2005年12月24日付シャルグ紙6面
【政治部:ホセイン・ラザヴィー】《原理主義派》に属するアナリスト、アミール・モヘッビヤーン氏は先週、次の専門家会議選挙では《三極》を中心として争われることになるだろうとの予測をした。同氏は、この選挙では改革派陣営と保守派陣営だけでなく、モハンマド・タギー・メスバーフ=ヤズディー師監督下で作成される候補者リストが、もう一つの《極》として選挙戦に加わる、との予想を立てているのである。
この《三極》状態にあって、近年人々の耳目を集めてきた2人の人物が、中心的な役割を果たしている。別言すれば、次の専門家会議選挙は、イスラームに関する二つの、互いに明確に区別される見方の間の、二極的な争いとしての様相を帯びるとの予想もあるのだ。この二極を代表する人物とは、すなわちモハンマド・タギー・メスバーフ=ヤズディー師とセイエド・モハンマド・ハータミー師に他ならない。
この二極の形成を示す兆候は、先週から現れ始めている。すなわち、一方でメスバーフ=ヤズディー師が、マシュハドで開かれた「専門家会議選挙革命勢力調整会合」において、右派勢力の伝統主義派を批判したこと、他方でハータミー師が《闘う宗教指導者会議》の専門家会議選挙候補者選びを一任されたこと、である。これらの出来事に対し、複数の政治党派の間から様々な分析・反応が見られた。これらの分析・反応は、次の専門家会議選挙のおいて二つの党派が抱える基本的な問題を予期させるものである。
それによると、保守派陣営の基本的問題とは、同党派内部で二つのブロックが分裂しており、その間でいかなる選択するか、ということに帰着する。すなわち、ハーシェミー=ラフサンジャーニー師を指導者とする中道派と、メスバーフ=ヤズディー師を指導者とする急進派の対立が、それである。これら二つのブロックの間の対立は、《原理主義派》陣営の最も楽観的な活動家でさえ、次の選挙での二派間での協調の可能性を予測することができないほど深い。最近開かれた最高指導者専門家会議、そして金曜礼拝導師年次総会は、このような二派間の対立の舞台となった〔http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/newsdata/News20051118_1322.htmlを参照〕。さらに、大統領選挙第二回投票でも、両者間に同じような状況が生まれたことも、記憶に新しい〔ラフサンジャーニー師とアフマディーネジャード氏の間で争われた第二回投票では、伝統右派の《闘う宗教指導者協会》や《ゴム講師協会》などイスラーム法学者の党派はこぞってラフサンジャーニー師支持を打ち出していた〕。
《闘う宗教指導者協会》のスポークスマンが、メスバーフ=ヤズディー師の動きを闘う宗教指導者協会やゴム講師協会の枠組みに沿ったものであるとしたことに対し、メスバーフ=ヤズディー師の側近の一人であるアリー・サグフィー氏が、それを必ずしも肯定しなかったのも、このことに原因があるようだ。
「模範研究センター」という名称の機関を運営するサグフィー氏は昨日、「専門家会議選挙では三つの主要グループ、すなわち《闘う宗教指導者協会》と《ゴム講師協会》の連合体、《闘う宗教指導者会議》、そしてアーヤトッラー・メスバーフ=ヤズディーの監督下にある第三のグループが、三つどもえの争いを繰り広げるだろうと考える向きもあるが」とのISNA(イラン学生通信)の質問に対し、次のように語った。「現在のところ、党派形成の動きはそれほどはっきりとしたものではない。新たな党派が生まれつつあるのか否かということについては、今後の動きを見守る必要がある」。
同氏はまた、第三の党派について、次のように語った。「アーヤトッラー・メスバーフ=ヤズディーの監督下で生まれつつあるとされる第三の党派についてだが、それは一部の政治党派による憶測の産物にすぎない。彼らがこのような憶測を流すのは、いかなる動機にもとづくのかは不明だが。アーヤトッラー・メスバーフ=ヤズディーの活動は、〔政治的なものというよりは〕むしろ啓蒙的性格のものだ。それは今に始まったことではない。専門家会議選挙にあたって、新たな路線、新たな党派を立ち上げようとしていることを示すようなものは、何も見当たらない」。
