勉強勉強で遊ぶ間もない子どもたち
2016年11月09日付 Prothom Alo紙


(10月13日付)7年生のジャミル・フセインの一日は早朝6時半に始まる。朝8時50分から学校が始まり、午後1時40分に終わる。休日の金曜日を含め週4日塾がある。金曜日以外他の日には学校から直接塾へ行かねばならない。それから帰宅する。塾がない日は午後2時に家に帰り、食事をしてパソコンや携帯電話で遊ぶ時間が取れる。そのあと学校の宿題をやらなくてはいけない。夕方7時には家庭教師のもと勉強が始める、勉強は夜9時まで続く。家庭教師は週に6日やってくる。勉強を終えて夕飯を食べ、またパソコンやテレビ、携帯電話を見ながら過ごす。そして夜11時半までには寝る。
ジャミルはモエモンシンホのある学校の生徒だ。学校には大きな校庭がある。お昼の時間、または学校からジャミルを迎えに行くために雇われたリキシャが学校に着くのが遅れたら、その時クリケットをしたり、少し走る時間が手に入る。しかしそれで心が満たされるのであろうか?
一方、首都ダカの子どもたちは悲惨な状況にある。ほとんどの学校に校庭または遊ぶ場所がないことで、学校に行っても四方壁で閉ざされている。車のクラクション、渋滞、塵やほこりで汚れた空気のため子どもは疲れ果ててしまうのだ。そして勉強以外に歌や踊り、また何か他の競争をしなければならない子どもたちにいたっては、休みの日さえも瞬く間に消えてしまう。
また、働いている子ども、ストリートチルドレン、貧しい子どもなど社会から取り残された子どもたちの小さな頭の上には、家族を養う責任がかかっている。障害のある子どもたちの行く場所はどこにもない。そうした子どもたちにとっては、余暇だの娯楽だのは贅沢以外の何ものでもない。
国連子どもの権利委員会は、バングラデシュの子どもたちの日常生活に休憩、余暇、娯楽と文化的及び芸術的学習・活動がないことについて憂慮を表明した。委員会は昨年九月に子どもの権利条約(CRC)実現についてバングラデシュの第五回定期報告を検証して最終評価を下したが、そこでこの件に関して憂慮を表明した。委員会はこれ以前にも憂慮を表明したが、状況は何の改善もされなかった。
子どもたちは娯楽がほしい:
バングラデシュ情報省による共同プロジェクトのもと「子ども意見調査2013『バングラデシュの政治指導者たちへの子どもたちの願い』」という調査が実施された。
対象となったのはごく普通の子どもたち4200人で、そのうち、都市の子どもは1400人、村に住む子どもは2800人だった。またオンラインで行われた調査には333人の子どもが参加した。ダカ、ボリシャル、チッタゴン、クルナ、シレット、ラジシャヒ、そしてロングプル管区でこの2種類の調査に参加した子どもたちの平均年齢は14歳だった。
調査に参加した子どもたちは、入場料のかからない公園を作ってほしいと言っている。調査では83%の子どもが近所に遊ぶための広場を作ってほしいと言っている。73%の子どもは地元に文化団体を、76%の子どもは子ども向け公園を、67%は運動センターを、3%は図書館、2%は動物園を作ってほしいと話した。
今年3月、バングラデシュ・シシュ(子ども)アカデミーがクルナで開催した「子どもたちと向き合って-2015」という催しでは、出席した行政サイドの係官たちに対し、子どもたちから「学校に遊ぶ広場がないのはなぜ?女子のために別の遊ぶ広場がないのはなぜ?」などといった質問が投げかけられた。この催しは国内子ども特別対策本部(NCF)クルナ局の企画により行われた。
*機器を使った娯楽の影響:
バングラデシュ統計局(BBS)の協力で、パワーと参加調査センター(PPRC)が2012年にダカ市で、ある調査を行った。この調査では余暇の過ごし方に関してダカの市民たちに尋ねた。その結果、89.2%がテレビを見る、22%が博物館、動物園、公園を訪れる、12.3%が子ども向け公園に行く、と答えた。家の外へ行って遊ぶのは2.1%。そして9.4%がテレビゲームまたはパソコンで時間を過ごしているとのことだった。
PPRCは今年チョットグラム(チッタゴン)で調査を行った。これによると、88.9%がテレビを見て余暇を過ごしている。
PPRCのこのふたつの調査では、子どもについて分けて取り上げられたわけではない。しかし子どもの権利の問題に取り組んでいる団体の職員たちからは、「いまの子どもたちはテレビを見て、そして機器を使った娯楽の中で育っている」という声が出ている。
「バングラデシュの都市在住の子どもおよび思春期の若者たちの体重過多と肥満による危機因子:症例研究」という名で2007年に行われた研究では、ダカのダンモンディ、モハンモドプルおよびシッデショリ地区にある、7つの有名校で学ぶ子どもを対象に調査が行われた。これらの学校の子どもたちは、一日に4時間テレビを見ていると分かった。世界保健機関WHOは、5歳から10歳までの子どもは一日少なくとも60分間スポーツまたは他の体を動かす行動をすべきであると述べている。
