作家オルハン・パムクの初公判(16日)直前、トルコ刑法をめぐり大混乱(Radikal紙)
2005年12月13日付 Radikal 紙
ヨーロッパ中から注目されているオルハン・パムクの「国家侮辱」裁判に興味深い展開があった。審理を行う予定のシシュリ第2初級裁判所(第1審)は、裁判で旧トルコ刑法が適用される必要があると判断をした。旧法ではこの種の犯罪に対して法務省からの許可取得を義務付けているため、書類が法務省に送られた。このような状況の中、16日に行われる初公判を前にアンカラに注目が集まった。ジェミル・チチェキ法務大臣がパムク氏の審理を許可しなければ、裁判は開かれない。許可すれば裁判は行われる予定だ。
■「罪」が犯されたのは2月
パムクは2月にスイスで発刊された雑誌「the Magazine」で、「この地で『100万人のアルメニア人と3万人のクルド人が殺害された』と述べた。これについてシシュリ総検察局は、新トルコ刑法第301条により、「トルコ性(Turkishness)を公然と侮辱」した罪で起訴したのだった。パムクに6ヶ月以上3年未満の禁固刑が求刑される裁判の初公判日は、2005年12月16日金曜日と決められた。
EUの反発の原因になっている裁判の初公判が近づく一方で、シシュリ第2初級裁判所で重大な展開があった。裁判所は、罪が犯された日付が「2005年2月9日」であるとし、この場合、旧トルコ刑法と新トルコ刑法のどちらが被告に有利かについて、検察局の見解を求めた。検察局は、旧トルコ刑法の「侮辱罪」には法務省の許可が必要であることを明らかにした。これに対して裁判所は、法務省の許可が下りなければ裁判は中止されるため、これが被告に有利に働く可能性があると判断した。裁判所は、裁判の中断、ないし延期についての決定を行わなかった。このため2日以内に他の決定がなされなければ、初公判は16日に行われる予定だ。16日までに法務省から回答がなければ、パムクが出廷しても尋問は行えないことになる。法務省が許可を出せば裁判は旧トルコ刑法にそって続けられるが、許可が出なければ裁判は中止となる。
16日にパムクとともに出廷するというハルク・イナヌジュ弁護人は、「許可を「出す」か「出さない」かについての法務省の文書が、初公判の日までに裁判所に届けば、裁判所はこの文書にしたがって審理を進めていくだろう。」と述べた。
■チチェキ法務大臣:自分は権限を持っていない
ジェミル・チチェキ法務大臣は、パムク裁判に関して次のように述べた。「大臣である私に回付される文書のうち、法的、技術的なものについては私のサインは通用しない。イスタンブルから法務省に2月と3月に2つの文書が届いたそうだが、法務省の刑務総局がその文書を(イスタンブルへ)返送したそうだ。これが意味するところは、『法務大臣の権限はない。(裁判所)が判断せよ。』ということだ。その他に私に送られてきた文書はない。現在、私は決定を下す立場にない。9月の新法施行後、私の権限はなくなっており、今は裁判所にある。」
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( 翻訳者:栗林 尚美 )
( 記事ID:1504 )