EU憲法否決の犠牲はトルコか?各国のその後の報道(Milliyet紙)
2005年06月14日付 Milliyet 紙
フランスとオランダのEU憲法否決を受けて、イギリスとアメリカのマスコミでは「トルコのEUへの希望は弱まり、西洋から遠ざかってしまった」と解釈されている。国民投票の「NO」の結果は、国民の中に拡大に対する反発があることや、この結果の最大の犠牲が「EUの拡大」であることを示している。
EU拡大にかんして重要な位置を占め、10月3日にEUへの加盟交渉を始めるトルコは、7千万人に達する人口と中東地域に延びる国境線のため、EU内部で最も論議を呼ぶ加盟候補国の一つという立場にある。EU加盟諸国はEUがこれほど大きな拡大を受け入れる準備があるかないかを論議する一方、トルコに反対する勢力は(加盟問題を)一つの切り札として利用している。最終的に、EUの2つの主な国で行われた国民投票の結果は、トルコと拡大の議論を議題にのせた。
欧州委員会とトルコが「NO」という結果がトルコの加盟とは関係ないことや、加盟プロセスに影響しないことを明らかにしたとしても、各国マスコミでは国民投票の結果懸念が増しており、期待が薄れているという見方が出始めた。
■フィナンシャルタイムズ:「トルコのチャンスは減った」
イギリスで発行されているフィナンシャルタイムズ紙は、国民投票がトルコ政府に懸念を生んでいることや、トルコのEU加盟への希望が弱まっているとの記事を掲載した。同紙はトルコとの加盟交渉が少なくとも10年はかかると予想する一方、国民投票の「NO」の票において、EUの拡大計画が重要な役割を果たしたと報じた。 フランスの新外相ドストブラジ氏のフィガロ紙とのインタビューを引用した同紙は、外相が「憲法なしでの新規加盟は難しい」との見解を掲載した。EUの高官らが加盟交渉を計画通りの日付で始めたとしても、加盟交渉はより長期間かかる見通しであり、また結果的に加盟との結論が出ないであろうとの見解を示した同紙は、トルコの加盟の機会はフランス、オランダの国民投票の前と比較するとより小さくなっていたと論じた。
■タイムズ紙:「トルコを失いつつある」
イギリスのもう一つの新聞、タイムズ紙は、アメリカで求めたものを見つけられないトルコは西洋から遠ざかり始めたと伝えた。「エルドアン首相のリーダーシップの資質が十分でないことが、トルコが重要性を失うことを意味するべきでない」という解釈を示したタイムズ紙は、いくつかの点でトルコのEU加盟が望まれないとしても、トルコのビジョンは国をEUに近づけることだと報じた。
「本当に恐ろしいのはトルコを徐々に失いつつあるということだ」とした同紙は、フランスや他のヨーロッパ諸国でのトルコ加盟反対の動きの拡大と平行して、トルコとアメリカとの関係も緊張を増したことを明らかにした。
こうした展開のトルコの世論への影響にも言及した同紙は、トルコ人がこれを「ある種の見下し」と感じていると説明した。この状況が西洋への反発を生み出したとし、「トルコは次第に東や南にシフトしている」と伝えた。エルドアン政権の基本政策の1つがEU加盟であると報じた同紙は、「火は徐々に消えつつある」との解釈をした。
トルコがEUと並んでアメリカとの関係もいい状態にないことを示した新聞は、アメリカはまだトルコの(基地使用の)拒否を忘れられないでいると報じた。
トルコ人も北イラクのPKK(クルド労働者党)の存在をとても懸念していることを明らかにした。
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( 翻訳者:栗林尚美 )
( 記事ID:224 )