選挙での大いなる不在
2005年05月23日付 Sharq 紙


(2005/5/23 シャルグ紙1面)

 ついに大統領選挙に大きな衝撃が走った。モスタファー・モイーンが立候補資格を認定されなかったのだ。まず初めに、イラン・イスラーム共和国国営放送第2チャンネルが、昨晩の20時30分に特報として、モフセン・レザーイー、モハンマド・バーゲル・ガーリーバーフ、マフムード・アフマディーネジャード、メフディー・キャッルービー、アクバル・ハーシェミー・ラフサンジャーニー、アリー・ラーリージャーニーが〔大統領選挙の候補として〕認められたと報じた。かくして、モスタファー・モイーンは、その他の有力候補者であったモフセン・メフルアリーザーデやセイエド・レザー・ザッヴァーレイーとともに、資格審査で落とされてしまったのである。昨晩ファールス通信も同様のニュースを報じている。原則主義者との関係の近い同通信社が伝えたところによると、原則主義派と改革派計6名の候補者が、立候補を認定されたとのことである。同選挙では、1014人が立候補登録した。

 護憲評議会の公表

 【メフル通信】護憲評議会は、その公示の中で、憲法第115条で定められた第9回大統領選挙の立候補有資格者の氏名を公表した。

 護憲評議会の広報からの発表によると、この公表の全文は以下の通りであった。

 「慈悲深く自愛あまねきアッラーの御名おいて

 再び、偉大なるイラン国民は今後の運命を決する重大な選挙を目前にしている。

 ホッラムシャフル解放の勇ましき物語〔1980年にイラン・イラク戦争でイラク軍に占領されたホッラムシャフルが、イラン軍によって1982年5月に奪還され、イラク軍がイラン領内より駆逐されたことを指す。それ以来、5月24日は解放記念日とされている〕、そして革命の偉大なる建設者にしてイスラーム共和制と宗教民主主義の礎を築かれたお方〔ホメイニー師のこと〕のご命日によってかぐわしき香りにつつまれた雰囲気の中で、『国民の投ずる票こそ基準となる』との亡きイマーム〔ホメイニー師のこと〕(あのお方の気高き墓廟のとこしえに清められんことを)のお言葉のもう一つの具現であるところの、高貴なるイラン国民の熱烈かつ広範なる参加をもって、第9回大統領選挙は行われようとしている。今回もまた、これまでと同様、護憲評議会は国民の信託を受けた者、そして選挙の公正なる実施の法的監督者として、憲法第99条及び第118条が規定する自らの法的責務の実行にそって、選挙の厳正なる実施を監督する義務を負っている。この義務は、選挙の健全性の保証という合理的必要性から、護憲評議会に課されたものである。

 これに基づき、護憲評議会は、立候補登録者たちが憲法第115条に規定された法的条件を有しているかを一人一人調査するという自らの第一の責務を、3つの段階を経て実施した。すなわち、まず立候補登録者たちが法的条件に適合しているかどうかの第一次調査を行うための専門家による会議を立ち上げ、次に専門家による会議の結果を監督中央委員会で討議し、最後に護憲評議会によるおびただしい数の会議で出された最終結論が採用されたのである。この調査は、延べ2500時間以上をかけ様々な会議を経て行われたものであり、〔立候補登録者の〕経歴や〔彼らに関する〕報告などを全て検討し、法的規定を厳正に遵守した結果、至高なる神のお力添えによって、最終結論に至ったものである。もちろん、現行法にもとづけば、法的年齢に達した全イラン人に、立候補登録する権利があり、敬愛なる内務省には彼らを立候補者として登録する義務がある。しかし、憲法はその第115条において、立候補を希望する者たちに対して、大統領職を遂行するに当たって重要で実効性のある条件を定めており、憲法第110条第9項にもとづき、同法の適用の義務を護憲評議会に課している。

 〔国民としての〕責任感から今回の大統領選挙に立候補登録した、すべての人々に敬意を表するとともに、有資格者として氏名が発表されなかったからといって、それはイラン・イスラーム共和国体制において、その他の責任を遂行せんとする彼らの資格を否定するものでは決してない、ということを強調しておきたい。その上で、憲法第115条にもとづき、立候補者としての条件を有する者についての護憲評議会の最終見解を、以下の通りアルファベット順にて発表する。

マフムード・アフマディーネジャード(アフマドの息子)
アリー・アルダシール・ラーリージャーニー(ハーシェムの息子)
モフセン・レザーイー・ミールガーイド(ナジャフの息子)
モハンマド・バーゲル・ガーリーバーフ(ホセインの息子)
メフディー・キャッルービー(アフマドの息子)
アクバル・ハーシェミー・バフラマーニー(アリーの息子)

