チェルノブイリ原発事故とトルコの原子力エネルギー論争(Radikal紙)
2005年06月25日付 Radikal 紙
トルコ原子力エネルギー機構(TAEK)総裁チャクロール談「チェルノブイリ事故以後、トルコでは誰ひとり被曝後遺症や遺伝子損傷の例はありませんでした」
アンカラ/イスタンブル発
トルコ原子力エネルギー機構のオカイ・チャクロール総裁は、チェルノブイリ事故がトルコには影響を及ぼさなかったと述べた。この問題は先日、TAEKの1999-2003年の財政収支が開示されたトルコ大国民議会の経済振興委員会(KİT Komisyonu)で議論に上った。チャクロールは以下のように語った。「チェルノブイリ関連のあらゆるデータは有識者の手による調査の最終段階を迎えました。20,000ページにのぼる公文書は電子化されました。事故直後の被曝地域で行われた調査では、国民の誰一人として被曝後遺症の例はありませんでした。申告のあった全員の遺伝子情報が検討されましたが、癌の原因となりうる遺伝子損傷は全くみられませんでした。ただし、被曝地域では社会的トラウマが形成されています。問題をいま一度議論し、黒海地方の人々の不安を解消することが必要です。」チェルノブイリ事故によって18カ国が影響を受けたと明らかにしたチャクロールは、「ウクライナ、スウェーデン、フィンランドが最も影響を受けました。潜在的の危険性を考慮すれば、トルコは16番目です。こうして見ればトルコはとても運がいいのです。」と述べた。
■トルコの原子炉は3基
アルメニアのメツァモル原子力施設がトルコ国境から16キロの地点にあることを指摘したチャクロールは、「万一の放射能漏れを検知するため、カルスとウードゥルに20-25基の放射能検知器が設置されました。世界には450ヵ所の原子力施設、30,000発の核弾頭、200隻近い原子力潜水艦、700基以上の実験用原子炉があり、これらのうちの3基はトルコにあります」と語った。
■原発建設地選定中
原子力エネルギーが環境にやさしいと主張するチャクロールは、国内8ヵ所で原発建設予定調査が行われており、政治的認可が下りれば、2007年には着工できる見込みであると明らかにした。
■TAEKは一体何をどう評価したのか?
「環境問題を考える医師団」代表のウミト・シャーヒン博士の話
「TAEKは、チェルノブイリ事故後も、今でさえ、原子力エネルギーを普及させるために手元のデータや科学的事実を歪曲して、結果を示している組織です。白血病やその他の癌疾患は、少なくとも15-20年は発病が予測できません。我々の大学(訳者註:バシュケント大学(在アンカラ)のこと)の研究者と厚生省の首脳は、1986年以前の癌患者数データを持っていないなどと言う言い訳に逃げ込んで、幾つかの不十分なデータを盾に癌の発病がチェルノブイリとは無関係であるとすることをこそ、科学的な発言だと考えているのです。」
アクデニズ大学医学部公衆衛生大講座教員のウムル・ギュルソイ博士の話
「この問題に関しては、TAEKと、研究所での評価は異なっています。チェルノブイリ事故による被害者の村落部での統計は分かりかねますが、過小評価では、トルコは足元をすくわれます。ロシアは実を挙げられない世界保健機構(WHO)から支援を受けました。世界には被曝量を過小評価する研究所が幾つかあって、それらはWHOのデータによればイギリスとカナダにあるのです。」
■「高等教育機構(YÖK)が妨害したのだ」
中東工科大学教員インジ・ギョクメン博士
「当時、放射能に汚染されたチャイが飲まれることなく廃棄されたら、被曝量は深刻にはならなかったはずです。また、チャイを淹れる前に一度煮沸していれば被曝量は半減していたはずです。しかし、我々の指摘に反してこの種の対策は何ら採られなかったのです。大学もこの問題に関する研究や評価を高等教育機構の通達書によって禁止されたのです。」
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( 翻訳者:長岡大輔 )
( 記事ID:328 )