『私の名は紅』ならぬMy name is Orhan!:起訴に対する外国メディアの反応(Milliyet紙)
2005年09月03日付 Milliyet 紙
ウォールストリートジャーナル紙は、作家オルハン・パムク氏について開かれる裁判を批判した記事に、小説「私の名は紅」のタイトルをもじって「私の名はオルハン」という見出しをつけて報じた。
アメリカのウォールストリートジャーナル紙の欧州版に掲載された記事は、トルコのEU加盟が危機的な状況にある中、作家のオルハン・パムク氏に最長3年の禁固刑を求める裁判が開かれていることに対する驚きの念を表明した。記事には、パムク氏の小説のタイトル「私の名は紅」をもじって「私の名はオルハン」という見出しが付けられた。
■驚きの事実
パムク氏について、スイスのターゲザンツァイガー紙に掲載された声明の中で用いられた「この地では3万人のクルド人と100万人のアルメニア人の命が奪われた。私以外の誰もこのことに触れようとしなかった」という発言がトルコ刑法301条1項に抵触するという理由で裁判が開かれていると伝える記事には、次のように書かれている:
「トルコとEUとの接近を望む者―この中には我々も含まれるのだが、国内で最も著名な作家が自身の思想を表明しただけで禁固刑に処せられる危険にさらされているのは驚きの事実だ。
■EU加盟にマイナス
外交官の個人的意見によれば、裁判はトルコの「EU加盟を妨害する目的で行われた政治的訴訟」だという。トルコ人の大多数はEUの求める改革の実行を支持する一方、伝統と結びついた軍隊や過激派イスラーム主義者の形成する強力な少数派はトルコが西洋世界と一体化しようとの努力をくじこうと躍起になっている。
トルコ政府はといえば、トゥルガイ・エヴセン検事が「トルコを公然と中傷した」として(トルコ系アルメニア人ジャーナリストを)起訴したことに対する批判が噴出している。パムク氏の裁判がトルコとEUとの間に溝を作るなら、とても皮肉な結果となるだろう」。
イギリスのインディペンデント紙でも、同国の元欧州大臣であるデニス・マックシャーネ氏が、裁判はトルコのEU加盟にとって重要であると表明した。マックシャーネ氏は「当局がパムク氏を攻撃し続ければ、トルコの加盟を強力に支持する私たちの多くも考えを変えざるを得ないだろう」と述べた。フィナンシャルタイムズ紙もEU加盟のさなかでの裁判が「世界的な注目を集める」と報じた。
■ドイツマスコミの反応
オルハン・パムク氏の裁判は、ドイツのマスコミでも注目されている。ディー・ヴェルト紙は、パムク氏に対する裁判と脅迫、および報道機関に対する侮辱を伝える一方、「トルコの自由大使を召還させる」という解説を載せた。ベルリナー・モルゲンポスト紙は、スイスの新聞に掲載されたパムク氏のインタビューがトルコに紹介された後に裁判が始まったことに着目した。フランクフルター・ルントシャウ紙は、トルコの反EU勢力がパムク氏に対し力を誇示したと伝える一方、フランクフルター・アルゲマイネ紙は、「真実を表明したパムク氏を禁固刑に処すトルコは、EUには加盟できないだろう」と解説した。ドイツペンクラブも裁判を「EU加盟候補国による思想の自由に対する無慈悲な攻撃」との表現で非難した。
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( 翻訳者:栗林 尚美 )
( 記事ID:796 )