サグフィー氏はまた、先日メスバーフ=ヤズディー師が専門家会議選挙について演説を行った、マシュハドでの集会について触れ、「あの集会は、専門家会議を構成する議員たちの重要性について、学問的、啓蒙的観点から開かれたものだ。あの集会で議論の場にいたものなら、このことを証言してくれるだろう。集会の政治的デリケートさばかりを追い求めようとしているプレスが、同集会について特定の妄想を抱いているにすぎない」。
同氏はさらに続けて、「メスバーフ=ヤズディー師の発言に関して、様々な分析や憶測が流れているが、これらの一部の分析・憶測の背後にはどのような動機が隠れているのか、推論することも可能だろう。恐らく、これらの分析や憶測には、イスラーム法学界内部に存在する諸々の潮流を過敏化させ、専門家会議選挙での第三の党派の動向に対して過剰な反応を煽ることで、メンバー相互の団結を図ろうとの狙いがあるのではないか」と論じた。
これに対し、メスバーフ=ヤズディー師の門下生の一人であるモフセン・ガルヴィヤーン師も、サグフィー氏の見解に必ずしも同意しているわけではない。同氏はISNAに対し、次のように語っている。「アーヤトッラー・メスバーフ=ヤズディーの思想は、《ゴム講師協会》や《テヘラン闘う宗教指導者協会》のそれと同一である。メスバーフ=ヤズディー師監督下の党派が、〔上記二つの党派に対抗する形で〕専門家会議選挙に打って出るとの見方は、正しくない」。
ゴムにある《イマーム・ホメイニー教育機関》のメンバーである同師は、さらに次のように続けている。「来年より第4期専門家会議が始まることになっており、同選挙戦は特別の重要性を有することになるだろう。他の選挙と同様、この選挙でも、全議員が改めて選ばれることになっており、専門家会議の構成が完全に変わってしまう可能性もある」。
ガルヴィヤーン師は、専門家会議選挙では、《ゴム講師協会》と《闘う宗教指導者協会》の連合体と《闘う宗教指導者会議》、そしてアーヤトッラー・メスバーフ=ヤズディー率いる第三の党派が三つどもえの戦いを繰り広げるであろうとの予測に対しては、次のように語った。「私は、この《第三の党派》なるものが存在するとは、考えていない。というのも、アーヤトッラー・メスバーフ=ヤズディー自身とその門下生の多くが、《ゴム講師協会》の一員だからである。アーヤトッラー・メスバーフ=ヤズディーとその門下生らが、《闘う宗教指導者協会》や《ゴム講師協会》と同じ枠組み内で行動することはないだろう、というのは単なる噂にすぎない」。
ゴラーム・レザー・メスバーヒー=モガッダム師も、次期専門家会議選挙でメスバーフ=ヤズディー師が分派的な党派を形成しようとしているとの憶測を否定している。同氏は、「メスバーフ=ヤズディー師が《闘う宗教指導者協会》や《ゴム講師協会》から分離する傾向にあるというのは、正しくない」との考えを表明した上で、メスバーフ=ヤズディー師がゴム講師協会の一員であることに触れ、次のように付け加えている。「同師の専門家会議選挙での活動は、《闘う宗教指導者協会》と《ゴム講師協会》の枠組みに沿ったものだ。専門家会議選挙に参加するにあたり、何らかの独立した活動ないしは集団を有しているわけではない」。同師はまた、自身が属する《闘う宗教指導者協会》と《ゴム講師協会》の連合体にとって対立する党派として、《闘う宗教指導者会議》と《ゴム講師・研究者会議》の名を挙げた。
メスバーヒー=モガッダム師はまた、次回の専門家会議選挙は過去のそれと比べて重要であるとの見方に対して、「私はそうは思わない。専門家会議選挙は重要な選挙であり、その重要度は過去の選挙も変わりがない。現在、諸々の党派が専門家会議選挙の下準備に追われているが、それは過去の選挙であっても同じであった」と語った。《テヘラン闘う宗教指導者協会》のスポークスマンを務める同師はさらに、同協会からは誰が立候補するのか、との問いに対して、「これまでのところ、《闘う宗教指導者協会》の中央評議会では、立候補者個人についての議論は行われていない。立候補者選びの基準について検討が行われたにすぎない」と述べた。
▼ 原理主義派の戦略
