バローチスターン州統一地方選挙
2022年05月31日付 The daily Jang 紙
バローチスターン州で9年の長きに亘る期間をおいて都市自治体、市町村委員会、市町村参事会[という3段階の地方自治体]の選挙が実施されたことは,政治的緊張で混乱を極める状況の中で喜ばしい措置である。これにより,有権者の大多数が政党ではなく無所属の候補者により大きな関心を寄せており,自分たちの問題の解決において彼らへの信頼を表明したことが明らかとなっている。日曜日にパキスタンの最大州の34県中32県に亘る4456選挙区で投票が行われ、残りの選挙区では1584人の候補者が無投票で当選となった。これ程大きな数の候補者の無投票当選には、候補者がよほど強力であったか,立候補に関心を示す立候補者が皆無であったこと事実が窺われる。
日曜日の夜に出された非公式の暫定的選挙速報によれば,1310人の無所属候補者が各々の選挙区で圧倒的な優勢を獲得した一方,イスラーム聖職者協会ファズル派が217,バローチスターン大衆党が146,パシュトゥンハー大衆党が94,国民党が64,BNP(バローチスターン国民党)メーンガル派が54,パキスタン人民党が47, パキスタン・ムスリム連盟ナワーズ派が36,そしてパキスタン正義運動が22議席を獲得した。当選者数では無所属が首位に,続いてイスラム聖職者協会ファズル派,次いで3位にBAP(バローチスターン大衆党)が輝いた。クエッタ、ラスベーラ両県の地方自治体の選挙は選挙区の区割りの後に実施される予定である。グワーダル県では「グワーダル権利運動」が33議席中26議席を獲得し,大勝した。同党は海で働く漁師やその他の後進層の権利のために闘う党であるが、グワーダルは中パ経済回廊計画を受けて国際的な重要性を高めており,こうした背景下での地域政党の勝利は異例である。厳戒態勢にもかかわらず,州内の各地で手榴弾やロケット弾,銃の発砲や乱闘と暴力沙汰の事件が発生したが、これは部族間抗争を背景として憂慮すべき事柄でもある。
全体的に,バローチスターン州の統一地方選挙で、有権者にこの傾向が見られたことは,国内政治東枠組みの中でも全利害関係者にとって思案のしどころである。すなわち、有権者は政党より無所属の候補者を選択したのである。ただ、このことは,有権者が政党に失望したという意味に解すべきではない。なぜなら、無所属候補者のほとんどは,政党や政治団体からの支援を受けており,当選の暁には,件の政党や団体に合流することになっているからである。ただ、バローチスターン州を背景にすれば,宗教政党あるいは民族政党のイデオロギー重視の活動家を除けば,有権者の政党支持が常に揺れ動いているという点は確かにある。下位の基礎的なレベルで選ばれる自治体に加え,国民議会、州議会選挙でもこのような傾向が強く見られる。自らの部族的、社会的立場を基盤に選ばれる民族主義者を除いて、たとえどの政党の公認を得て当選しようとも,世間の風向きに従って自身の風向きを変える御都合主義に躊躇しない。このような次第で、これまで恒久的に州内最大政党であることを公言できる政党が生まれた例がない。過去に複数の民族政党が単独政権を樹立した時も,反中央のレッテルを張られてお払い箱となった。バローチスターンの後進性の他の様々な要因に加えて、これもその1つである。これが国内における政治的不忍耐という残念な文化のこれが最大の悲劇である。変化する状況の中で統一地方選挙の後,下位レベルにおいて国民の問題を解決する中でいかなる障害が生まれないことが期待される。
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翻訳者:田中葵
記事ID:1063