イランのエネルギー助成金についての世界銀行レポート:意味のない助成金 ハムシャフリー紙
2006年06月25日付 Hamshahri 紙
2006年6月25日付 ハムシャフリー紙14面
各種助成金は低所得層への援助を目的としているが、分配の不適切なシステムのため、決して実現されていない。1年のうち考慮に値する額の国家予算が各種エネルギーへの助成金、特にガソリンと電気への助成金に割り当てられているが、イランにおけるエネルギー助成金の実際の数値はこの額を非常に上回っており、政府は毎年この助成金に対して相当の費用を負担している。だがエネルギー助成金に関する批判はこれらの各種助成金への批判でもある。たとえ助成金分配の本質がイスラーム経済システムの公正を求める諸目的のためであったとしても、調査によって高所得層が低所得層よりもエネルギー助成金から多くの配分を受けていることが明らかになったことからもわかるように、イラン経済の実践において見られるのはエネルギー助成金の不適切な分配である。以下のレポートは、イランのエネルギー助成金、特にガソリン助成金のシステムに関して世界銀行の行った調査である。
イランは国内のガソリン生産の非常な不足に直面している。2005年(1383年)3月20日に終わる会計年度にイラン政府は30兆リヤル(約3910億円)に上るガソリン助成金を出費したが、この額は予算でこの項目に割り当てられていた15億ドル(約1725億円)という数字をはるかに上回っていた。イランにおける1年のガソリン消費は近年12パーセント上昇しており、ガソリン価格がこれまで人為的に安価に抑えられていたのは政府の意向によるものだった。同時に、近隣諸国と比べて非常に安いイランにおけるガソリン価格は、海外への密輸を引き起こし、1年に10兆リヤル(約1265億円)政府の損失となっている。2004年から始まった第4回5カ年計画に基づき、イラン政府は燃料価格を徐々に国際水準に近づけなければならない。だが2005年6月現在、イラン国会は2005-6年会計年度全体でガソリン価格の[これまでの価格と同水準の]安定化を票決した。
世界銀行は、ガソリン価格の引き上げは、ガソリンへの高額の助成金の結果である経済的非効率に対する最も効率のよい改善策であると考えている。だがガソリン価格の引き上げはイラン政府にとって、どの程度まで引き上げるのか、どの程度の速度でまたどの程度の結果が出るまで行うのか、ガソリン価格の引き上げは他の品目の価格上昇にも影響を及ぼし、政府の介入の必要を増加させるのか、などのいくつかの疑問や躊躇を引き起こしている。
ガソリン価格を国際水準まで引き上げれば、確実にイランから海外へのガソリン密輸を抑止し、助成金の高額の費用や密輸がもたらす政府への損失を削減することができる。ガソリンの高い助成金やガソリン価格を安価に保つのは[生産者による]経済的機会[の追求]という代価も含む。もしイラン国内のガソリン生産者が自由に自社のガソリンを販売できるとすれば、彼らは確実に国際水準のより高い価格に留意して自社のガソリンを世界市場に販売するだろう。
世界銀行は2001-2年会計年におけるイランのガソリン価格引き上げの結果の見積もりを行った。この年、イランにおけるガソリン価格はそれ以前の10年における最も高い水準まで達した。過去10年間の各種エネルギー助成金は平均でイラン国内の純生産の11パーセントを占めた。この各種助成金は現状では政府に相当の予算を負担させており、インフラ関連の予算確保に対して政府の可能性を限定している。ある種のエネルギーに対してイラン政府から与えられる各種助成金は、イラン社会の10パーセントを占める最上層の富裕層に対して、10パーセント以上を占める最下層の貧困層に対する利益の12倍の利益をもたらしている。同様にイランではエネルギー消費の非効率性は他の海外諸国を非常に上回っている。セメントや鋼鉄や鉄などの工場は日本の同様の工場の約40~60倍のエネルギーを消費している。例えばイランで生産される冷蔵庫は日本やドイツで生産される冷蔵庫と比べてより多くのエネルギーを消費する。イラン・ホドロー社も海外のホドロー社よりも平均して37パーセント多くエネルギーを消費している。
概して、イランにおけるガソリン価格を世界水準に引き上げることは、最終的に、イランにおけるエネルギーの最適で最も合理的な消費及び、エネルギーの需要自体の減少へとつながっている。イランにおけるエネルギー価格の引き上げとエネルギー助成金の廃止は、輸送費や煉瓦、セメントなどの建築資材や水の経費の70パーセントの上昇を引き起こすだろう。エネルギー価格の上昇によって生じるであろう、福祉水準において意味をもつエネルギー需要の適切な減少は、都市部でも農村部でも、家庭の支出の上昇とともに調整されるだろうが、確実にイランの農村部での福祉水準の低下がより多く感じられるようになるだろう。同様に、ガソリンと軽油の価格上昇は貧困層や農村部(支出全体に対するエネルギー消費の割合は都市部の15倍に相当する)に対して都市部の富裕層の約2倍の影響をもたらす。従って、政府から補償の措置がとられない状態でのイラン政府によるガソリン価格の引き上げは非常に望ましくない結果をもたらす。
世界銀行は、最終的な消費者の需要に対するガソリン価格引き上げの効果の予測は、[量はおろか]質の面でも困難に直面すると考えている。他方、価格引き上げと燃料助成金の目的ある分配は、政府の助成金負担の削減につながるだろう。ガソリンは主に個人の自動車の燃料として用いられている。所得グループごとに見た自動車所有が社会の最上層に集中していることやイランにおける直接課税システムの脆弱さを考慮するならば、ガソリンへの各種助成金は主にこれらの最上層の懐に入っていくことになる。
国際貿易は、エネルギーの意味ある助成に対する意味あるシステムの企画は難しい仕事であるという事を理解する助けになる。最適策は(もちろん適切な方法でマネージメントされる場合及び、技術的に実現可能な場合だが)、エネルギーに対する各種プログラムや助成金が廃止されることであり、([エネルギー以外の]給食、水、電気、教育、健康などの)様々な部門での[助成の]政策がいかに貧困層に影響を及ぼすか、それらの福祉の水準を直接引き上げることにいかに助けとなるかという事実に注目することである。
従って、イランにおけるガソリン価格が世界水準の約10分の1であることに留意するならば、ガソリン価格引き上げの最初の段階では、政府から補償の措置がとられなければならず、時間の経過とともに、家庭のエネルギー需要が保障されるように社会の貧困層を助ける安定したメカニズムが用意されなければならない。
世界銀行は2003年のレポートでも、石油収入に対するマネージメントの適切な戦略は、国内の純生産において石油収入の支出配分を次の10年間において17パーセントにまで引き下げることだと予測していた。このレポートによれば、エネルギーに対する各種助成金全体の削除はイラン社会における福祉の32パーセントの上昇を引き起こすという。何故ならこれは政府の収入の引き上げにつながり、新たに上回った収入は再び各種エネルギー助成金と同じ額だけイランの各家庭へと戻ることになるからである。だが今度は確実に貧困層がより多く分け前を受けるだろう。
実際に、各家庭への[助成金の]直接の付与は、たとえ貧困層がそれらの助成金の目的ではないとしても、貧困層が目的の[実践されていない]助成金よりも、社会の低所得層により多くの福祉を行き渡らせる。
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( 翻訳者:下山伴子 )
( 記事ID:2858 )