ロバート・フィスク著『文明のための偉大な戦争』サイン会(アル・ナハール紙)
2005年11月07日付 Al-Nahar 紙
■ 新著『文明のための偉大な戦争』サイン会でロバート・フィスク氏「戦争に導く権力とのたたかいを呼びかける」
2005年11月7日付アル=ナハール紙(レバノン)HP市民面
【サーミー・サアブ】
「あなたのように自分の信念に誠実な人が伝えるメッセージは必ず届くはずです。あなたが書いたものによって西洋が正しい道に導かれるよう願っています」という語りかけに対して、「ブッシュ氏がこれを読まないことは確かだと思いますよ」と、英インディペンデント紙の中東特派員ロバート・フィスクは答えた。ヴァージン・メガストアで行われた新著『 The Great War for Civilization: The Conquest of the Middle East 』のサイン会での一コマである。
フィスクに語りかけた女性は、サニーヤ・アル=グサインさん。フィスクは著書の中で、リビアのムアンマル・アル=カッザーフィー大佐の「国際テロ」に対する懲罰として1986年にアメリカがトリポリを空爆した際に、サニーヤさんが娘のラアファトさんを奪われた経緯を伝えている。
ロバート・フィスクは1976年にザ・タイムズ紙の特派員だった頃から、緊張の渦中にある中東各地を転々とし、あるときは前線で、あるときは会議場で、あるときは兵士や犠牲者たちの傍らで、またあるときは国家元首や指導者たちに相まみえて取材をつづけた。30年間にわたる取材活動と生きた証言の数々がフィスクの著書の中で歴史の記録と交錯し、中東地域の歴史を語り伝えてくれる。
フィスクの著書は、虚りの約束と裏切り、暴力と流血と悲劇の叙事詩を綴りながら、第1次世界大戦とサイクス・ピコ協定およびバルフォア宣言から、抑圧体制とイスラエルに対する西洋の絶対的な支援を経て、バグダッド市街での暴力に到るまでの経緯を歴史的展開の中に正しく位置づけ、この地域において増大しつつある西洋への憎悪の原因を明らかにしている。
ソ連そしてアメリカが侵略した時期のアフガニスタン、イラン革命と第1次湾岸戦争[イラン・イラク戦争]、イラクと第2次湾岸戦争[湾岸戦争]、9・11米国中枢同時攻撃、ウサーマ・ビン・ラーディンとの3度にわたる面会、サッダーム・フセイン体制の崩壊と対テロ戦争、アルジェリア、アラブ・イスラエル紛争。これらすべてを列挙しても、包括的かつ詳細な本書の内容を十分に言い表しているとは言えない。レバノンについては、フィスクは前著『 Pity The Nation: Lebanon at War 』を上梓しているが、新著においても一部で取り上げている。
愛読者たちが殺到する合い間に本紙記者はフィスクと少しだけ言葉を交わすことができた。フィスクは、「本書に込められたメッセージは、各国の首脳が提示するような歴史の叙述を拒否すべきだということであり、虚構に基づいて我々を戦争に導くようなあらゆる権力とたたかうべきだという呼びかけだ。」と語った。
またフィスクは、「読めば悲観的になる本だと思う。執筆も挫折感に満ちた作業だった。」と語った。と言うのも、本書の200ページ以降においては戦争のもたらすさまざまの悲劇や拷問、集団的絶滅政策、民族浄化の事実が明らかにされているからである。またフィスクは、「対イラク戦争は地域の再編成を目指したものである。列強は慢性的に軍事力を試験する必要に迫られているのだ。」と考えているという。本書の題名『文明のための偉大な戦争』についてはフィスクは、「これは私の父親が第1次世界大戦に従軍した折に授与された勲章に刻み込まれていた言葉だ。無論、父は文明のための戦争に参加するのだと信じていたのだが、私はこの言葉を皮肉として用いている。あらゆる戦争は文明の名の下に起こされるものではないだろうか?!」と語った。
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( 翻訳者:「南・西アジア地域言語論(アラブ・メディア翻訳)」11月25日 )
( 記事ID:1404 )