学校での暴力事件にメディアの影響? ―教職員組合のアンケート結果より(Hurriyet紙)
2006年03月25日付 Hurriyet 紙
トルコ教職員組合が実施した「暴力と迷惑行為」に関するアンケートで、若者の21%がマフィヤを描いたシリーズ番組を観ていることが明らかになった。
組合による紙面発表では、トルコの若者のうち中学2,3年生1136人を対象に実施されたアンケートの結果についてまとめられた。
発表では、「どの種のテレビ番組を好んで選ぶか」といった質問に、若者の21%がマフィヤ、19.5%がコメディと回答した。また学生の44.8%がアクション、冒険、ホラー、戦争のジャンルの映画を観ていることが分かった。
インターネットゲームサロンやインターネットカフェへ通う学生の間で人気のゲームの種類のうち、66.5%が戦争や暴力のゲームであることが指摘された発表では、サッカーゲームが12.1%、車やサーキットゲームが9.9%にしか過ぎないことも報告された。
学生の間での迷惑行為についての割合は92%、と回答された発表で、女性は「 しつこくつきまとわれること」、男性は女性が「なれなれしくすること」を不快に感じていることがわかった。
■署名キャンペーン
トルコ教職員組合シュアユップ・オズジャン会長は、このアンケート結果は衝撃的だと語り、若者らしさが消滅しないためには家族をはじめ、国民教育省、メディア、警察の力で社会全体を動員していくことが必要であると述べた。
学校での暴力を防ぐためにも、トルコ全体で署名キャンペーンに乗り出し、集めた署名をトルコ大国民議会議長や国民教育及び内務大臣、各政党代表、メディア編集長、市民社会団体へ送る意向を示したオズジャン氏は、「若者らしさを無駄にしないために全ての人からの支持を期待している」と述べた。
■精神医学博士ジミッリ:社会の変形が生じている
トルコ精神医学協会副会長ジャン・ジミッリ博士は、学校で起こっている暴力行為に関連して、「社会に変形が生じている。これには、精神医学的理由よりも、人間を形成する価値観が浸食されつつあることや経済的困難が影響している」と語った。
ジミッリ博士は、小学校の生徒間でさえも暴力事件が発生し始めたことを挙げ、この現象は心理学的というより社会学的な事件であると指摘した。
「社会に変形が生じている。これには、精神医学的理由よりも人間を形成する価値観の消失、浸食、そして経済的困難の影響がある。(都市への)移住が原因で田舎の伝統的家族が解体し、都市化してきたことで暴力の増加が見られる。」
また、ジャン・ジミッリ博士は、暴力を映した内容のテレビ番組や映画、インターネットゲームが暴力を助長するファクターになっていると述べた。
国家が社会政策を放棄し、保健政策が民営化されたことに注意を引くジミッリ博士は、浮浪者や身障者、孤児といった人々への扶助を行う団体をつくる必要性を強調した。
■国民精神の健康に関する政策があるべき
ジャン・ジミッリ博士は、社会の期待が増すこの問題について何も対策がとられていないことを弁護し、次のように述べた。「 国家には国民の精神の健康に関する政策がない。これがなくては、この分野への投資も行われない。国家には国民の精神の健康に関する政策がなくてはならない。暴力傾向がある危険グループを明らかにし、それによって援助プログラムを立案しなくてはならない。組織の基盤としてカウンセラーを置かなくてはならない。全組織を含む対策がとられなくてはならない。学校でもこの問題に着手すべきだ。」
暴力に向かう子どもに対し必要な対策がとられなければ、ごく若いうちに前科者となる恐れがあり、年齢が重なればハビリが困難になるだろうと指摘するジミッリ博士は、両親が子供と良好な関係を築くことが必要であると強調した。
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( 翻訳者:清水 葉月 )
( 記事ID:2112 )