セゼル大統領、イスラエル訪問(Hurriyet紙)
2006年06月07日付 Hurriyet 紙
アフメト・ネジュデト・セゼル大統領の、イスラエルでの公式行事が始まった。イスラエル大統領のモーセ・カトサブと会談したセゼルは、イスラエル・パレスチナ問題が正しい解決に至るためには、両政府の解決という目標が達成されることが唯一の適切な方法であると述べた。イスラエル議会でのスピーチで平和を呼びかけるメッセ-ジを発表したセゼル大統領は長い間拍手を浴びた。
大統領アフメト・ネジュデト・セゼルは、イスラム諸国会議のメンバーであり、アラブ諸国との歴史的な友好関係がある一方、EUの加盟候補国であると同時に、NATOとヨーロッパ評議会のメンバーであるトルコが、イスラエルの近隣諸国との平和構築のために、できる限り協力する準備があることを述べた。
イスラエルとパレスチナ両国が友好及び信頼関係を築くことを特別視するトルコは、同時に責任を負っているととらえていると述べたセゼル大統領は、イスラエル首相エフド・オルメルトが、できるだけ早くパレスチナ自治政府議長マフムード・アッバースと会談を始めることを期待していると述べた。
大統領セゼルは、イスラエル議会に入るとき、議長のダリド・イティジクによってセレモニーで迎えられた。
セゼル大統領は、議会でおこなった演説で、イスラエル訪問で感じた喜びを表現した。
何百年もの間、寛容、親愛、団結の中でひとつになって生活してきた最も素晴らしい例であるトルコ人とユダヤ人は、共通の過去から深めた友好関係に将来も誇りを持とうと述べたセゼル大統領は、次のように続けた。
「トルコ人とユダヤ人は、つらい時期もお互いに助け合った。たとえば私たちは、イスラエルの人々が1999年の大地震の際、最前線で事故の犠牲も省みずに協力し、私たちの悲しみを共有してくれたことにいつも感謝している。
良い時も悪い時も、試されながら強固になったお互いの友好・結束関係は、今日、トルコ共和国とイスラエル政府の間での組織的なパートナーシップの健全な基になっている。
私たちの関係は最近、どの分野でも急速に発展している。しかし、ともに活動し、お互いの利益を目指していけば、お互いの協力体制をさらに深めることができると我々は気付いている。2つの民主主義国家の協力は、中東における平和と安定と繁栄に貢献すると私は信じている。」
セゼル大統領は、トルコは異なる地理と文化の交差点に位置し、世界で類のない政治的、地理的節点にあることに触れて、アジアとヨーロッパ、地中海と黒海、中東とコーカサスとをそれぞれ結んでいることを強調した。トルコが、この特殊性によって、東と西、北と南の間の協力と友好の架け橋になっていることを述べたセゼル大統領は、次のように話した。
「(我が国は)世俗的、民主的な構造と平和主義的外交政策によって、自国と周辺地域の安定と繁栄に貢献している。(我が国はまた、)基本的な国家の伝統、歴史的な経験、異なる伝統の統一を基にする文化的蓄積、及び民主的価値によって育まれた国民性により、文明間の対話と理解の統合の達成において明らかな役割を果たすことのできる地域の力である。
憲法に規定された民主主義、良好な統治、法の優越、男女の平等、市場経済、地域的発展及びテロとの闘争における国際協力は、地域の安全と安定という観点から基本的な手段である。トルコはこの分野における経験によって、普遍的な価値観が中東で普及するよう努力を続けるつもりだ。私が心から信じているのは、地域の人々が心から望んでいる心の安らぎと繁栄とは、衝突ではなく協力に向かって、敵意ではなく友好と平和に変わった共通の未来の目標に向けて、ともに歩み始める状態になることだ。トルコは、この方向での努力を積極的に支持することを決めている。」セゼル大統領は、トルコが多くの分野で、近隣諸国、友好国、及び同盟国も利用できる可能性を提供していることを示唆し、エネルギーの分野はこの観点から、顕著な例であることを述べた。