オルハン・パムク、ドイツ出版協会平和賞受賞式典であいさつ(Milliyet紙)
2005年10月24日付 Milliyet 紙

 オルハン・パムクがドイツ出版協会平和賞を「トルコとトルコ人がヨーロッパにもたらした最初のものはもちろん平和である」と語って受賞した。

 作家のオルハン・パムクは、ドイツ出版協会の第56回平和賞をフランクフルトにある157年の歴史あるパウロ教会で行われた式において受賞した。賞を協会長のディーター・ショーマンから受け取ったパムクは、この賞を受けることに大きな名誉と誇りを感じると述べた。

■30分の演説
 パムクは30分間の演説においてトルコ・EU関係に大きく時間を割いた。トルコのEU加盟についての自身の見解がいつも懐疑的な質問をあびることを述べたパムクは、「彼らに今すぐ返事を述べましょう。トルコやトルコ人がヨーロッパにもたらした最初のものは、もちろん平和である。イスラム教の国がヨーロッパへの参入を希望したり、この平和主義的な意思が認められることは、ヨーロッパとドイツに対して自信と力を与えるであろう。私にはヨーロッパに対し夢をいだかないトルコは考えられないが、同じように、トルコに対し夢をいだかないヨーロッパも信じられない」と語った。

■フェネルバフチェは欧州杯にでている
 子供のころ読んだ小説の偉大な作家達はヨーロッパをキリスト教ではなく、個々人において定義づけていることを強調したパムクは、以下のように述べた。「西欧化し、世俗的なイスタンブルの子として育てられた私のような人々には、EU加盟を信じることは難しいことではない。子供のころから応援していたサッカー・チームのフェネルバフチェは欧州のリーグでサッカーをしている。トルコの置かれる場所がヨーロッパであることを信じる何百万人ものトルコ人がいる。」「こんなにたくさん政治的なおしゃべりをして申しわけありません」と述べたパムクは、存在したい世界は「想像力の世界」であると述べた。

■なぜパムクか
 ドイツ出版協会会長のディーター・ショーマンは賞がパムクに与えられた理由を以下のような言葉で明らかにした。「パムクは、民主主義、開かれた社会、思想や言論の自由に関心を抱く。今日の胸の痛む問題に知識があり、これらを恐れることなく取り上げる。人権とマイノリティーの権利のために活動し、トルコの政治問題に関し発言する。真実を明らかにすることに躊躇しない。」

■「トルコ人の政治家が式に参加しなかったことに名誉を感じた」
 授賞式にはドイツ国会の新議長のノルベルト・ランメルト(キリスト教民主同盟)、財政大臣のハンス・アイヒェル(社会民主党)、新政権の次期内務大臣ウォルフガング・シェーブレ(キリスト教民主同盟)、緑の党の総務委員長クラウディア・ロスをはじめ多数の政治家が参加した。式には文化観光省出版部長のユミト・ヤシャル・ギョズムとフランクフルト総領事のサーリヒ・ボアチ・ギュルデレも出席した。式の後トルコの新聞記者に会見をしたパムクは「トルコ政府から一人も政治家が式に来なかった。私も来るとは期待してなかった。誰も参加しなかったことに名誉を感じた。皆自分にふさわしい場所と状況を知っている」と述べた。

■娘のリュヤと・・・
 オルハン・パムクは、157年の歴史ある教会で行われた授賞式に娘のリュヤと参加した。パムクは、ドイツの政界と文芸界を代表する人々に向かって、トルコ語で演説行った。一時は議会として使われた教会でのパムクの演説に来賓者達は何分間もスタンディング・オーベーションをした。

■パムク「エルアドンは頼りなく決断力に欠ける」
 オルハン・パムクは、首相のレジェプ・タイイプ・エルドアンは、自分に対する訴訟とは関係がないと信じているが、訴訟が可能になった背景には首相の助力があったのでは、と示唆した。パムクは「彼は頼りなく決断力に欠けるという点で問題があると思う」という表現を使った。
 ニューヨーク・タイムズの記者ステッペン・キンザーは、パムクに対する訴訟がトルコ・EU間の加盟交渉を複雑なものにさせたとし、記者に話をした外務大臣アブドゥッラー・ギュルは、パムクに対する起訴に好意的でないと報じた。ギュルは「これらのことは好ましくない。言論の自由はトルコでは守られている。検事のひとりがファイルを開けたからといってこの裁判が終わったことにはならない。判事が決定をするだろう」と述べた。

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( 翻訳者:堀ノ内 夏子 )
( 記事ID:1158 )