収入は多いが危険も~ダカの人力車夫~
2019年06月27日付 Prothom Alo紙


ダカ市内で働く人力車夫たちは月平均で11151タカ(約1万4,200円)の収入をえている。これはリキシャと呼ばれる人力車の賃料とガレージ代を差し引いての金額だ。ほぼ半数の人力車夫がこの収入で暮らしていけている。4分の1は収入の一部を貯金に回している。しかしこの他の車夫たちは、リキシャで稼ぐだけでは十分ではない。収入の面はこのようであるが、人力車夫の96%は病気にかかったときは無資格医にかかる。ほとんどの車夫が警官から嫌がらせをされたことがあり、乗客からもひどい振る舞いや暴力を受けている。労働者としての権利について知らない車夫がほとんどを占める。こうした人たちの福祉のための団体はない…
人力車夫たちを対象に行われた調査から、こうした状況が浮かび上がってきた。労働者の権利に関する研究活動を行っているバングラデシュ労働研究所(BILS)が実施したこの調査の結果は、今日木曜日ダカで開かれる催しで発表されることになっている。
経済学者のホセン・ジッルル・ロホマン氏は「我が国の都市型貧困の特徴の1つに、こうした低所得層の人々が都会に来て経済的便宜を得ていることがあげられる。しかし市民としての尊厳の面、働く場所の安全性を地位など、多くの社会的問題がある」と語った。
このような所得層の人々の平均寿命と保健面での便宜に目を向けると、望ましい状況が見えてくるとは言い難い。
BILSの「インフォーマル経済の働き手たちの組織化:ダカ市の人力車夫に関する研究」と題した研究はムハンマド・レザウル・カリム教授とコンダカル・アブドゥス・サラム氏によって行われた。
この研究は主として定量的なものだが、数値データと質的データの関連性にも触れている。調査ではまず、ダカ市内のバッダ、ハジャリバーグ、ジャットラバリ、シャジャハンプルの4つの警察管区内で働く200人の人力車夫へのアンケートが実施された。また20人のガレージ所有者への面接も行った。ダカ市庁と交通警察からも面接を通じて情報を集めた。定量データはSPSSソフトウェアを使って解析された。
研究者のうちの一人、コンダカル・アブドゥス・サラム氏はプロトム・アロ紙に「人力車夫の社会経済的な状態、権利、安全、市民としての便益、住居の状態などを知るためにこの調査を行った。人力車夫たちは都市の重要な推進力となっている。私たちの研究の目的は、人力車夫たちの状況改善に政策立案者の目を向けさせることだ」と述べた。
サラム氏は人力車夫を「重要な推進力」としているが、この調査でダカの60%の市民必要に応じてリキシャを利用していることがわかった。ダカ市庁はリキシャ営業の免許が発行できる唯一の機関だ。そのダカ市庁は1986年に79,558人にリキシャ運転の免許を交付した後は発行を停止している。ダカ市内で今推定110万台のリキシャがあると調査報告は述べている。リキシャによる輸送部門は大量の非熟練労働者雇用のための受け皿となっている。投資は少なくてすみ、この職業を始めたりやめたりするのは簡単で、現金が稼げる。また特別な技能の必要もない。リキシャのもう一つの側面は、簡単に手に入ることである。それを運転するルールもそれほど厳しくないというわけで、農村部から都市にやってくる非熟練労働者たちの拠り所となっているのである。
調査によると人力車夫たちの家庭の平均月給は13,382タカである。このうち68%がリキシャを引くことによってもたらされている。90%の世帯の収入源はリキシャだ。人力車夫たちの3分の1は土地を持っていない。
調査の対象となった人力車夫たちの80%が、ダカにやってきて初めに手にしたのがこの仕事である。この職業に就く前に多くの人(57.1%)が日雇い労働をしており、商業(13.8%)や農業(12.1%)に従事していた人も少なくない。人力車夫という職業を選んだ理由として、多くの人が他の仕事が得られなかったこと、資金と技能の不足を挙げている。
ダカ市内で働く人力車夫は平均して5か月に1回、実家がある村に帰る。しかしほぼ1年中リキシャを走らせている。ダカの人力車夫の62%が週7日、28%が週6日リキシャを漕いでいる。人力車夫たちのシフトは1日1回で、1日あたり約9時間リキシャを走らせている。睡眠やその他のことに使える時間は1日約15時間ということになる。