バクー-ティフリス-ジェイハン間の原油パイプラインの公式開通式が7月に実現することに触れたセゼル大統領は、東西のエネルギー輸送路の最も価値ある部分を占めるこのラインが、地域における安定と経済発展を保証するという点から、実生活上重要であることを強調した。セゼル大統領は、「この計画が協議中のほかの計画とともに着手されれば、トルコが地域のエネルギー輸送センターになるための重要な通過点に来たことが明らかになる。アジアとヨーロッパが新しいシルクロードで結びつくという点から、我が国は鍵となる国である。この関係において、イスラエルとエネルギー分野においても、より広い範囲でともに協力し始めたことを私は強調したい。トルコとイスラエル間で、多種のエネルギーと水の輸送ライン計画が立案される可能性についての調査と活動が協議中である」と話した。
トルコのEU加盟プロセスが、地域的戦略の反映であることを述べたセゼル大統領は次のように続けた。
「近隣地域とEUの両方に対して、政治的、経済的、戦略的な意味において広い視野が得られる可能性がある。トルコの加盟は、同時に、EUの拡大案の多文化で世俗的な特質が保証されることを証明するだろう。この点において、我々は最近のイスラエルとEUの発展関係を詳細に追跡し支持している。
アメリカと私たちの間の戦略的パートナーシップは、外交政治の優先事項の中で最も重要な部分である。イスラエルとの協力体制は、この関係においても特別な意味がある。
イスラム諸国会議のメンバーであり、アラブ諸国との歴史的な友好関係がある一方、EUの加盟候補国であると同時に、NATOとヨーロッパ評議会のメンバーであるトルコは、友好国イスラエルの近隣諸国との平和構築のために、できる限り協力する準備がある。
イスラエルとパレスチナが、友好関係と信頼を築くことを特別視するトルコは、同時に自らが責任を負っているととらえている。イスラエル・パレスチナ問題が、ロードマップの建設と共に平和に向けて歩む両政府の目的に向かって、会談という方法で解決に至ることを心から望んでいる。2ヶ月前の選挙でイスラエル国民から選出された第17期議会の議員と首相のエフド・オルメルトをリーダーとする新イスラエル政府が平和に向けて、必要な努力を確実に示すことを信じている。首相エフド・オルメルトが、一刻も早くパレスチナ自治政府議長マフムード・アッバースと会談を始めることを期待している」
大統領セゼルは、ホロコーストのような反人道的で、歴史の最も暗い部分に位置し、他に例を見ない罪によって、何百万人もの犠牲を出したユダヤ国民の、人々の良心にも深い傷を残したこの痛ましい記憶は決して忘れられないと述べた。これについて、反ユダヤ主義とすべての人種差別主義が、人道に反する罪であり、これに対して断固たる態度で戦う必要があることをもう一度私は繰り返す、と付け足した。
大統領セゼルは、イスラエルとの協力がすべての分野で発展をもたらすことを確実視していると述べた。そして、スピーチをヘブライ語で‘平和とあいさつ’という意味の「シャロム」という言葉で終わらせ、最後に再びヘブライ語で感謝の意を表した。
スピーチ終了後、イスラエルの議会議員によるスタンディングオベーションが長く続いた。
■アタテュルクのおかげである。
一方、セゼル大統領を会場入り口にてトルコ語で歓迎した議長のダリア・イティジクは、会談の中で、セゼル大統領が滞在中くつろいでくれることを望んだ。
イスラエルではオスマン時代から残っているたくさんのトルコの作品があり、イスラエルの法律には、オスマン朝から影響を受けた足跡があると述べたイティジク議長は、500年前、スペインから追放されたユダヤ教徒をオスマン朝が受け入れたことに触れ、このことを片時も忘れないだろうと述べた。また、ナチスの時代にドイツから離れた多くの知識人をトルコが受け入れてくれたことを述べた。