これに対して、イスラーム連合党幹部のハミード・レザー・タラッギー氏は、次期専門家会議選挙における《原理主義派》の戦略について、よりはっきりとした青写真を示している。同氏が掲げる戦略とは、「シグナルが消えたら動き出せ」というものだ。つまり、政治サークルや機関紙などで専門家会議選挙について議論することを、機が熟するまで慎む、という戦略だ。タラッギー氏は、イラン・ニューズ紙とのインタビューで、次のように語っている。「そもそも、選挙法がどのようになるのか、いまだはっきりしておらず、《同日選挙法》〔*注〕が可決された場合、選挙実施時期が変更になる可能性がある。それゆえ、《シグナルが消えたら動き出す》との方針の下、選挙戦略については今のところ、はっきりと申し上げるのは控えたい。原理主義派の方針は、今のところ、他の陣営の活動とその目的を見極める、というものにとどめたいと考えている」。その上で同氏は、「原理主義派は、現在のところ、何の議論も行っていない。自らの方針を明確化する予定はない」と説明した。
また、メスバーフ=ヤズディー師主導下で活動を行っている新たな党派について、同氏は次のように語った。「アーヤトッラー・メスバーフ=ヤズディーと同師の勢力が構成している党派が追求しているのは、専門家会議の若返りである。これに対して改革派が追い求めているのは、専門家会議をより《専門分化》させることである。彼らは専門家会議を、最良の法学者ではなく、テクノクラートからなる会議にしようとしている。つまり、《専門家会議(khobregaan=expert, master, 熟達者)》ではなく《テクノクラート会議(motakhasses=specialist, 技能者)》にしようとしているのだ」。
タラッギー氏はさらに、「一部の党派は、現在の権力構造に反対する分子を専門家会議に浸透させ、最高指導者の権限の縮小、あるいはその制限を実現させようとしている」と警告を発した上で、「彼らは自らの企てに対する障害として、護憲評議会を槍玉に上げ、専門家会議の立候補資格に対する審査権を、護憲評議会からゴムのマルジャ〔イスラーム・シーア派宗教界の最高権威〕や法学者に移管させ、そうすることで専門家会議、さらには統治機関に対する自らの影響力を強めようとしている」と指摘した。
▼ 改革派
タラッギー氏が「護憲評議会を自らの企てに対する障害であると考えている」と指摘した党派とは、事実上改革派に属する人々で占められている。改革派は、地方評議会選挙、第7期国会選挙、そして第9期大統領選挙の3つの選挙で、様々な理由により、(戦略的にであれ)分裂状態にあった。しかし、彼らは専門家会議選挙では、このような問題に直面していない。むしろ彼らの懸念は、同派の代表的人物が、これまでの専門家会議選挙と同じように、立候補資格を否定されるのではないか、というところにある。第2回専門家会議選挙では、非宗教指導者やイスラーム法学者ではない世俗の人士の選挙への参加という、改革派の要求が叶えられなかったばかりか、アブドッラー・ヌーリー師〔元内相〕やモハンマド・ムーサヴィー・ホイーニーハー師〔アメリカ大使館占拠事件を起こした学生たちの精神的指導者〕のような宗教指導者すらも、立候補資格拒否の憂き目に遭い、事実上改革派の主だった党派は全て、専門家会議選挙の舞台に立つことは許されなかったのである。
現在の権力構造において改革派が置かれている弱さを考えれば、このような状況が繰り返される可能性は極めて高い。そのため、改革派の様々な党派は、専門家会議である程度の議席を獲得することで、選挙での保守派、特にメスバーフ=ヤズディー師の党派による完全なる勝利を阻止するためには、いかなる対策が可能か、思案しているところである。
▼ ハータミー師に与えられた役割
このことに関連して、選挙での改革派の責任は、事実上《闘う宗教指導者会議》に委ねられている。改革派が握っている数少ない手段を考えれば、専門家会議での議席を奪うことは、この党派によってのみ可能であろう。議席獲得という目標のために《闘う宗教指導者会議》が取った行動として、セイエド・モハンマド・ハータミー師に選挙プログラムの作成を一任したことが挙げられよう。ハータミー師はここ数週間のうちに、政治的領域で活発に活動する人物へと変貌を遂げ、改革派戦線に属する様々な政党・党派と頻繁に会合をもっている。同師は、《闘う宗教指導者会議》から選挙プログラム作成の任を受け入れたことで、事実上専門家会議選挙における改革派の政治プログラマー、リーダーになっているのだ。
