シャロン首相が今後の政策方針を公表 パレスチナ、シリア、レバノン、イランに言及(アル・ナハール紙)
2005年12月02日付 Al-Nahar 紙

■ 「マアリブ」紙:シリアがレバノンの所有権を認めるならば、イスラエルはシャバア農場を返還する可能性がある
■ シャロン首相がヒズブッラーの武装解除を要求 「一方的撤退はない。入植地は維持する。」

2005年12月 2日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面

【ラーマッラー:ムハンマド・ハウワーシュ】

 世論調査によれば、2006年3月28日実施予定のイスラエル総選挙ではアリエル・シャロン首相の新党「カディマ」が勝利するだろうと見られている。そのシャロン首相は、首相に留任することになった場合の施政方針の大要を描いてみせた。すなわち、今後ヨルダン川西岸からのさらなる一方的「パレスチナ分離[撤退]」計画は存在しないこと、パレスチナとの最終地位交渉において大規模入植地を維持する意向であること、ヨルダン渓谷についても同様であることを再度述べた。またシャロン首相は、イスラエルとの国境にレバノン国軍を展開させ、国連決議第1559号を履行してヒズブッラーを武装解除するよう要求した。さらにイランが核兵器を保有する事態をイスラエルは受け入れないと強調した。

 シャロン首相は、和平プロセス進展のために全力を尽くすと言いつつ、「だが、我々がロード・マップに取り入れると決めた諸問題について変更はない」とも述べた。また、「イスラエルがとるべき治安措置を放棄することは不可能だと私は考えている。私は痛みを伴う譲歩も含め、諸々の措置をとる用意はできている。実際にそうした痛みを伴う譲歩を行ったが、それは真の和平、すなわち後の世代に継承される和平を達成するためである」と述べた。しかし「治安問題に関しては私の立場は変わっていないし、これからも変わらない。このことついて私は合州国、EU、ロシア、インド、トルコ、および我々が信頼関係を構築している全ての国に対し、自国民の保護と国家存続に必要な安全対策が何であるかを決定すべきはイスラエルなのだということを説明した」と強調した。またシャロン首相は、パレスチナとのいかなる最終合意においても、イスラエルがヨルダン川西岸地区の大規模入植地を維持すべきであるとの見解を示した。

 パレスチナ側との合意におけるヨルダン渓谷の将来について質問され、シャロン首相は「ヨルダン渓谷はイスラエルの治安領域内に位置している。この点で私の立場は変わることはない」と答え、「今後、追加的撤退計画はない」と述べた。

 またシャロン首相は「パレスチナ人が長年にわたって追求してきた政策は、我々が合意に達することができない原因となっているのだから、その政策を停止する必要があることを認識し理解してほしい。パレスチナ人は歩みを進めるためにあらゆる努力をしなければならないことを理解するべきである」と述べた。

 シャロン首相は、パレスチナ立法議会選挙にイスラム抵抗運動「ハマース」が参加することへの反対の意思を繰り返し表明し、「他人のところで行われる選挙プロセスに口を挟むことが良くないのは確かであるが、(パレスチナ人が)選挙に参加しさえすれば真の民主主義者になるわけではないと私は思っている。ハマースは武装グループであり、その目標はイスラエルがたとえ1967年の境界線まで退いたとしてもイスラエルの存在を侵害することである。それはあり得ないことであり、ハマースは戦闘を続けるだろう」と述べた。またイスラエルが選挙に関してパレスチナ当局と調整を行っていないことを強調し、イスラエルがハマースの政治活動家に対して実施している拘束作戦に言及しつつ、イスラエルは「ハマースに対して揺るぎない政策」を継続するだろうと述べた。

■ シリアとレバノン

 シリアとレバノンに関するイスラエル人記者の質問に答えて、シャロン首相は「シリア人と連絡はとっていないし、シリアがアメリカやフランスの圧力下にある現在、彼らへの圧力を軽減するような何らかをすべきではないと思う。だから、どんな場合にもシリアに対する圧力を軽減するような措置をとってはならないし、現在の圧力は継続するべきだ」と述べた。

 レバノンについてシャロン首相は次のように述べた。「最近の北部での軍事行動(先週のヒズブッラーとイスラエル軍との砲撃戦)の直後、ヨーロッパや合州国など中心的諸国の全首脳に書簡を送り、一連の措置を実施するよう要請した。その第一の措置は、国連決議1559号の履行を引き続き求めることである。我々は(イランの)革命防衛隊がレバノンに存在し続け、いまだに撤退していないことを忘れてはならない。また、レバノンにおけるシリアの影響が軽減していないことに疑問の余地はない。…ヒズブッラーが(レバノン・イスラエル)国境沿いに展開するべきではない。レバノン国軍については、最初の措置としてガジャル村に入り、その場所でのプレゼンスを確保するよう要請した。…もちろんヒズブッラーの武装を解除し、イランやシリアから得ている支援を停止するよう要請した。」

