首相の国民に向けての演説

2022年05月29日付 The daily Jang 紙
シャハバーズ・シャリーフ首相は、国民に向けての自身初の放送演説において、彼の政権が石油製品の相場を一挙に1リットルあたり30ルピーの値上げを余儀なくされた複数の要因について説明し、併せて貧しい1400万家庭への280億ルピーの救済策も発表した。これに基づき該当する家庭には月額2000ルピーの追加支援金が支給される。
現在の状況の背景に光を当てつつ、首相の言わんとすることはこうであった。すなわち、IMFの厳しい条件をイムラーン・ハーン前政権が受け入れたということであり、そのため、この国を破綻から救うためとはいえ、困難な決定をせざるを得なくなりつつあると。一方前政権が作り出した破滅的な状況からこの国を救うことが急務となっているこの段階において、首相となることは厳しい試練以外の何物でもないと。
首相の弁では無能な政権とは即座に縁を切ることが国民の求めであったので、野党の全政党が一丸となって国民の要求に即応したのであり、パキスタン憲法の定める全ての民主主義的なルールに沿って、この政権交代を確実なものにしたのであるという。初めて門は開かれたのであり、破られたのではない、これは国民と議会、そして憲法の勝利であるという。前政権のあらましを首相は演説の中で提示したが、それを公平に見て事実に反すると言うことは困難である。そのため、一般的に次の問いが発せられている。すなわち、このような酷い状況下で野党に政権を執るどんな必要性があったのか、また、前政権に憲法で保証された残りの期間を全うさせ、次の総選挙において与党と政権を争う方がより得策ではなかったか、と。シャハバーズ・シャリーフ首相の演説の中ではこの種の質問へはこう答えている。
「我々はパキスタンを救うという難題を敢えて受諾したのである。ただし、破滅から逃れ、国を発展の軌道に乗せるためには、たゆまぬ努力と時間が必要であることは我々にもお見通しであった。疑いなく連立政府は、経済を含め多数の部門に蔓延る悪弊を一掃するという極めて難しい問題を受諾したが、これを首尾よく果たすことに我が国の存続が掛かっている。」と。
この難題に十全に対処するためには1年半という期間は確かにあまりに短い。しかしながら、この期間中に物事を正しく方向付けることは可能である。IMFと前政権の間で成立した取り決めを実行することは経済危機から抜け出すためには避けて通れない。また、ガソリンに対する補助金を部分的に終了させるという条件を履行することのプラスの効果は、即座にルピーの価値の対ドル2.5ルピーの高騰、金の価値の2100ルピー下落、一方株式市場では株価指数319ポイントの上昇という形になって現れている。IMFの支援策の再開の効果は確実に期待が持てるし、これを受けてこそ友好国による資金協力や継続的な投資も始まるものなのである。加えてルピーの価値の持ち直しやインフレの緩和にも繋がるであろう。
けれどもその道のりには大きな複数の障害が待ち構えている。電気やガス、石油製品の価格の更なる値上げは確実である。その状況から不法に暴利をむさぼる悪徳業者たちが不当な利益を上げることを完全に防ぐことは政府の責任である。更には、政府支出の可能な限りの削減に加え、全政府高官、すなわち、政府及び軍の高級官僚や国民議会及び州議会議員が得ている待遇や無料ガソリンその他の特典は経済状況が改善するまで一時停止する必要がある。また貧しい家庭に2000ルピーを給付するだけで、社会の上層階級の散財を見過ごすことは正義などではなく、悪である。これを断ち切ってこそ、困難な状況に首尾よく対処することが確かとなり得るであろう。


原文をPDFファイルで見る

同じジャンルの記事を見る


翻訳者:吉池陽南
記事ID:1067