23歳の若者は強姦された女性が(処女性を失ったために)殺されることに同意する。また別の男性は「女性は小学校までで十分。街に女性が増えれば、混乱になる。」という。
「私だったら殺しているね。」この発言はバトゥマン県の23歳の若者から発せられた。家族と男性の名声のためだという。誰についてかといえば略奪され強姦された女性に対してである。4つの県で行われた調査の結果得られたこのような回答は、(昨年不貞を働いた女性)ギュルドゥンヤやサキネが殺された背景を明らかにしている。国連人口基金、および人口統計局が提出した「トルコにおける名誉の殺人の実態と防止計画への提言」という題目のレポートは、トルコにおいて公けにならない名誉の殺人で、「貞操」がどのように認識されているかを注目すべきアンケートによって明らかにした。フィリズ・カルデム助教授が組織する調査団は、イスタンブル、アダナ、シャンルウルファ、バトゥマンの4県で、市民社会組織で働く女性や、大学生、教員など計195人にインタビューを行った。この結果18歳から25歳までの男性がより厳しく、中年の男性の方が寛容であることが明らかになった。以下は報告書に載った談話である。
・18歳〜22歳のグループに分類される男子大学生は「貞操とは生きていることの意味である。貞操がなければ、生きている意味はない。お金はなくとも名声はなければならない。」と言う。
■貞操は道徳である。
・アダナ県男性(警察官 39歳)「貞操とは妻が不貞を働くこと。騙すことではない。他の男性と関係を持つことは不道徳である。
・シャンルウルファ県女性(70歳)「頭のいい女性は貞操を恥にさらすようなことはしない。ふらふら出歩く女性はよくないね。」
・シャンルウルファ県女性(30歳 中卒)「従順なら貞操。自由奔放なら貞操がない」
・バトゥマン県男性(23歳 高校中退)「女性は小学校卒業で十分。外を出歩く女性が多くなれば混乱も大きくなる。混乱が大きくなれば不道徳な行為も増えるんだ。」
・バトゥマン県男性(26歳 高卒)「処女を失ったら女性の意味がない。」
・バトゥマン県男性(34歳 高校中退)「離婚には反対だ。もし妻が裏切ったら彼女を殺す。もし妻の兄か弟がいれば彼に“お前が殺せ”と言うよ。」
・イスタンブル県男性(64歳 トゥンジェリ県出身)「女性なら略奪されるかもしれないね。私なら許さなかったろう。でも個人の自由に立ち入る権利があるのか。ないはずだ。」
■恋に落ちたら死ぬのだ
・シャンルウルファ県女性(27歳 中学退学)「ここの部族では誰かを好きになれないわ。もし好きになったら殺されるでしょうね。女性が駆け落ちしようものなら、その女性は生きてられないわ。」
・イスタンブル県(男性32歳 小卒 黒海地方出身)「もし妻が私を裏切ったらまず裁判にはならないだろうね。つまり殺すことになるよ。」
・バトゥマン県女性(29歳 小卒)「(鼻を切り落とす罰について話している)“なぜ指ではなくて鼻を?” “だって指なら隠せてしまうもの”。 “もしあなたが他の男性を会っていると噂されたら、旦那さんはそんなことをする?” “やるでしょう。ためらいもなく。”
・バトゥマン県女性(42歳 学歴無し スィイルト県出身)「(刑務所で服役中の男性の妻が他の男性を関係を持ったことから起きた事件を説明して)服役中のその男は義父(妻の父)に妻の行為を説明し、妊娠していることを告げて、どう対処すべきか、と聞いたの。義父は“義息子よ。娘が受けるべきは死である。あなたの意見を尊重する。”と言った。結果娘を墓に葬ったの。」
これらは調査した人物が実際に見聞きした事件である。
■祖母の救い
・バトゥマン県42歳(女性 学歴無し スィイルト出身)「叔父は娘を愛していてなかなか結婚を認めなかった。ある男が娘を略奪した。娘を取り返すと殺す代わりに殴った。もう一人の叔父が“娘を殺そう。朝娘は死んだから墓に埋葬すると言えばいい。”と言った。娘の祖母が家にいて娘を殺したら訴えるよ、と反対した。結局彼らは娘を殺さず略奪した男にやったわ。」
・アダナ県女性(45歳 小卒。シュルナク県出身)「私の妹は駆け落ちしたの。私も家族会議に参加したわ。誰かが“殺してしまえ”と言った。でも私は“許してあげて。もし知恵があれば駆け落ちすることはなかったわ。まだ13、14歳だもの。もし私まで失いたいなら、私も連れて行って。死刑宣告なんて見たくないもの。彼らは私を傷つけるようなことはしなかった。」
********************本記事への解説********************
トルコを始めイスラーム世界では女性の婚前交渉、婚外交渉は絶対的なタブーである。ナームス(namus)とは名誉という意味であるが、同時に女性の貞操を意味する。もし女性が夫以外の男性と関係を持った場合、それは一家の名誉が傷ついたことになり、未婚の場合は父親か男兄弟、既婚の場合は夫が女性を(時には公衆の面前で)殺す風習が存在する。これは「名誉の殺人」と呼ばれ、不貞を働いた女性を一族で処罰することで家族の名誉が回復されると考えれるからである。トルコの大都市では男女交際も自由で、婚前交渉に抵抗を持たない若者も増えているが、地方や農村では女性の処女性がまだ重視されているのが現状である。トルコでは2004年でもわかっているだけで3件の「名誉の殺人」が行われた。殺された女性の遺体は汚れたものとして誰も引き取らないことから、国連人権委員会や海外の女性団体から抗議が寄せられている。これが略奪、強姦といった女性の意に反する行為であったとしても、「傷物」になった女性に向けられる世間の目は厳しく、女性の落ち度と見なされ、やはり殺されることがある。また一部の地域では結婚初夜の翌日、血の付いたシーツを近所に見せることで女性が処女であったことを証明する風習も残っている。
トルコの現行法では姦通罪は廃止されているが、(夫のある女性が姦通する罪。相手方も処罰される。男女平等の原則に反するので、日本でも1947年の刑法改正により削除)公正発展党は政権についた直後これを復活させようとしていた。(文責:大島 史)
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( 翻訳者:大島 史 )
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