首相、ブッシュ大統領と会見し新時代の幕開けを謳う(Milliyet 紙)
2005年06月09日付 Milliyet 紙

■■アメリカとの新時代

アメリカのブッシュ大統領とトルコのエルドアン首相との首脳会談で、トルコ―アメリカ間の関係の戦略的な重要性が強調された。大中東計画(GOP)での協調を確認した二人の指導者の間で、唯一の差し支えがシリア問題だった。

エルドアンとブッシュは昨日ホワイトハウスで、トルコ―アメリカ間の「戦略的協力」の重要性を互いに示しつつ、GOPで民主主義の改革のために共に活動することを望んでいると述べた。
ブッシュは大統領執務室での記者会見で、「多くの問題について包括的な話し合いをした。その理由は、トルコとアメリカの重要な戦略的関係にある」と述べた。エルドアンも、「戦略的な協力関係が過去にあったのと同様、未来に向けても信頼し合いながら進めることを確認でき、喜びを感じる」と話した。

■リーダーシップに感謝
代表団の形で行われ、記者会見でトルコ側の関係者に寄れば1時間を越え、アメリカ側によれば50分続いた会談後、エルドアンは、議論のテーマを「自由、民主主義、法の整備、人権、テロと安全」と要約した。エルドアンは、ブッシュ政権に大中東計画への支援を伝え、ブッシュもこの支援に感謝の意を表明した。
ブッシュは、報道陣の前でエルドアンに対し、「トルコの民主主義は、大中東の人々にとって重要なお手本であり、あなたのリーダーシップに感謝している」と述べた。ブッシュとエルドアンの会談と、続いて行われた会見では次のテーマが焦点となった:
・大中東計画での協力:ワシントンでの話し合いで大中東計画について、アメリカとトルコが「共同の戦略と展望」を持つことを強調したエルドアンは、昨日の記者会見で「トルコがアメリカの要求に全て「ノー」と答えた印象がある」と言った新聞記者に、「大中東計画への態度はノーだったか、それともイエスだったか?どうしてそのようなことをおっしゃるのか」と答えた。
・シリア問題:記者会見でシリア政府との関係が「大中東計画の中で評価されること」を望んだエルドアンは、このアプローチをブッシュに伝えた。エルドアンは、シリアと国境を接しているために続けられている対話で、改革の必要性は最重要課題であると述べ、「テロに対して共に戦うために、我々はシリアをこちら側に引き入れたい。そのためには時間が必要だ。考え方を変えるのは簡単ではない」と述べた。

■「政策は十分だ」
・アメリカへの反感:アメリカが、アメリカへの反感(反アメリカ主義)に対する政府の対応を求めたのに対し、エルドアンは記者会見で、トルコで反アメリカ主義を生み出しているのは「右派と左派の一部の集団」であると述べた。政府がこれにどう対応するのかと言う質問には、「そもそも政策で示している。それで十分だ。反発の必要は無い。反発すれば衝突が起こる」と答えた。

■「非常に影響を受けた」
・EU:エルドアンは、EUの問題について、ブッシュとともに議論に取り上げ、加盟交渉にかんする決意を伝えたと述べた。ブッシュもエルドアンに対し「EU加盟への道の継続」とこれを支援し続けるというメッセージを出したことが分かった。
・アフガニスタン:ブッシュはエルドアンに「トルコがアフガニスタンで指導的な役割を果たしている」ことについて感謝の意を示した。エルドアンのアフガニスタン訪問の印象について、「非常に影響を受けた」と言うブッシュは、アフガニスタンの国民と子供たちの状況を改善するために、アメリカとNATOとともに行動しようというトルコの考えに喜んでいると話した。

■ライスに指示した
・PKKと北キプロス:エルドアンは、イラクのPKKに対する具体的な方策がとられるよう、また北キプロスの孤立に終止符が打たれるようブッシュに要求した。アメリカは、どちらの問題についてもトルコの言い分は正しいと認めた。しかし、具体的にどういった対応をするのかは明確にならなかった。ワシントンから(北キプロスの)エルジャンに直行便を飛ばすよう、ブッシュはライス国務長官に指示した。
・少数民族の状況:トルコの非ムスリムたちの状況について、エルドアンは、ワクフ法をトルコ大国民議会へ送ったことを伝え、この問題の改善を進めているというメッセージを出した。


■■シリア問題で「見解の相違」

アメリカ側によれば「ビジネスライクな話し合い」という雰囲気があった首脳会談で、アサドが肯定的な一歩を踏み出したことを明らかにしたエルドアン首相は、シリア問題でブッシュ大統領を説得できなかった。

エルドアンとブッシュの、トルコ側によれば「1時間を越えた」、アメリカ側によれば「50分」続いた会合は、両国がシリア問題について、大きな見解の違いを持っていることを明らかにした。
エルドアンは、トルコとシリアの対話を「改革を進める目的で結果を出すもの」と性格づけ、このおかげでアサド体制が肯定的な一歩を踏み出したと述べたが、ブッシュは「アメリカも国際社会も、この点についてトルコのようには考えられない」と述べ、納得しなかったと伝えた。

