米大統領、パレスチナ選挙を賞賛しつつハマースへの姿勢は堅持(アル・ナハール紙)
2006年01月27日付 Al-Nahar 紙

■ ブッシュ大統領、ライス国務長官:「選挙は公正に行われ、ファタハ旧世代へのメッセージである」との認識示す
■ ブッシュ大統領:アッバース大統領を支持、ハマースに対する姿勢を繰り返し表明

2006年1月27日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面

【ワシントン:ヒシャーム・ムルヒム】

 アメリカ政府は昨日、パレスチナの選挙は公正かつ自由な選挙であり、変化を望むパレスチナ人の気持ちを反映したものであったと賞賛する一方、選挙で勝利したイスラム抵抗運動「ハマース」に対するアメリカ政府の従来の姿勢を繰り返して表明し、コンドリーザ・ライス国務長官が言うところによれば「片方の足を政治に突っ込みながらもう一方の足をテロに踏み込んでいる」ハマースとの協力を拒否した。アメリカのジョージ・ブッシュ大統領は、「我々の姿勢は大変明確である。我々の姿勢とは、いかなる政党であろうとも政策綱領においてイスラエルの破壊を呼びかける政党には、我々は協力しないというものである」と表明した。

 アメリカの公式の反応は複雑な性格を帯びていた。すなわち、アメリカ政府はテロ組織とみなしている政治組織が勝利したことに見られる否定的な面に焦点を当てるのではなく、パレスチナの人々が腐敗した現状を拒絶して変化を望んだがゆえの選択の意味合いに焦点を当て、旧来からのファタハ指導部に代表されるパレスチナの旧世代には今回の結果について大きな責任があると考えている。また、ハマースの勝利がレバノン、シリア、ヨルダン、エジプトにおけるイスラム主義運動に影響すると予測している。

 また、ブッシュ大統領が選挙の結果について「指導部の覚醒を要請するものである。人々が現状に満足していなかったことは明らかである。人々は信頼できる政府を求めている。人々は良い教育を受けられる環境で子どもたちを育て医療サービスを得ることを求め、公共サービスを欲している。従って、この選挙でパレスチナの旧世代の目が開かれなければならない」と述べたことが注目を集めた。

 ブッシュ大統領は、数日後に下院で行う年一回の一般教書演説で取り上げるポイントについて話すために開かれた記者会見の中で、今回の展開を「前向きである」と表現した。ブッシュ大統領は、米政権は間もなく行われるパレスチナ政府の組閣プロセスを見守るつもりであることを表明し、「組閣について前もって憶測を述べるることはしたくない」と述べた。

 ブッシュ大統領は、ハマースが率いる政府と交渉を行うつもりかと訊ねられ、次のように答えた。「私は先程申し上げた内容を今後とも人々に訴えていきたい。すなわち、ある党が政策綱領においてイスラエルの破壊を訴えるのであれば、それはその党が和平のパートナーではないことを意味する。我々は和平を重要視している(…)すでに完全に説明したとおり、アメリカ合州国は我々の同盟国イスラエルの破壊を望む政党は支持しない。彼らは政治綱領の中のこの項目を放棄すべきである」。

 またブッシュ大統領は、広く投票への積極的な参加が行われたこと、選挙が平和裏に進んだことに触れ、こうしたことは肯定すべき展開であるとの認識を示した。ブッシュ大統領は異なる意見の競争の原則を歓迎し、プロセスが全体的に健全であったとの見解を示し、またこの選挙は「大きな関心を惹きつけるものであった」と述べた。その後「ハマース」の勝利という否定的側面に立ち戻り、「しかし一方では、一国の破壊を政治綱領の一部として謳っている党は、いかにしても和平のパートナーには成り得ないと私は考えている。(…)また、軍事部門を有する政党が和平のパートナーになることはできないと分かっている」と述べた。

 ブッシュ大統領は、パレスチナのマフムード・アッバース大統領に対して大統領職を辞任せず留任するように要請するのかと訊ねられ、次のように答えた。「我々はアッバース大統領が政権に留まることを望んでいる。(…)彼が政権内にあって、大統領職に留まることを我々は望んでいる。アッバース大統領に対する我々のメッセージは、彼が大統領職に留まり、和平プロセスを前進させるために活動してくれることを我々は望んでいるということだ」。ブッシュ大統領は総じて民主的なプロセスであったことをあらためて賞賛し、次のように自問する形で語った。「もしも汚職が存在するなら、人々が『汚職を終わりにしよう』と言うのも不思議なことではない。もしも政府が人々の要望に応えることができないのであれば、人々が『我々の要望に応える政府を望む』と言っても不思議ではない。それゆえ昨日は関心を呼び起こす日であった。というのも我々は中東において自由が広まり始めるのを目の当たりにしたのである」。

 ブッシュ大統領は昨日ライス国務長官に二度連絡をとり、アメリカ政府首脳部を呆然とさせたパレスチナの選挙結果について協議した。というのも彼らは観測筋の大半とともに「ファタハ」の僅差による勝利を予測していたからである。ライス国務長官も中東和平四者委員会の各外交代表者と連絡をとった。近く行われる四者委員会の会議では、「ロードマップ」の状況や、選挙後のパレスチナ政界における根本的変化、アリエル・シャロン首相が病に倒れた後のイスラエルの政治状況について論議することになる。

 ライス国務長官は、ダボスにおける世界経済フォーラムのセッションに衛星中継で参加した会談の中で、「パレスチナの人々が和平を呼びかける政策に基づいて選挙で選んだ」パレスチナ大統領と連絡をとったことを明らかにし、パレスチナ人は組閣にあたって憲法に則ったプロセスを継続すべきだと述べた。

 ライス国務長官は、「このプロセスが平静かつ安全な環境の中で進展していくために、全ての勢力がこのプロセスを尊重すべきである」と、注目すべき呼びかけを行った。またライス国務長官は、この選挙についての見解を次のように述べた。「選挙は平和的で暴力行為もなかった。また、あらゆる方面からの見解によれば公正なものであった。パレスチナ住民の積極的な参加が見られた。パレスチナの人々は変化のために投票したと見られる。しかし我々は、パレスチナの人々の平和と安全な暮らしへの期待に変わりはないと考えている。この期待は2国家共存に基づく解決を通じてしか実現することはできない。暴力を放棄しテロを止め、イスラエルの生存権を受け入れ、民兵を武装解除することが必要である。すでに我々が述べたとおり、片方の足を政治に突っ込みながらもう一方の足をテロに踏み込むことは許されない。従って、ハマースに対する我々の姿勢は変わっていない」。

 マーティン・インダイク前国務次官補は、選挙結果は「我々が知っていた和平プロセスはもはや終わったことを示している。どのようなものか我々にはまだ分からない別のプロセスが始まるだろう」とコメントした。インダイク氏は、ハマースの勝利によってイスラエルは「ハマースを和平プロセスのパートナーとはみなしていないので、パレスチナ人と話し合うようにとの国際的圧力を受けないまま一方的措置をとる」政策を強化することになるだろうと述べ、また一方でイスラエルの当面のこうした姿勢が、「パレスチナ内部の状況を重視したいと考えるハマースにとっても都合がよいものとなるだろう」と述べた。またインダイク氏によれば、ハマースの勝利はアラブ世界において大きな反響を呼び、レバノン、シリア、ヨルダン、エジプトなどの諸国の政府の不安を増大させることが予想される。というのはこの勝利がこれら諸国におけるイスラム主義運動を鼓舞することになるからである。



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( 翻訳者:森本詩子 )
( 記事ID:1835 )