法王、トルコのEU加盟支持:首相・大統領との会談で(Radikal紙)
2006年11月29日付 Radikal 紙

■EU加盟プロセスに驚きのメッセージ

ヴァチカン市国国家元首でカトリック世界の精神的指導者ローマ法王ベネディクト16世のアンカラ訪問は、エセンボア空港での「EU加盟支持」というサプライズでもって幕を開けた。エルドアン首相は首相着任以来初めて来賓を航空機の乗降口で迎え、法王と空港で20分にわたる会談が行われた。そのなかでエルドアン首相の「EU加盟について法王の支持を期待している」との言葉に対し、法王が「トルコのEU加盟を望んでいる」と答えるやりとりが注目を集めた。

■23分の会談

法王を乗せたアリタリア航空機は、昨日(11月28日)13時にエセンボア空港に到着した。セゼル大統領の公式来賓である法王は、航空機の乗降口でエルドアン首相にじきじきに迎えられた。法王と首相の空港での会談は23分にわたった。法王は訪土の喜びを述べ、「トルコの文化は大好きです」と語った。

■「政治家ではないが...」

エルドアン首相は今回の会談で、法王がトルコのEU加盟を支持したことを明かした。記者が「ヴァチカンはトルコのEU加盟についてどのように考えているのか。法王の見解は」と質問すると、首相は次のように答えた。「今の言葉を質問として直接法王に尋ねたわけではないが、『EU加盟にご支援をいただきたい』と私がいうと、法王は『ご承知のように、私たちは政治家ではありませんが、トルコのEU加盟を望んでいます』とおっしゃった。法王の示された期待は、私たちにとって肯定的な発言であることには間違いない。」

■「教会の統合は問題ではない」

「東西ローマ帝国時代から今日まで、キリスト教会は分裂状態にある。このキリスト教会が統一されることは、トルコにとって、教会の統合という点から問題となるでしょうか?」との質問にエルドアン首相は次のように答えた。「まずもって、現在のところトルコにとってはもちろん問題にはならない。私たちは世界平和について語り合った。しかし、教会の統一が実現されるならば、世界平和にとっても一つの前進であろう。こうした一歩が踏み出されればいいと思っている。しかし、トルコとして(キリスト教会の統一について)何らかの役割を果そうとは考えていない。」

首相は次のように続けた。「イスラムが平和的で寛容であり、愛に溢れた宗教であることを法王に説明した。世界平和と特にイスラムに対する肯定的なことばをご自身から聞けたことは、今日の会談が成功したことの証明だ。トラブゾンで修道士が殺害された件でお悔やみを申し上げた。法王は、この事件がイスラムに起因するものではなく、別個の事件であると述べた。『ムスリムもイスラム世界も中傷するつもりはない』とお考えであった。」

■セゼル大統領に友好的訪問

セゼル大統領は、法王ベネディクト16世との50分におよぶ会談でEU加盟に支持を求めた。法王は「トルコの居場所はEU」との言葉でエルドアンに伝えた見解をチャンカヤの大統領官邸でも繰り返し述べた。セゼル大統領は、「トルコ人は北キプロスの宗教施設を破壊した」と主張するギリシャ系キプロス(キプロス共和国)の指導者タソス・パパドプロスへの反論として、法王に『過去を拭い去る:ギリシャ系キプロス管理下のトルコ系宗教・文化遺産』という本を贈呈した。法王は「人類はこのことについてもっと学ばなければならない。キリスト教徒とムスリムの間で、相手がやれば自分も、などと考えるのは誤りだ」と語った。

本紙が得た情報によると、友好的な雰囲気のなか進んだセゼル・ローマ法王会談では次のような会話が交わされた。

セゼル:トルコは、建国から今日まで近代化を進めてきました。西洋と良好な関係を築き、EUと同じ価値観を共有するという方針は既定路線となっています。トルコがEUと統合することは、異なった信仰をもつ人々が、価値観を共有し共生していくうえで重要なモデルとなるでしょう。政教分離のトルコでは信仰と宗教の自由があります。これは基本的な権利であり、憲法によって守られているのです。

法王:トルコの居場所はヨーロッパです。EU内にあるべきです。

セゼル:キプロス問題に関することでお知らせしたいことがあります。キプロスのトルコ人に対し、深刻な不当行為が行なわれています。キプロスのトルコ人は解決に向けた固い意志を表明しました。それにもかかわらず、ギリシャ系キプロスは交易停止でこれに答えてきました。トルコとしては問題の解決をいつも支持してきました。問題解決の基礎は国連にあります。

法王:私たちもキプロス問題(解決)の基礎は国連にあると考えています。この枠内で行われる解決に向けての努力を支持していくとあなた方にお伝えしたいと思います。

■「パパドプロスは間違っている」

セゼル:ギリシャ系キプロスの指導者タソス・パパドプロスが先週法王を訪問した際に、正確ではないことを言ったそうですね。私は法王に、キプロスにおける宗教と文化に関し詳述されている本を贈呈いたします。これを精読なさって、判断を下していただけたらと思います。

法王:バルカン戦争からはじまったモスク、教会の破壊の歴史は知っています。これは誤った行動です。人類はこのことについてもっと学ばなければなりません。キリスト教徒とムスリムの間で、相手がやれば自分も、などと考えるのは誤りです。

私も、あなたのお考えとまったくもって同意見です。価値観の共有、近代性と良心の自由といったものは、全世界の相互理解を深めることにつながるでしょう。

■法王に2冊の本

セゼル大統領は法王にサバハッティン・イスマイルの英語で書かれた本『文化遺産の保護における誠実さと虚偽(Sinserity V Slande On The Preservation of Cultural Heritage)』と、レフコシャで印刷された『過去を拭い去る:ギリシャ系キプロス管理下のトルコ系宗教・文化遺産(Erasing The Past: Turkish Cypriot Culture Religious Heritage Under the Control of The Greek Cypriot Administration)』の2冊を贈呈した。


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( 翻訳者:塚田真裕 )
( 記事ID:4006 )