ジナイドホでヒンドゥー聖職者殺害される~ 止まない殺人事件~
2016年06月08日付 Prothom Alo 紙

バングラデシュ国内で標的を絞った殺人事件(ターゲット殺人)が相次いでいる。チョットグラム(チッタゴン)で警察幹部の妻が殺害され、ナトルのボライグラム郡では雑貨店を営んでいたキリスト教徒の男性が殺された事件から48時間が経過した昨日(火曜日)になって、今度は(南西部の)ジナイドホでヒンドゥーの聖職者が命を奪われる事件が起きた。殺害されたのはアノンド・ゴパル・ガングリさん(70)。これまでと同じく、今回の犯行も白昼に実行された。
過激派組織の動きを追っている「サイト・インテリジェンス」(本部・アメリカ)は、国際的過激派組織IS(イスラミックステート)の広報機関と言われる「アマク」を引用し、この事件についてISが犯行声明を出したと伝えた。ISは日曜日にナトルで起きたキリスト教徒の雑貨店主シュニル・ゴメスさん(70)の殺害事件でも犯行声明を出している。しかし同じ日にチョットグラムで発生した、警察幹部の妻マハムダ・カノムさん死傷事件では、今のところどの組織からも犯行声明は出されていない。治安部隊の上層部は、これまで起きた事件と同様の手口で実行されていることから、今回の3件にも過激派組織が関与していると見ている。
警察と地元筋によると昨日(火曜日)午前9時過ぎ、ジナイドホ県の政治・経済の中心となっているジナイドホ・ショドル郡のノルダンガ・ユニオンのモヒシャルバガル地区で、殺人事件が起きた。首を刺されて死亡したガングリさんは同郡のコラティパラ村に住み、ノルダンガ・バジャルにあるドゥルガ女神をまつったヒンドゥー寺院の僧職を務めるほか、近隣の村に出かけて宗教行事を執り行なっていた。
朝畑仕事に出かけた近隣の農民たちが、コラティパラとナラヨンプルを結ぶ道路上で死亡しているガングリさんを発見し、警察に通報した。事件の目撃者は見つかっていない。通報を受けたジナイドホ・ショドル署の警官が遺体を病院の安置所に移送した。ガングリさんの遺体は司法解剖の後、昨日夕方コラティパラ斎場で荼毘に付された。
被害者の孫のボイシャキ・ガングリさんはプロトム・アロ紙に「祖父は当日自宅で礼拝を終え、集まった人たちに供え物のおさがりを渡してから8時45分ごろ自転車で出かけた。コラシュニ村に行くということだった。それから1時間後に殺害された祖父の遺体が畑に放置されていると知らされた」と語った。
ジナイドホ・ショドル署のハサン・ハフィジュル・ロホマン署長への取材で、自転車に乗っていたアノンド・ゴパル・ガングリさんの後ろを1台のオートバイが後をつけるようにして走っていたという情報が近隣の複数の人から警察に寄せられていることが分かった。オートバイには3人が乗っていたという。しばらくするとオートバイはスピードを上げて走り去り、その後で農民たちはガングリさんの死体を見つけた。警察はオートバイに乗っていた3人が事件に関係していると見て捜査している。
ハサン・ハフィジュル・ロホマン署長によれば、ガングリさんは日常、事件のあった道路を利用しており、犯人たちはそれを知っていたと見られる。「今回の事件の手口は、最近国内の各地で最近起きた他の殺人事件と似たところがあるようだが、現時点では明確に言うことはできない点もある」と署長は語った。
ガングリさんの娘のリナ・ガングリさんはプロトム・アロ紙の取材に「各家を回りお経を読むのが父の日課だった。皆に好かれていた。誰からも愛されていた父が殺されるなんて信じられない」と話した。また地元の学校教師のニルロトン・ラエさんは「お坊様は無垢で飾らない人柄だった。祭祀をするのが仕事で、敵などはいなかった。誰がどうしてこんなことをしたのか、全く分からない」と記者に語った。
ジナイドホ県では宗教関係者および社会的に少数派に属する人たちが殺される事件が、今年になって今回の事件を含めこれまでに3件起きている。最初の事件は1月7日で、ジナイドホ・ショドル郡のベレカル・バジャルで、ホメオパシー(同種療法)医師のシャミル・アリさん(当時82)が自宅の診療所で殺害されているのが見つかった。その翌日ISの名で犯行声明が出され、犯行の理由はシャミル・アリさんがイスラム教からキリスト教に改宗したためだとされた。3月14日には同県カリゴンジョ郡で(バングラデシュでは少数派の)シーア派幹部でホメオパシー医師だったアブドゥル・ラッジャクさん(当時48)が刺殺された。この事件についてもISの犯行声明が出ている。この2つの事件について警察の捜査は進展を見せていない。
この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
翻訳者:伊藤巧作
記事ID:547