■「バラ色の構図はない」
 アメリカ側の見解を見ると、トルコ側がマスコミに伝えている印象と「大きな開き」がある。ホワイトハウスのスポークスマンであるスコット・マクレランは、昨日のブリーフィングで「戦略的な協力関係を再び深める目的を持っ建設的な会談」という表現をしたが、ホワイトハウスに近い情報筋によれば会談は「暖かい雰囲気ではなかった」、そして「バラ色の構図は描けなかった」という。
あるアメリカの高官は、ブッシュとエルドアンの一番最初の親密な談笑や、大統領執務室で報道陣に行った肯定的な説明にもかかわらず、会談中の雰囲気を「ビジネスライク」だったと説明した。
ホワイトハウスがエルドアンを「会談前に待たせ、さらに会談開始の知らせが遅く、去年の親密な告知とは似つかない雰囲気で行われたこと」を指摘する人は、「会談中も親密さというより“もう一度同じ状態に戻るときがきた”というメッセージが伝えられた」と語った。
エルドアンが、シリアの指導者アサドを改革するよう説得できること、さらにシリアのレバノンからの撤退について、自身やセゼル大統領の訪問が影響力を持っていることを伝え、それはアメリカ側によれば「衝撃的な」ものだった。
ブッシュと同席者は、「あなた方の考えには賛同できない。アサドを孤立させるために連帯している国際社会にも賛同しない」という見解を示した。本誌のインタビューに対しアメリカ側の高官は、「シリア問題は、私達が合意できない、そして協力関係を深めるために協調することが避けられない問題である」と述べた。

■「トルコで話せ」
エルドアンは、ホワイトハウスで互いの関係の重要性を、トルコの世論に過剰に説明しようという意図があるという印象を与えた。
しかしアメリカ側のある筋は「この約束を結果を見届け、エルドアンのトルコでの話をしっかりと聞く」と述べ、「ホワイトハウスでの会談の成功は、エルドアンがここで何を言ったかではなく、トルコで話し、行ったことによる」と話した。
エルドアンが、会談後の記者会見で反アメリカ主義を「右派と左派の一部勢力」のものとし、彼らの言説に対し自らの「政策は十分であり、反発は必要ない」と伝えたことはブッシュ政権を不愉快にした。

■「この関係を守れ」
あるアメリカの高官はエルドアンの言葉に、「ホワイトハウスでの会談から出た答えがこれなら、大変ひどい。このような考え方では本当の協力関係は築けない」との反応を示し、AKP政権に期待することを「ブッシュをヒトラーと似せ、ファルージャの大虐殺に言及し、殺人者たちを殉教者と宣言する考え方をそろそろやめなければならない。トルコ国民をリードし、トルコとアメリカの同盟関係を守るべき」と述べた。


■■ブッシュ、エルドアンの息子ビラルについて尋ねる

・ブッシュは、会談でエルドアンに、世界銀行で働いている息子のビラル・エルドアンについて尋ねた。エルドアンの家族についてブッシュは、「ビラルの調子はどうですか、何をしていますか?スュメイイェとエスラの教育の方はどうですか、奥様は元気ですか?」と、質問した。
・ブッシュがエルドアンを温かく迎え、当初30分の予定だった会談は1時間を越えた。
・会談に、トルコ側からはギュル外相、ババジャン国務大臣、ギョニュル国防長官、国会議員からオメル・チェリキ(アダナ選出)、エゲメン・バウシュ(イスタンブル選出)が参加した。アメリカ側は、コンドリーザ・ライス国務長官、エリック・エデルマン在土大使、国家安全保障評議会のトルコ、地域担当者が参加した。
・ホワイトハウスでの会談で、エルドアンの通訳はこれまでエゲメン・バウシュが行ってきたが、昨日は女性通訳ハンデ・ギュネルが行った。

■妻たちは買い物
・エルドアンの訪問は仕事上の訪問だったため、エミネ・エルドアンとブッシュの妻ローラ・ブッシュは、ホワイトハウスで会わなかった。アメリカで初めて職務に就いた首相府のスポークスマン、メフメト・アキフ・ベキは、どちらからも直接会う考えやそれに向けた要請がなかったと述べた。エミネ・エルドアンは、昨日ババジャンの妻ゼイネプ・ババジャンと買い物をした。
・エルドアンはブッシュとの会談後、アメリカが発祥地の一つである民主主義・平等・自由の精神で知られるトマス・ジェファーソン記念館を訪れた。
・エルドアンは会談後、ホテルでまずトルコとカザフスタンの試合がどうなったかを尋ねた。試合は勝っていると伝えられた。
・エルドアンはブッシュを、秋に行われる予定のバクー‐トビリシ‐ジェイハン石油パイプラインの開通式のためにトルコに招いた。ブッシュも招待を評価すると述べた。
・エルドアンは、ジェファーソン記念館で民主主義、自由、そして平等の精神が書かれた壁の文字を別々に写真に撮らせた。首相府のカメラマンに「読めるように、きれいに撮るように」と言った。


■■議会との交流

エルドアン首相は、アメリカ連邦議会下院のトルコ友好グループ、ならびにアメリカ連邦議会のトルコ研究グループとともに議会で行われたレセプションで一堂に会した。エルドアンは、ギュニュル国防長官、ババジャン国務大臣、そしてギュル外相とともに参加したこのレセプションのあと、上院の多数派のリーダー、ビル・フリストと会談した。エルドアンは、昨晩はと言えば、アメリカ副大統領ディック・チェイニーと会談した。会談の終わりに、「大変すばらしかった」と述べたエルドアンは、トルコが今後これまでにない加速度を得ると話した。

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( 翻訳者:佐藤淳也 )
( 記事ID:175 )