クルド問題あるのなら、トルコ問題も:首相発言に与党が非難(Milliyet紙)
2005年08月16日付 Milliyet 紙

 エルドアン首相の「クルド問題」発言は、公正発展党で議論を巻き起こした。首相に対する批判は、「犠牲者やその家族を傷つけた。トルコ問題が発生する。地域の闘争を不安定にしている」という点に集中した。

 レジェプ・タイイプ・エルドアン首相が知識人グループと行った会談で用いた「クルド問題」という表現やその後のディヤルバクル視察について、公正発展党内部から議論が巻き起こった。

フアト・ゲチェン(ハタイ選出):心配している。「クルド人」のようなアイデンティティの定義を提示したことは我々に問題をもたらした。この問題はアイデンティティの問題として定義しないようにしなければならない。民族的定義は武装闘争を煽ることになるのだ。そうなればまた別の団体がでる。彼らもまた「我々のことも区別せよ、問題として受け入れろ」と言い出すだろう。これでは民主主義システムは暗礁に乗り上げてしまう。

■武装闘争に力を与える
 「『国家が誤りを犯したことを受け入れる』と言うことで、何年にもわたるテロ集団の主張やその支援者を勇気付けてしまうことになる。彼らはアイデンティティの主張のほかに独自の旗を作り、土地を欲しがっているのだ。『私はこれらを問題と考えている』というなら、地域の闘争を不安定化することになる。
 首相のこの発言やタイミングや表現や発言のありかたは、祖国に害悪を及ぼすものだと私は考える。戦う必要があると信じて、宴まで開いて息子たちを送り出した人々がいたのだ。殉職者たちは我々の指先と同じだ。彼らの死の理由を誤って説明するならば、殉職者たちやその家族を傷つけることになる。
 そのときには『トルコ問題』が現れる。指導者として国家の頂点から立ち上がり『自分の問題だ』と宣言するなら、トルコ問題だということになるだろう。議会が開会されたらすぐに首相が説明してくれることを願っている。ドンパチあったのだ。彼らの士気を落とす権利は誰にもない。」

■トルコ問題になる
アリー・キュチュクアイドゥン(アダナ選出):「PKK(トルコ労働者党)問題はトルコ南東部問題だ」ということは認めるが、「クルド問題」と言おうものなら問題にはきりがなくなる。こういう表現は必要ない。問題を表現する際には支障のないようにしなければならない。いかなるトルコ国民も不平等なことはない。私に適用される法律はどれもすべてクルド人にも同じ法律が適用される。テロ問題があるだけで、クルド問題などない。民族問題を作り出そうとすれば深刻な問題が起こる。私はディヤルバクル副知事を務めた。他の地域には南東部よりも遅れた条件で生きている人々がいる。アダナの村々はひどい状態だ。彼らだってトルコ人なのだ。彼らに「トルコ問題がある」などと言おうというのか?

オスマン・セイフィ(ネヴシェヒル選出):クルド問題ではなく、PKKおよびテロ問題があるのだ。PKKはクルド人の代表ではない。アブドゥッラー・オジャランを処刑しなかったことで問題は解決したか? 国家が強力であるほど問題はうまく解決するものだ。過去に国家は誤りを起こしたことはない。

■問題が起きる
ヴァヒト・エルデム(クルッカレ選出):ディヤルバクルの民主主義の開始を支持する。しかしそれがひとつのエスニック・グループのための開始ならば正しくない。でなければこの発言はトルコに問題を起こす。総理は「クルド問題はある」と言ったが詳細は語らなかった。クルド人が持っていない権利はないのだ。
 民族的な背景を持っていても、国民はみな首相にも将軍にもなれる。そんな状況の中で何が問題だというのか、それを知る必要がある。このクルド問題は、現実の問題から出ているというよりは、極めて分離主義的傾向をもった、外部勢力によって作られた問題だ。

サドゥク・ヤクート(カイセリ選出、議長代理):ノーコメント。

■「意味のない発言」
エルソンメズ・ヤルバイ(アンカラ選出):企業家にここへ投資させなさい、という発言はまったく無意味な発言だ。生命や財産の保障がないのにそんな場所に投資する人間などいるわけがない。
 私が思うに、クルド問題はなく、地域間で発展上の問題があるのだ。首相があの地域に行くなら、ディヤルバクル市長バイデミル氏のことも訪ねるべきだった。

イブラヒム・ハック・アシュカル(アフィヨン選出):トルコにはPKKのテロはある。しかしトルコだのクルドだのいうような問題があるなどと言い出せば、今度はすぐにトルコ問題が出てくるだろう。この問題を地域や民族的な階級に基づいて作ってしまわないことが肝要だ。

□当の地域出身の国会議員は支持
 公正発展党ディヤルバクル選出国会議員イフサン・アルスランは、エルドアン首相の発言をうれしく思ったと表明した。エルドアン首相の表現は、「遅いとさえいえる発言」であると述べるアルスラン氏は、「首相はクルド人たちが求めていたことに応えてくれた。過去にいくつかの誤りがあったことも告白してくれた。我々の基本的な問題のひとつを調査してくれた。勇気を持って、はっきりと明確なメッセージを打ち出した。困難なことをやりとげたのだ。この地域では肯定的に受け止められていた」と述べた。公正発展党ディヤルバクル選出国会議員フェフミ・ウヤヌックも、「首相のメッセージは非常に肯定できるものだ。先任者もそうすべきだったのだ。首相はいまできるだけのことをしてくれている。民主的なメッセージは意味あるものだ」と語った。

□分析:公正発展党の3つの前線
 これまでの政治的経緯から、公正発展党にはさまざまな流れを汲む面々が集まっている。とりわけ右派の国会議員は、数こそ少ないものの、南東部問題のように決定的な問題では仲間を引き入れ、共に影響力のあるブロックを形成できている。この例として、アブドゥッラー・ギュルが旧民主党のメンバーを受け入れたことに反対して発表された「10人宣言」を挙げることができる。その後の経過で、宣言を出した国会議員のうちミラチ・アクドアン、メフメト・エルデミル、スレイマン・サルバシュ、サイト・アルマアンが公正発展党から離党したことは人々の関心を集めた。
 公正発展党が大多数を占め、他に祖国党、正道党やエルバカンの流れを汲む面々も含まれるより中道的なグループでは、「殉職者の遺体を片付けたくない」という態度をとる一部の有権者が原因となってひびが入ってもおかしくないといわれる。
 トルコ大国民議会議員の公正発展党メンバーのうち、70名を占める東部・南東部出身国会議員の大多数はエルドアンの最近の行動に肯定的な反応を示している。



Tweet
シェア


現地の新聞はこちらから
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:宇野陽子 )
( 記事ID:687 )