報道の自由への遠い道のり
2016年05月03日付 Prothom Alo紙

報道の自由について調査している国際機関や団体の発表したランキングによれば、バングラデシュで自由で束縛されない報道が確立されるまでは、未だに遠い道を行かなければならないようである。国内の主なジャーナリストや人権活動家たちも同様の考えだ。そうした人たちはその原因は脆弱な民主主義にあると思っており、民主主義の発展と共に報道の自由も広がると見ている。
今日5月3日は国連の「世界報道自由デー」で、世界各地で関連の催しが行われている。今年のテーマは「情報へのアクセス」だ。
マスコミに関するアメリカの機関「フリーダムハウス」の報告によれば、報道の自由の面で極めて思わしくない状態にある国のひとつがバングラデシュだ。フリーダムハウスが作成した、2015年の報道の自由度指数ではバングラデシュの順位は7ランク下がっている。ただしパリに本部をおく国際団体「国境なき記者団」の報道の自由度ランキングでは、世界の180カ国のうち、バングラデシュの順位は144位と前年にくらべてふたつ上昇している。一方、アメリカ国務省の人権に関する2015年の報告書では、バングラデシュ国内で宗教的過激派が複数の進歩的ブロガーを次々と殺害したことが取り上げられており、ときによっては新聞やその他の意見発表の場に政府による規制がかかることも我が国の人権に関わる問題だと指摘されている。報告書ではさらに治安維持部隊による報復的な措置を恐れて、バングラデシュのジャーナリストたちのなかには自主規制の傾向が見られると述べている。また「記者たちを守るための委員会」(CPJ)による別の報告書では、バングラデシュでジャーナリスト殺害事件をめぐる裁判が行われなかったことが指摘されている。こうした例が見られた国のうち、件数の多さからいってバングラデシュは世界で12番目とされている。
このような状況のもと、今我が国ではマスコミを対象とした報道評議会法の改正が行われようとしている。それと並行して政府は新たな報道規範および法、さらにネット新聞についての規範を作成中で、その作業はすでにかなり進行している。こうした法や規範についてはジャーナリストや報道関係者から批判が出ている。そうした人たちのなかには、政府はマスコミを規制したいのだと言う人もいるが、これに対して政府は規制ではなくマスコミのための既存の法律をさらに時代にふさわしいものとし、規律を持たせるための規範作りを行っているのだと主張している。
政府はマスコミにさまざまな形で圧力をかけているとの批判もある。最大野党BNPに近い人物として知られているジャーナリスト、ショフィク・ロホマン氏が、殺人および誘拐未遂容疑で逮捕された事件では、世界のさまざまな機関から憂慮の声があがっている。また日刊英字紙デイリー・スターのマハフズ・アナム編集長が79におよぶ件で裁判所に告訴されたことで、世界の多くの団体が憂慮を表明している。
これに対し首相の情報担当顧問をつとめるイクバル・ソブハン・チョウドリ氏はプロトム・アロ紙の取材に「現在のバングラデシュにおける報道の自由は、過去のどんなときよりも整備され、開けており、伸長しつつあってかつ確固としたものになっている。国際的な水準からいっても、マスコミの自由の点からいってバングラデシュは前進している。このことは評価されている。今は行政命令で新聞の発行を停止することはできないし、記者が書いた記事を理由に裁判所が逮捕状を発行することもできない」と述べた。同氏はさらに「民主主義の発達とともに報道の自由も進展する。だが民主主義の発展のためにはジャーナリストたちも尽力しなければならない」と語ったが、首相顧問のこうした発言に同意できない、と英字日刊紙ニュース・トゥデーのリヤズウッディン・アハメド編集長は言う。「民主主義が脆弱な所では報道の自由は存在し得ない。バングラデシュの新聞は常に圧力にさらされている。見た目には圧力などなさそうではあるが、この国のマスコミは自主規制を強いられている。政府がマスコミを規制するための法整備はしていないことは確かだ。そうではあるが最近になっていくつかの法律をつくる動きや、恫喝、行政機関からの圧力、広告主を使ってマスメディアに経済的な圧力を加えることなどが行われている」。リヤズウッディン編集長はさらに「(1991年の)エルシャド政権崩壊の後、マスメディアの発展に明かりが見えたのだが、今やその光は乏しくなってしまっている」と語った。
またエクシェ・テレビのモンジュルル・アハサン・ブルブル首席編集長は「バングラデシュのマスメディアは100パーセント自由ではない。部分的に自由なだけだ。マスコミが自由であるかどうかはふたつのことにかかっている。ひとつは国による圧力であり、もうひとつは国外からの圧力だ」と言う。「政府は直接的には圧力をかけてきてはいない。しかし、マスコミがいろいろな形で脅迫を受け、マスコミの人間が殺害されていることは事実なのにも関わらず、そうした事件の裁判は行われていないし、脅迫者たちが逮捕されることもないままだ。この責任はすべて政府にある。それゆえバングラデシュの報道の自由はまだ中間地点にあると言える」。情報へのアクセスの機会は広がっているものの、原理主義による脅威はそのまま存在している、とモンジュルル・アハサン氏は言葉を結んだ。
一方、民間テレビ局の経営者たちが作っている団体「アトコ(Association of Television Channel Ownersテレビチャンネル社主協会)」の事務局長でチャンネル・アイテレビの報道局長シャイク・シラズ氏は言う。「各テレビ局がそれぞれの行動基準、あるいは行動方針を持つべきだ。そうすれば政府は各局、各社が何をやっていて何をやっていないのか、あるいは何をやるつもりなのかが分かるだろう。しかしそうはなっていない。現在政府は報道規範を作ろうとしている。これがもし報道規範ではなく、報道指針というものなら無用な誤解を招くこともなかったろう」。シャイク・シラズ氏はさらに「マスコミは自由を謳歌している。マスコミが見せたいと思うものを見せることができている。報道の声が押さえつけられているというのは根拠のない話だ。マスコミが自ら自覚と責任を持たなければ、国家が圧力をかけてくるのは当然だろう」と言葉を続けた。
汚職監視NPO「トランスペアレンシー・インターナショナル」バングラデシュ支部のイフテカルッジャマン理事長は声明の中で、「報道の自由への直接・間接的な介入と報道現場で働く人々への嫌がらせや業務妨害を防止することは政府の基本的な義務であり、政府はそうした自由を妨げるような法律的、行政的施策または組織的な行動を慎むべきだ」と述べている。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


(翻訳者:伊藤巧作)
(記事ID:504)