非政府組織「より良いバングラデシュのために働こう」(WBB基金)が2007年11月に発表した「テレビの望ましくない影響と子どもたち」という研究では、48%の子どもがテレビを見て余暇は過ごすとしている。保護者たちが提供した情報によれば、23%の子どもが一日平均4時間またはそれ以上テレビを見ているという。67%の子どもは、家の近くでスポーツのための施設がない。29%の子どもたちは何の遊びやスポーツもやっていない。この研究はダカ首都圏の様々な学校の7~16歳の子どもたちからデータを取ったものだった。
機器を使った娯楽の影響が子どもたちに及んでいる。今年4月に「環境を守れ運動」を含む合計四つの団体が、子どもの環境、生活習慣、疾病に関する調査報告書を発表した。調査は首都ダカの公立学校と私立学校それぞれ2校の計1457人の生徒を対象に行われた。子どもたちの年齢は7歳から15歳である。この調査によれば、時間通りに食事をしない子どもが74%、体を動かす運動をしないのが59%、ひとりでいたいと思っている子どもは8%、両親に言わせると子どもの体重が少なすぎるか多すぎるというのが33%、病気にかかっている生徒の数は20%であった。
国立精神衛生研究所の子ども及び家庭の精神病理学学科のヘラル・ウッディン・アハメド助教授は、プロトムアロ紙に次のような話をしてくれた。
「私のところに7歳から8歳の子どもを保護者が連れてきた。子どもの問題は鬱気味ということで、あまり話をしたがらない。両親は仕事をしている。学校がひけた後、その子は一日中、家の使用人と一緒に過ごしている。何をするのが好きかという質問に対し、自分が住んでいる建物はとても高く、家のベランダから下を眺めて人を見るのが好きだとその子は答えた。これがその子にとっての娯楽だというのだ」
同助教授は「子どもたちの娯楽の選択肢は狭まってきている。子どもたちはテレビを見ているが子ども向け番組はない。またテレビゲームの大部分が子ども向けではない。こうした娯楽で子どもの社会適応能力が失われてきている」と付け加えた。
児童心理学者のモノワラ・パロビン・ジャハンギリ氏はプロトムアロの取材に、「現在、娯楽と余暇の不足と勉強のプレッシャーで、子どもたちの行動にあらゆる問題がみられる。6年生の子どもを保護者が連れてきたことがある。勉強したことを覚えられないというのだ。5年生まではとてもよい成績だったとのことだった。その子に生活を絵に描いてみせてというと描いてくれたのだが、その絵は、自分が一等賞をとって小切手をもらっている、というものだった。それ以外には何もなかった。その子の生活で楽しみというものはどこにもないのだ」。
*政府の取り組み
政府の児童関連政策は、すべての子どもにスポーツ、運動、文化活動、娯楽、余暇の平等な機会を与えると定めているが、名目的なものになってしまっている。児童・女性省が管轄するシシュ(子ども)アカデミーは、子どもの心理的、身体的および文化面での発達について研究をしている唯一の公的機関だ。同アカデミーは64の全県で業務を展開しているが、郡レベルになるとわずか6郡にとどまる。草の根の大多数の子どもたちが、アカデミーの活動の埒外にあるのが実態だ。それでもシシュ・アカデミーは全国レベルで50種類以上の子どもたちのコンテストを実施している。各警察管区から始まって最終的に国レベルでのコンテストを行なう仕組みだ。しかし競争ということで、子どもたちにとってはプレッシャーとなるばかりで楽しいこととはなっていないとの指摘もある。
シシュ・アカデミーの図書部のレジナ・アクタル部長は、「当アカデミーのプログラムに参加した児童たちの約80%の保護者は、子どもたちが歌か踊りか、あるいはほかの何を習いたいと思っているのかということについて真剣に考えていない。大人たちは自分たちの意見を押し付けているのだ。子どもが絵を描くのが好きでも、保護者はその子を歌や踊りのクラスに入れさせたりしている。首都ダカにあるアカデミーの中央図書館では現在、4000人の子どもたちが思い通りに本を読む機会を得ている」と語った。
なすべきこと:
都市開発の専門家で都市研究センター長のノズルル・イスラム教授は、プロトムアロに「農村部の子どもたちは今のところ、少しは自分で好きなように楽しみの手段を探すことができているが、都会に住む子どもたちにはそうした機会がない。都市部では、子ども向けの公園や広場や娯楽の場所が不足している。学校に運動場がない。家の近所には娯楽のためのなんの設備もない。こうしたことは憂慮すべき状態へとなってきている。この件に関して十分な研究もなされていない。」と述べた。
国連児童委員会最終報告は、家や子どもたちの組織、学校さらには公共の場で子どもたちが遊び、また自発的な活動を行なうよう仕向け、その手助けをするといった取り組みには、十分な財源と技術、そして人的資源を投入することを政府に助言している。
ハラル・ウッディン・アハメド助教授は、「親が子どもに費やす時間には、子どもたちと向き合うことが大切だ」と言っている。

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(翻訳者:大澤友佳)
(記事ID:594)