■ イラン

 シャロン首相は「イスラエルはイランが核兵器を保有する事態に対して必要な準備を全て実施する」と述べたが、これらの準備がいかなる性質のものであるかは説明せず、イスラエルはイラン政府に対するいかなる国際的行動にも参加するが、イニシアティヴをとらないことを示唆した。シャロン首相は「イスラエルはイランの核開発プログラムに対する戦いにおいて先陣を切ることはない。…イランが核兵器を保有する事態に賛成しないのはイスラエルだけではない」と付け加え、イスラエルは「能力がないのではなく、なすべきあらゆる処置をとる」と述べた。

 軍事的選択肢について質問を受けたシャロン首相は、軍事面で西洋諸国はイランに対抗する力を持っているが、「しかし誰かがこの選択肢を使うことを決定する前に、核開発活動を停止するようにイランへ圧力を行使するため、あらゆる努力が尽くされるだろう。こうした努力が実を結ぶだろうと私は見ている。…(ジョージ・ブッシュ)合州国大統領は、イランの核開発プログラムは取り組むべき課題から除かれることはないだろうと言ったが、これに私も賛成だ。私はこの活動がイラン問題を安保理に付託する結果になることを望んでいる」と述べた。

■ 「マアリブ」紙

 イスラエルの「マアリブ」紙の報道によれば、イスラエル治安当局高官は「イスラエル国家は、イランに核兵器が存在するという事実に適応することを余儀なくされそうだ」と述べた。この高官は「私の見解では、今日イランの核武装を防ぎうるいかなる勢力も世界には存在しないし、起きている現実は受け入れざるを得ない」と述べた。これはイスラエルの立場の変化とも言えるものを示している。イスラエル政府としては、イランが核兵器や核技術を有している可能性がある状況との共存は不可能だと言ってきたからである。同高官筋は、イランは「他の諸国と共同して取り組むべき国際問題であり、世界は核保有国イランという将来的脅威に立ち向かわなければならない」との認識を示した。そして「イランが核兵力を保有することによって、イスラエルは戦略的思考を深化させる必要が生じる。その中には通常兵力の強化も含まれる」と締めくくった。

 イラン問題に関してイスラエル軍情報機関のアハロン・ザイーフィー長官は、水曜日にクネセト[※訳注:イスラエル国会]の外務・治安委員会メンバーを前に治安に関する陳述を行った際、イランに核武装を停止させようとする国際的圧力は最近弱まってきたと述べた。ザイーフィー長官は「国際社会が払ってきた努力はもはや尽き果てようとしている。しかしこの戦いにおいてはイラン人の方が優勢であり、政治的交渉による制御の見通しは危険にさらされている」と言い、「国際社会がイラン核開発プログラムについて3月末までに安保理に付託できなかった場合、そのときは国際的努力が失敗し潰えたと言うことができる」との見解を述べた。またザイーフィー長官は、国際原子力機関が11月19日に公表した報告書によって「イランとパキンスタンの核兵器専門家の間に関係が存在するという新しい情報が明らかになった。…これは我々が懸念すべき状況だ」と注目を促した。さらに「イランは地域における強大な勢力になる方向へ進んでおり、こうした情勢ではアラブ諸国が不安を表明し、非通常兵器開発の努力を強化することになる」と付け加えた。

■ レバノン

 イスラエル治安関係筋は「マアリブ」紙とのインタビューの中で、先週月曜日に起きたガジャル村でのヒズブッラー部隊とイスラエル軍の砲撃戦に言及し、「イスラエルはヒズブッラーの挑発に引きずられることはないし、国境地域での戦術的行動が遠距離からの報復を必要とする戦略的事態へと発展することは許さない」と述べた。また「ヒズブッラーはイスラエルに大規模な軍事的報復を実行させようとして、こうした戦闘に引きずり込もうと試みているのだ。」とも述べた。

 同治安関係筋は、「シリアがシャバア農場の所有権に関する主張の取り下げを正式に表明するような合意に達することは考えられる。その代わりにイスラエルは、ヒズブッラーの武装解除もしくはヒズブッラーのレバノン正規軍への編入と引き換えに、この地域をレバノンに返還することが可能性になる」とも述べた。



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( 翻訳者:森本詩子 )
( 記事ID:1529 )