セゼル大統領:TÜSİADの会合で「選挙の足切り率を下げるべき」
2005年12月21日付 Radikal 紙
選挙の足切り率を下げるべき
共和国大統領セゼルは、来賓として参加したトルコ実業家協会の会合で、サバンジュ氏の「10%の足切り条項は高い」との見解に対し、「7、8%になり得る。しかし決定権は議会にある」と支持した。
トルコ実業家協会のアンカラ会議初の名誉来賓は大統領アフメト・ネジュデト・セゼルであった。会議では法改正の衝撃まで走った。セゼル大統領が来賓として参加したトルコ実業家協会の役員審議会には首相エルドアンも閣僚も参加しなかった。トルコ実業家協会の会長オメル・サバンジュは、問題に関して首相との間に緊張がないことを述べ、次の発言を行った。
■有権者が責任を問えるように
「選挙制度における唯一の心配は、政治的権利が乱用されてはならないということである。政治の悪用は基本的に司法制度と一体である。10%という高い足切り率で次の選挙に臨むとなれば、また多くの票が議会に反映されず、代表に偏りが生じることになろう。法改正によって足切りのパーセンテージはもう少し低く設置されるべきである。選挙制度というのは有権者が代表に容易に責任を問え、政治に積極的に参加できる構造でなければならない。」
「トルコの目下の議題はEU、投資、雇用、地域開発、民主主義、自治、政治制度の改善、治安、厚生、教育である。これらはトルコが解決すべき優先的課題である。しかし我が国はそれ以前の問題にによって疲弊している。それは政治的混乱を生み出すリスクや、経済的緊張を生み出している。」
■妥協としての民主主義
「民主主義において私たちは進歩と後退の混乱から抜け出せていない。民主主義がトルコを外圧に対して抵抗力を弱くするという発想は、トルコ自身を弱める結果となった。表現の自由への障害を完全に取り除けず、政治参加の路を狭め、市民社会組織の発展に躊躇し、民主的権利の行使に対し治安部隊が無制限の権力を用いることを許容し、文化が自由に発展する環境を整えることをトルコの分裂と見なし、我が国の民主主義を普遍的な基準に基づいて発展させることなく、妥協的な水準に留めているのである。」
■トルコ刑法301条
「当局の優柔不断な状況は、改正法案のうちのいくつかを扉から追い出し煙突から侵入させ、トルコが民主主義によって得た成功を世界に向けて公表する努力への障害となっている。これは、反トルコ的なプロパガンダをする者や、安定と民主主義の枠組みの中で発展を望まない者、わざと挑発を企む者に加担するような、火に油を注ぐ行為となっている。
オルハン・パムクやフラント・ディンクの裁判、ジャーナリストのハサン・ジェマル、イスメト・ベルカン、ムラト・ベルゲ、ハールク・シャーヒン、エロル・カトゥルジュオールについて起こされた裁判に対し、「法で決まっているから仕方ない」という態度ではなく法が現代的、多元主義的民主主義的な水準に適していないことの政治的責任を負った上で対処すべきである。」
■教育の政治化
「トルコ実業家協会の役員審議会会長のムスタファ・コチは教育の政治化を批判した。コチの発言は次の通りである。「大学、初等教育、職業教育すべてにおいて根本的な改革が必要である。これができない限りEU加盟も成功しえないし、グローバル化時代に必要とされる競争力を養うこともできないだろう。」
■学長アシュクンを支持
「我々は大学に関する政治的先入観、反発によって形成される問題を指摘されることで忙殺されている。大学の問題はスカーフ問題や高等教育機構の問題などの政治問題に終始している。ヴァン100周年大学の学長ユジェル・アシュクン教授に対する処置や彼が長期間監視下に置かれることを妥当とするのは不可能であると言わねばならない。世論を操作しようとするこの類いの行いは、残念ながら合法的な
我が国を取り巻く環境で地域の安全を揺るがす要因が存在する。そのうちの一つが北イラクである。トルコとして地域の情勢を正常化するための努力を積極的にしなければならない。そしてキプロス問題である。この問題に関しては我々がイニシアチブを取り、解決策を見出さねばならない。現状維持は考えられているほど我々に有利ではない。その他の提案もあるのだ。
■少なくとも5%
ザフェル・ウスキュル教授(政治学):10%の排除障壁ルールによって、前回の選挙では有権者の半数の票が議会に代表されていない。政治的安定を口実にここまで高い排除障壁は擁護できない。他の選挙を見ても、排除障壁がなくとも単独与党の誕生は可能性はある。ヨーロッパの例を見ても、最も高い排除障壁はせいぜい5%である。トルコも5%にすべきである。5%以上は選挙の公正さを揺るがすことになる。現在は排除障壁も設けなくとも民族主義者行動と正道党は議席を確保するであろう。排除障壁を7、8%程度にしても祖国党、至福党、DTPが議会に代表を遅れる可能性はない。5%程度ならDTPが議席を確保し、クルド問題への解決策を講じるであろう。4〜5%程度の割合なら、与党政権も連立政権も誕生し得る。
(中略)
セゼル「政治が司法に干渉するべきではない」
トルコ実業家協会役員審議会の会議後、セゼルと約180名の実業家はメディア非公開の談話に入った。セゼルは、トルコ実業家協会の選挙に置ける排除障壁を低くすべきという意見に賛成しながらも「排除障壁は7、8%に引き下げることが可能だろう。しかし決議は議会が行う。最終決定は彼らに託される。」と述べた。
判事、検事高等審議員が法務大臣によって任命されたことを批判したセゼルは、この種の組織は政治的影響を受けるべきではないと述べた。EU交渉については、政府が立場を譲歩しないよう、実業家達が常に問題意識を持つ必要があることを述べた。キプロス問題がEUとの調整に利用されることに不快感を示したセゼルは、ギリシャ政府が問題解決に向けて努力することの重要性を語った。
********************本記事への解説********************
トルコの選挙法には10%の排除障壁がある。これは選挙における得票率の平均が全国区を合わせて10%を超えない政党は議席を持てない、という規則であり10%の足切り条項とも言われる。そのため2002年の選挙では得票率34%の公正発展党が363議席、19%の共和人民党が178議席を得、有権者の約半数の票は死票となり議会に反映されていない。そもそも排除障壁とは小党分立で国会が混乱することを防止するための制度で、ドイツやイスラエルなどトルコ以外にも採用している国は多々あるが、トルコの10%という数字は突出して高い。トルコでこの制度が採用されたのは1987年の選挙法改正時であり、これは70年代に小党が分立して政局が混乱し軍事クーデターが起きたことの反省とも言われるし、当時の与党祖国党が自らに優位な選挙法を立案したとも言われる。
TÜSİAD(トルコ実業家協会)とは国家の保護を受けてきた世俗派の企業の連合である。この組織にはサバンジュやコチなどのコングロマリットが所属している。一方イスラーム系資本によって経営される企業は、MÜSİAD(独立実業家協会)という組織を持ちTÜSİADに対抗している。当然のことながらTÜSİADに参加する人々は与党の公正発展党政権には反発しており、昨今の政治問題に関して政府批判をしているのである。
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( 翻訳者:大島 史 )
( 記事ID:1564 )