視点:石油開発事業への外資誘致における問題点~バイバック契約方式の見直しに向けて~ ハムシャフリー紙
2006年11月29日付 Hamshahri 紙

2006年11月29日付ハムシャフリー紙

 イラン大統領アフマディーネジャードは、「わが国における石油・天然ガスに関する契約形態の変化を支持する」と述べた。

 大統領は海外の企業に対し中立の立場を採り、海外の巨大資本誘致を引き続き行う姿勢を示している。しかし、イラン政府が本当に外国企業に対し、魅力的でイランにとっても利益のある契約の中で活動する機会を与えるか否か見極めなくてはならない。海外企業もこうした契約の下で〔イランでの石油事業に〕参入することを求めているのである。

 イランは原油の確認埋蔵量において、世界第3位、天然ガスの埋蔵量においては世界第2位の量を占有しているが、アメリカやその同盟国との核問題をめぐる衝突や、さらに、アフマディーネジャード大統領が反西欧の立場を採っていることが、海外企業がイランに投資することへの懸念を強くさせている。

 石油はイラン経済の主柱のひとつであるが、今後10年間に自国のエネルギー生産の目標を達成するため、またOPECにおける自国の地位を失わないためには、500億ドルの海外投資が必要である。

 海外企業はこの数年間、イランの石油・天然ガス部門への投資において、苦境に立たされている。それに加え、彼らはイランに投資したという理由でアメリカの不興を買う原因を作りたくないと思っている。また一方では、イランの要求に従った契約の条件を承諾するようにとの、イラン当局からの圧力にも直面している。

 さらにイランの経済問題に関わる意思決定が不安定であることもまた、外国資本のイラン参入への障害と見做されている。現在サウスパールス〔注1〕で3件のLNG(液化天然ガス)事業案件をめぐって、イランと交渉を行っている巨大石油企業の役員の一人はこう言う。「イラン側との協議は、責任者がいつもコロコロ替わるので、遅々として進まないことがほとんどだ。」
〔注1〕サウスパールス:イラン南西部ブーシェフル州の最南部に位置する、世界最大の天然ガス田「サウスパールス・ガス田」を指す。

 今年、イランの石油収益は600億ドル、つまり政府の歳入の60%に達するであろうと予想されている。

 巨大石油企業各社は昨年、アフマディーネジャードの勝利の後、新政府によりイランにおけるプロジェクトから撤退させられるのではないかと恐れたが、現在彼らはそれとは別の見方をしており、投資に関する法律の改正やバイバック契約〔注2〕の見直しを求めている。
〔注2〕バイバック:イラン国営石油会社と海外の石油会社との間で結ばれる契約形態の一種で、海外企業がイラン国内の油田を開発した場合、開発にかかった経費と利益を、開発により得られた生産物の利益から受け取るというもの。

 海外の企業はイランの石油・ガス計画を執行する「バイバック」と名づけられた契約に対し、なじみがないし好んでもいない。彼らはむしろ石油・ガス生産の共同開発契約を望ましいと考えている。バイバック契約は投資会社に対し、それぞれの投資額を油井やガス田の産出分から回収するまで、最大5年から7年の猶予を与えるものであるが、政府はこの時間的猶予を最大15年まで延ばす意向である。

 さらに、イラン政府は以下のように発表している。「外国企業に対し、一部の開発計画に直接投資する許可を与えるつもりである。このことは、外資にとっても重要な投資促進要因となりうるだろう。」それにも関わらず、イラン当局は〔バイバック契約に関わる〕上記改正の正確な時期を発表していない。しかし同時に、海外企業との契約方式の改変を推し進めることも強調している。

 ロンドンChatham-House(チャタムハウス)〔注3〕上級研究員でエネルギー問題専門のヴァレリー・マーセルは、このことに関し以下のように述べている。「イランにおける(上記のような)外資との契約に関する改革の実行は、確かに積極的な動きである。イラン当局は、彼らが海外企業の要求を完全に理解していると述べている。しかし、これらの要求の存在を認めることよりもはるかに重要なのは、改革を現実に実行することなのである」。
〔注3〕Chatham-House:イギリス王室認可の私的研究機関。王立国際問題研究所とも呼ばれる。国際問題の分析において、世界でもっとも影響力のある研究機関の一つ。第一次世界大戦後の1920年に設立され、翌年には姉妹機関とも言われるアメリカの「外交問題評議会(The Council on Foreign Relations)」が設立されている。ハータミー前大統領も先日、この研究機関で講演を行っている。

 イラン政府は現石油相を更迭することにより、この改革計画を水泡に帰そうとしているのではないかとの懸念が海外企業の多くには根強いものの、バイバック契約の改正はイラン石油省上層部により強く支持されていることも事実だ。

 イランのカーゼム・ヴァズィーリー=ハーマーネ石油相は、この問題について非常に開かれた、また独自の視点を持っており、イランの石油事業についての正確な知見により、イランと海外巨大石油開発企業との取引の重要性を認識している。実際彼は再三にわたり、「イランは海外石油企業の参入を歓迎する。また外国資本に関わる現行法の見直しを強く推し進める」と述べているのである。

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( 翻訳者:前川元 )
( 記事ID:4104 )