかたわらヤシの葉団扇を作って家族の針路を変えた。かつて3つの村の人たちの仕事と言えば日雇いぐらいで生活は苦しかったが、今は団扇を作ることで、子どもたちも交えたゆとりのある暮らしが可能になった。
〈団扇づくりの村の1日〉
3つの村は、カハル郡の中心の町から20キロほど北にあるパイコル・ユニオンにあり、互いに近い。先週の金曜日訪ねてみて、3つの村ではそれぞれ別の種類の団扇が作られていることが分かった。アタルパラ村では(取っ手を軸に回して風を送る)回転式団扇、ジョギルボボン村では(手であおぐタイプの)柄付き団扇、アロラ・ウットルパラ村では折り畳み型団扇が作られている。冬の終わりから春にかけて、つまりファルグン月から団扇を作る仕事は始まる。まず、各家の庭に生のヤシの葉を広げ、乾燥させる。男たちは青竹を加工し、女性たちは針と糸を使って葉を縫い合わせて団扇を作り、色をつける。暑い季節だが、団扇の需要を満たすため、息をつく暇もない。かまどで食事の仕込みを済ませてから、団扇づくりにとりかかる。この時期には子どもたちも勉強や遊びのかたわら、両親とともに団扇づくりに精を出す。国のあちこちから買い付け業者たちが団扇を仕入れにやってくる。団扇職人たちにお金を前払いして団扇を作らせている業者も少なくない。
〈ヤシの葉と竹の仕入れ〉
アロラ村、アタルパラ村、ジョギルボボン村にはヤシの木がたくさんあるわけではないし、大きな竹林もない。では、団扇を作るためのヤシの葉や竹はどこから来るのか?アタルパラ村のロイムッディン・アコンドさんの年齢は75歳を越えている。ロイムッディンさんによれば、ラジシャヒ県のいくつかの郡から地元の買い付け業者がヤシの葉を届けてくるという。竹はボグラ県の行政の中心部にあるヌンゴラ・ユニオンのドシュティカ、バルプル、シカルプル、ゴラガリ、アクライル村から運ばれて来る。ロイムッディンさんは妻のアシヤ・カトゥンさんとも、孫のモハブル・ロホマンさんとともに回転式のヤシの葉団扇を作っている。これらの村ではいつごろから団扇を作る仕事をしているのだろうか。ロイムッディンさんに尋ねてみた。「いつから団扇を作っているか、それは難しい質問だね。だが私の両親もこの仕事をしていた。今は自分がやっている。次は息子たちがやるだろう。ここではずっと団扇を作っている。親父の時代には良い道路がなかったから、親父たちは必死に働いても何も良いことはなかったし、仲買人たちばかりが良い思いをしていた。良い道ができたおかげで直接仲買人たちに売ることができる。少しは金もおがめるようになったというわけだ」
〈女たちは一日中忙しい〉
回転式団扇を作っているアタルパラ村のロイムッディンさんの隣の家では、ハジェラ・ビビさんが、嫁のであるシャントナ・ベゴム、娘のモリヨム・カトゥンさんとともに団扇に取っ手を取り付け、彩色する仕事をしている。ハジェラ・ビビさんによると、100個の団扇をつくるのに2日間かかり、団扇ひとつにつき8~9タカの経費がかかるという。仲買人たちはそれを10~12タカで買い上げる。「現金で材料を買えば団扇一本当たり3タカぐらい儲かります。でもお金が足りないので、仕入れ業者から前金を払ってもらって団扇を作っています。ここ何ヶ月かは注文分の団扇を作るのに食べる間も寝る間もないほどです」とハジェラ・ビビさんはいう。暑いこの季節に8000~10000本の団扇を作るのだという。
「多くの女性はアシャ、TMSS(テンガマラ・モヒラ・ショブジ・ションゴ、女性向けのマイクロクレジットを行なっているNGO)、グラミン銀行などのNGOからお金を借りています。でも毎週分の返済をするために、ときには安い値段で団扇を売らなくてはならないこともあります」とハジェラ・ビビさんは続けた。政府系の銀行から季節ごとの融資を受けられるようになれば、地方在住の職人としてとても助かるのだが、という声を何人かの女性から聞いた。
〈柄付き団扇の村で〉
ジョギルボボン村では柄付き団扇を作っている。柄の部分はダタと呼ばれる。この村には仕入れ業者が3人いる。アブドゥル・ロティフさん、アブル・カシェムさん、それにユスフ・アリさんの3人はそれぞれ自宅の女性たちと一緒に団扇を作る一方で、村内の家庭に団扇の材料を卸し、一本当たり2タカの工賃で団扇を作らせている。アブドゥル・ロティフさんによると、柄付き団扇を作るためにラジシャヒの色々な地域からダタとヤシの葉を仕入れているという。これらの地域の仲買人たちはヤシの葉を100枚につき500タカで村に届けてくる。それらを糸で縫い合わせ、色を付けてできた製品をロティフさんたちは100枚当たり2500タカで各県の仲介業者たちに卸す。団扇一枚につき2.5タカから3タカぐらいの利益が出る。シーズンごとにロティフさんが作らせている団扇の数は2万枚から2万5千枚になるという。
〈折り畳み型団扇の村〉
アロラ・ウットルパラ村の団扇職人たちは折り畳み型の団扇を作っている。村の100軒以上の家庭がこの仕事に従事している。村をまわると、団扇を作っている光景が見られる。アクラム・ホセンさんの家では軒先でアクラムさんが団扇を作り、妻のデロワラ・ベゴムさんが彩色をしていた。ヤシの葉だけで100枚500タカで仕入れているという。その他にカタ(釘)、糸、絵の具代として100枚当たり300タカかかる。「回転式や柄付き団扇に比べ、折り畳み型を作るには手間ひまがかかる」とアクラムさんは言う。アkラム・ホセンによると、ただのヤシの葉が、それぞれ100枚500タカで、トゲ(ペレク)と糸、色付けの経費がそれぞれ100枚300タカで買い取られる。彼は「ダタ(折り畳み)団扇や風を送る団扇よりも、ポケット団扇を作る方が手間がかかる。」という。「国中で電気が使えるようになっているから団扇の需要は減るはずなのだが、逆に需要はずっと増えている」そうだ。
パイコル・ユニオン議会のアムジャド・ホセン議長は、「この3つの村の500以上の家庭が団扇づくりに従事している。農業銀行を通じて融資を受けられるようにすればもっと良いのだが。多くの家では金貸しから借金して、高い利息を払わざるを得ない」と語っている。
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(翻訳者:加藤梢)
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