このことに関して、《闘う宗教指導者会議》中央評議会メンバーのモハンマド・ムーサヴィー・ボジヌールディー師は、IRNAとのインタビューで、次のように説明している。「ハータミー師は3週間以内に、総合計画を《闘う宗教指導者会議》の最高評議会に提出し、それをもとに、意思決定を行うことになっている。この計画では、ムジタヒド〔法源からイスラーム法を演繹する資格を持ったイスラーム法学者のこと〕だけが専門家会議選挙の立候補者となるのか、あるいはその他の領域の専門家も参加できるのか、ということについて決定を下す予定だ」。同師によると、「ハータミー師はこの計画を、社会各層の指導者たちと協議した上で、提示することになるだろう」とのことである。
ムーサヴィー・ボジヌールディー師はまた、最高指導者専門家会議の重要性について指摘した上で、次のように語った。「我が体制における最高指導者の至高なる地位ゆえ、専門家会議は極めて高い重要性を有している。責務を全うすることのできる人物を選ばねばならない」。同師はさらに、「最高指導者専門家会議を強化することは、最高指導者そのものを強化することでもある。資格のある人物が選挙に参加すべきだ」とした。IRNAの報道によると、ボジヌールディー師は、専門家会議選挙の立候補者について、年齢の多寡が問題の中心となるべきではないとした上で、「同選挙の立候補者は、ムジタヒドであるべきだ。イジュティハード〔法源からイスラーム法を演繹する資格のこと〕を得るためには、何年にも及ぶ努力が必要だからだ」と論じた。さらに同師は、「この選挙では、能力主義が追求されるべきであり、適切な条件をクリアした人物が選ばれるべきである」と付け加えた。
ボジヌールディー師はまた、「イマーム・ホメイニーの全てを受け入れることのできない人物は、最高指導者専門家会議の立候補者となることはできない」とした上で、「イマームの思想は革命そのものであり、存在の全てをかけてイマームを受け入れることのできない人物に、選挙の立候補資格はない」とした。
《闘う宗教指導者会議》の中心的人物であるボジヌールディー師は、専門家会議選挙における改革派の戦略は、「連帯と団結」でなければならないとした上で、次のように付け加えた。「改革派及びホルダード月二日戦線〔改革派の集合体で、ハータミー師が1997年に初めて大統領選で勝利した日から取られた名称〕は、《闘う宗教指導者会議》であれ、《国民信頼党》であれ、《イラン・イスラーム参加戦線》であれ、《イスラーム革命ムジャーヒディーン機構》であれ、専門家会議に関して統一見解をもたねばならない。これら全ての党派は、イマームの道の一部であり、イマームの輝かしき思想を中心として、その周りに集合・団結した者たちである」。
現在《闘う宗教指導者会議》中央評議会のメンバーを務め、ハータミー政権では内務大臣の職にあったアブドル・ヴァーへド・ムーサヴィー=ラーリー師も、立候補者資格の問題にどう対処するかが、次の選挙で根本的な問題となろうとの見解を示した。同師は専門家会議の次期選挙状況について予測する中で、次のように語った。「このことは、立候補者に対してどのような対応が為されるのかに、深く関わる問題だ。というのも、過去にも、特に1〜2回前の選挙では、専門家会議の立候補者に対して、フィルタリングが行われたという現実があるからである」。
ムーサヴィー=ラーリー師はISNAとのインタビューで、次のように続けた。「過去の選挙戦では、一部の州で、定員人数分の立候補者しかいなかったケースがあった。つまり、ある州の定員が一の場合、立候補者も一人だけだったというケースがあったのである。それゆえ、もし今回の選挙で同じような形式・方法がとられるならば、なすべきことはすでに明らかだ。つまり、複数の党派が選挙戦に参加できるよう議論されるべきであることは、火を見るより明らかである。もし立候補資格の審査方法がより開放的になるならば、そして選挙戦が真に競争あるものになるのであれば、国民の選挙への参加も高くなり、専門家会議の構成が変わる可能性もあるだろう」。
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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:1617 )