26才のルベル・ホクさんがダカでリキシャを走らせ始めて7年ほどになる。実家はポンチョゴル県アトワリ郡ミルザプル村にある。村では日雇いの仕事をしていたが、農村の収入は低い。だからより多くの収入を求めてダカにやって来た。今はテジガオン地区のベグンバリに住んでいる。そこにリキシャのガレージがある。毎日の食費とリキシャを借りる料金100タカを支払って、400~500タカが手元に残る。「ダカではアッラーのご意思により悪くない稼ぎができています。稼いだ金で何とかやりくりしています」とルベルさんは言う。しかし警察に理由もなく邪魔されるような道路がたくさんあり、そこに入ろうとすると警官によっては行かせてくれるときもあるが、そうでないときもある。ルベルさんは「理由があろうがなかろうが、警官に座席を奪われることがよくあります。道路で金を渡さないと殴られます」と語った。
収入は良いものの、日に日に上がる続ける日用品の価格がルベルさんの心配事のひとつだ。ダカの96%の人力車夫は自分のリキシャを持っていない。彼らは日に平均113タカを払ってリキシャを借りている。リキシャを走らせることについて書面による契約はない。リキシャのメンテナンスにかかるすべての費用は車夫の負担となる。事故のときも金銭的な負担は車夫に回ってくる。
労働災害:54%の人力車夫が事故を経験している。約44%がバスと接触し怪我をしたことがある。リキシャ同士の接触は多い。この事故による被害はそれほど大きくない。こうした事故では損傷は大きくないとはいえ、バスとの接触事故では大けがをすることがある。人力車夫が事故に巻き込まれた場合、34%は歩行者に救助され、32%は他の車夫らに助けられている。ダカ市内の人力車夫の4分の1が窃盗や強奪のためにリキシャを失っている。この場合も人力車が責任を負うことになる。
病気:リキシャを走らせるために車夫たちは1種またはそれ以上の病気に苦しんでいる。発熱は車夫たちの最も一般的な病気である。これと並び風邪、痛み、脱力感、黄疸及び急逝下痢にかかりやすい。病気になった場合には96%の人力車夫が無資格医にかかっている。
人力車夫への振る舞い:ほとんどすべての人力車夫が乗客からひどい振る舞いを受けたことがあると答えている。客たちから暴力を受けたり悪口雑言を浴びせられたり、料金のことで文句を言われたりする。客から暴力行為を受けたことがあると答えた人力車夫は63%にのぼる。
人力車夫と交通警察との関係も良好ではない。91%の人力車夫は警察から恫喝、侮辱的態度、物理的な暴力など様々な迫害を受けたと言う。警官はリキシャのタイヤの空気を抜いたり、座席を持って行ってしまったり、時には(屈辱を与えるために)耳をつかむことを強いるという。
この調査で明らかになった警察官の振る舞いについて、交通警察のリトン・クマル・シャハ西部方面副長官(DC)は、ダカの交通警察官が人力車夫に対して間違った振る舞いをすることは決してないと述べた。「(ダカ市内で)誰か電動リキシャを走らせようとすれば警察がそれをとどめることはあります。それはそうしたリキシャを走らせることは禁止されているからです。またリキシャの走行が禁止されている区域にリキシャが入ってくることがよくあり、そうした場合は警察が対処することになるでしょう」とシャハ副長官は語り、さらに「警官が不法な振る舞いをしたとすればそれは(監視)カメラに捕らえられるので、そうした行為は起こるはずがありません」と主張した。
一方、人力車夫たちが借りているリキシャの所有者から嫌がらせをされることは少ないという。60%の車夫は所有者からひどく扱われたことはないとしている。しかし40%の運転手は暴言を吐かれたり、屈辱的な目にあったり、時には暴力を受けたことがあると答えた。例外を除けば多くの場合人力車夫とリキシャ所有者の関係は良好である。
ほとんどの人力車夫は自らの労働者としての権利について知らない。人力車夫たちの半数以上が労働団体と関係があると答えたものの、半数以上はその団体の名を知らなかった。またこれらの団体は労働者の福祉のために何の仕事もしていない。62%の車夫が良い組織があればと思っている。
リキシャ労働者同盟のレザウル・コリム書記補は、人力車夫の多くが自らの権利について意識していないと認めた。しかしレザウル書記補は「人力車夫の権利問題については議論されることが少ない。車夫たちの収入は現在増加傾向にあるかも知れないが、彼らは権利を獲得していない。私は公式のさまざまなレベルで人力車夫たちの権利について取り上げているのだが、耳を傾ける人は少ないのが現状だ」と語った。

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(翻訳者:根形奈々)
(記事ID:831)