2005年11月14日付シャルグ紙2面
【政治部】国会は昨日の公開審議で、ガソリンの輸入に対する財政支出に関する法案を上程した。しかし3時間にわたる審議にもかかわらず、採決は行われなかった。
昨日、同法案の賛成議員、反対議員双方が多数発言を行ったが、最終的に公開審議の時間切れのために、採決は次回国会に見送られ、継続審議となった。そのような中で一部議員は審議終了と採決の実施を求める提案を起こしたが、この提案も採決されなかった。
ガソリンの輸入に外貨預金を用いる内容の同法案は、国会の最重要課題の一つに数えられている。それというのも、国会の計画・予算委員会はこの法案に、来年度政府は一般予算をガソリン輸入に用いることはできないとする補足を付加したからである。このことが、国会の公開審議で同法案をめぐる賛否が白熱する原因となった。
国会議員らはこの法案をめぐって、一種の行き詰まりに陥っているように思われる。というのも、どちらの決断を選択するにしても、いずれも好影響と悪影響の両方をともにもたらす可能性が高いからである。そのために、同法案に関する決断はきわめて困難で、次回の国会公開審議でも、審議が紛糾することが予想される。
ハサン・ソブハーニー(ダームガーン選出)をはじめとする議員らは、昨日の公開審議で、国会が毅然たる立場を表明し、来年度のガソリン輸入のカットを可決するよう求めたが、他方別の議員らは、一度にガソリン輸入をカットし、「カード制」に移行することは、国に政治的危機を招くと論じた。総じて、カード制及びガソリンの二重価格制を導入することに反対の立場を示している論者らは、ガソリンを求める人々で長蛇の列が生じる、不当な利潤を得る人々が出てくる可能性がある、一般国民から不満が生じる、などの悪影響を懸念している。これに対して、同制度の支持者らは、さらなる環境汚染の防止、都市の渋滞の緩和、国庫の節約、そして節約されて残った資金の公共交通網の整備への転用などの利点を指摘している。
〔後略〕
〔解説:現在イランでは、ガソリンは補助金が与えられ、リッター約10円ときわめて安価であるが、国内ガソリン消費量の約3分の1を輸入で賄っているのが現状である。近年、イランではガソリン消費量が急上昇しており、ガソリンに与えられている補助金は国家財政を圧迫している。訳文では省略したが、原文ではソブハーニー議員の発言として、一年間のガソリンの輸入にかかる費用は、国防・安全保障費の年間予算に、また保健衛生のための年間予算に匹敵すると指摘されている。このため、イラン政府は過去ガソリン料金の値上げを実施してきたが、その度に物価上昇を招き、市民の政府に対する不満が蓄積する結果となっている。このような背景から、政府は市民のガソリン消費量を押さえることを目的に、自動車保有者にカードを発行し、一定量までのガソリン消費に対しては補助金が与えられた安価なガソリンを提供し、消費量が一定量を超えると補助金対象外のガソリンを消費者負担で供給するという案が、約2年前から検討されてきた。
参考:http://www.bbc.co.uk/persian/business/story/2005/11/051109_mj-ko-ir-petrol-card.shtml
イランのガソリン問題については、http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/newsdata/News2005117_1248.htmlもご覧下さい。〕
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( 翻訳者:斎藤正道 )
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