 最後に偉大なるイラン国民の一人一人にホルダード月27日(6月17日)に行われる重要な選挙に参加するよう呼びかけるとともに、再度自らのシャリーア的・法的責務の履行という、親愛なる国民との約束を果たす所存である旨、ここに強調したい。そして、そのために慈愛深き神に助力を乞い、またわれわれを現在に至るまで支援してくれたすべての人々、特に選挙の実施機関である敬愛なる内務省には、感謝の意をささげたい。すべての選挙関係者、特に敬愛なる立候補者諸氏とその選挙本部、政党やグループ、イラン国営放送(セダー・オ・スィーマー)、プレス、イスラーム倫理とすべての選挙関連法規を遵守する行政関係者が、国民の広範な参加のために、希望に満ちた健全なる環境を醸成することができるよう、希望する。」

ハーシェミー・ラフサンジャーニー師の護憲評議会への要請

 「選挙への国民の広範な参加を求める旨のハーメネイー最高指導者の見解に従うよう、護憲評議会に期待する」

 ハーシェミー・ラフサンジャーニー師は昨日夕方、護憲評議会による正式な立候補者発表にさきがけ、スポーツ競技者及び芸術家たちとの会合の中で次のように表明した。

 「できる限り多くの国民の選挙参加を実現させるためには、国民が自由に、各人の意思にもとづき、もちろん法律の枠組み内で、意中の人物を選択することができるようにすることが一番である。護憲評議会に期待したいのは、国民が自由に各々の意思を表明できるよう、国民の参加と秩序を求める旨のハーメネイー最高指導者の見解に従っていただきたいということである」。

 さらに同師は、「法を遵守した上で、できるだけ多くの国民が参加できるような環境を整えるべく、努力すべきだ」と述べた。

 またラフサンジャーニー師は、「現下のセンシティブな状況にあっては、できるだけ多くの国民の参加し、イランの国力と団結を強化することが必要である」と強調し、さらに「『国民の票こそ基準となる』というイマームの言葉は、人類普遍の、かつイスラームに基づく思想である」とし、「人類はデモクラシーと自己の運命に対する主権を獲得するために、多大な犠牲を払ってきた」と述べた。

 モイーン失格以前にベフザード・ナバヴィーが行った分析

 ベフザード・ナバヴィーは、モイーン立候補資格不認定が公式に発表される以前に、ISNA(イラン学生通信)に対して以下のように述べていた。「資格不認定となる候補者たちに関する噂が正しければ、独立系ではあるが大きな影響力を有する複数の立候補者と、原則主義派の擁立する単一立候補者との間での闘いになるだろう。我々の予測では、この場合、最終的に右派の数グループが結束し、現実化して、ライバルが排除され、投票参加者が減少して、保守派の立候補者が勝利するだろう」。

 「もし資格不認定〔に関する噂〕が本当でなければ、おそらく保守派の候補者は二人の対立候補に確実に敗北するだろう。そしてモイーンともう一人の保守派系ではない立候補者が、第二ラウンド〔の決選投票〕にのぞむことになるだろう」。

 イスラーム革命聖戦士機構の幹部であるナバヴィー氏は、この機構が推す立候補者であるモイーン氏の資格不認定について、ISNAの取材に対してこう述べた。「この噂が本当ではないことをわれわれは願っている。そうでなければ、選挙の舞台から離れる以外に道はないであろう」。

 彼の意見では、「モイーンの資格不認定には法的根拠が何一つない。彼の政治的資質や信仰心の厚さは誰一人として否定できない。つまり、モイーン氏が資格不認定となるとすれば、それは彼の政治的な立場だけが理由だと考えられる。しかし、彼の政治的立場で憲法に外れたものは何もない」と述べた。

 「モイーンと彼の支持者らは、憲法に根本的な問題があるのではなく、現実の権力構造に問題があるのだと考えている」。ナバヴィーはモイーンの資格不認定を国家と体制にとって害を与えるものと見なし、この措置はイスラーム共和国体制のイメージを傷つけるものであり、法体制ではなく現実の権力構造に関する問題を明るみに出そうとする努力を挫折させてしまうだろうと述べている。

 彼は最後に「われわれは、イスラーム革命聖戦士機構第8回大会において、事態が望ましくない方向に展開した場合、特別大会を開催し、そこで結論を出し、それを国民に公表することを基本方針とした。もちろん少なくとも、選挙には不参加ということになるだろう」と述べた。

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( 翻訳者:岩間縁、久野華代 )
( 記事ID:92 )