セゼル大統領拒否権発動:ラジオ・テレビ高等機構に関する憲法改正(Radikal紙)
2005年06月11日付 Radikal 紙

セゼルは、ラジオ・テレビ高等機構(RTÜK)の委員選出方法に関する憲法改正法案を拒否した。理由は高等機構は独立機関であるべきで、国会による委員選出は与党有利の放送につながるという懸念からである。

 大統領アフメト・ネジュデト・セゼルは、公正発展党と共和人民党が提出した、「ラジオ・テレビ高等機構メンバーは議席を持つ政党が選出する候補者から選出される」という憲法改正案に対し拒否権を発動した。
 セゼルは法案差し戻しの理由として、秩序を維持し管轄する高等組織は自治、独立、中立を維持すべきであることを指摘した。セゼルは次のように述べている。
「改案によって、高等機構に選出されるために党寄りの人物が競い合うことになるだろう。今ですら総会によって政党寄りの人選がされているのは事実である。重要な権限を持ち公平な任務を行うべき組織に、政治的な意図を持った人物が選ばれるというのは、同組織の業務上ふさわしくない。よってラジオ・テレビ高等機構の委員が、政党の推薦する候補者の中から総会によって選出されることは、高等機構の独立性、中立性、公の利益に反することになる。」
 セゼルは、憲法裁判所が下した「公的組織やその人員は憲法の原則、つまりここでは共和国の基本原則を支持していなければならない。共和国の性質とアタテュルクの原則、改革に基づけば、公務員が中立に留まることは考えられない。」という決議を引用し、「中立とは、政治的な圧力や影響とは距離を置き、放送の原則が侵された場合、政治的な意図を考慮することなく決断を下す必要がある。しかし政治家の選出した人物がこの原則を守るのは難しい。一方では公的機関の干渉なしに情報を取得し、配信する自由を含む言論、放送の自由と、もう一方ではラジオ・テレビ高等機構の委員が政党に配慮されながら選出されることは矛盾を生み出している。」と述べた。


********************本記事への解説********************
「ラジオ・テレビ高等機構」は、民間放送を管理、規制する国家組織である。トルコにおいてテレビ放送が始まったのは1968年であるが、民間放送の開始は1991年と遅く、それまでトルコの放送は国営放送(TRT:トルコ・テレビ・ラジオ協会)の独占状態であった。民間放送も完全に自由化されたわけではなく、94年に設置されたこの「ラジオ・テレビ高等機構」の管理下に置かれている。この組織は反国家的な言論や、公序良俗に反する放送に対して警告を発し、改善が見られない場合は数日から数ヶ月の放送停止措置を取る。こうした措置は現在でも時折行われ、放送禁止処分を受けた局の画面には同組織の処分文書がそのまま映し出されていることがある。
 今回の憲法改正案はその「ラジオ・テレビ高等機構」の委員を、政党推薦の候補者の中から選ぶことを可能にしようとしたものであり、セゼル大統領は、これが放送の公正を欠く危険につながるとして拒否権を発動したのである。(文責:大島史)

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( 翻訳者:大島 史 )
( 記事ID:200 )