アタテュルクが自分達に手本を見せたと強調したイティジク議長は、トルコとイスラエルが共通の民主主義的価値を共有しているとも述べた。イスラエルの人々がトルコに非常に好意をもっていることを述べたイティジク議長は、過去にイスラエルからトルコに40万の訪問客があったことに触れ、イスラエルにトルコから移住してきたグループもあり、彼らが2カ国間の架け橋になっていることを説明した。
イスラエル副首相シモン・ペレスも会談で、アタテュルクを『記憶に残るリーダー』として特徴づけて、「多くの観点から、20世紀に世界で彼ほど先を見ていたリーダーはいなかった。」と述べた。アタテュルクが宗教組織による国の統治があってはならないことを理解していたと述べたペレス副首相は、この点を近代的な一歩として特徴づけた。セゼル大統領が訪問で感じた満足感を話題にしたペレス副首相は、「あなたは我々の前で、現代的なトルコの価値を象徴している。」と話した。ペレス副首相は、セゼル大統領が憲法裁判所長時代に国民の諸権利を守るために努力していたと述べた。ペレス副首相は、トルコとイスラエルの協力が単に軍事部門だけでなく、民間の分野でも濃密になる必要があることを強調し、二カ国関係がすべての点から大きな可能性を秘めていると述べた。また、イスラエルがトルコのEU加盟を支持していることも表明した。最大野党のリクード党党首のベンヤミン・ネタンヤフも、トルコについてはイスラエルでは与党と野党という区別なくみながトルコとの関係を支持していると述べた。ネタンヤフ党首は、トルコが一度も反ユダヤ主義に傾倒しなかったとし、トルコがすべての点から肯定的なモデルを形成していることを述べて、「トルコの重要性とは、極端に対して分別を象徴していることだ。」と話した。
■セゼル・カトサブ会談
大統領アフメト・ネジュデト・セゼルは、イスラエルの公式訪問をイスラエル大統領カトサブとの会談で始めた。セゼル大統領は、イスラエル・パレスチナ問題が正しい解決に至るためには、両国政府の解決という目標の達成が唯一の適切な方法であると述べた。セゼル大統領は、イスラエル大統領モーセ・カトサブによって大統領官邸で公式セレモニーにて迎えられた。両国の国家斉唱の後、セゼル大統領は儀仗隊を視察した。両大統領はその後官邸の庭で記者会見を行った。セゼル大統領は、両国間の500年を越える歴史的な友好関係が存在していると述べ、この関係をさらに深めるために実現された公式訪問で大きな幸せを感じていると述べた。トルコとイスラエルの間には非常に長きにわたり深い関係があると述べたセゼル大統領は次のように続けた。「私の訪問中にこの関係と協力体制の再評価をし、さらに地域的な問題に関して意見交換をするつもりだ。それらをカトサブ大統領及びイスラエル政府当局者と共に共有することになるだろう。トルコとイスラエル間の濃密で長期間の関係と協力が、地域の平和と安全に貢献すると信じている。私の訪問がトルコとイスラエルの関係と協力強化に新たに貢献するだろう」セゼル大統領は自身と随行団へのもてなしに感謝した。
■カトサブ大統領:関係は強化されるだろう。
イスラエル大統領カトサブはセゼル大統領の訪問に大きな満足を感じていると述べた。カトサブ大統領はこの訪問が、両国の間に存在する強い、安定した、実りある関係と両国民の間の友好関係を象徴していると強調した。そして、セゼル大統領の訪問が二カ国間にある関係と相互理解の更なる強化に貢献するだろうと述べた。トルコとイスラエルの間には経済、政治、貿易及び文化の分野も含んだ広範囲にわたる幅広い協力が存在していると述べたカトサブ大統領は次のように続けた。
「イスラエルはトルコを同盟国としてみている。さらに、両国の国益のため、及びすべての地域のためにこの相互協力は非常に重要であると信じている。この関係は、お互いの国益のほかに、普遍的な人道的価値、民主的な価値及び地域に対し安定をもたらすことが必要であるという信念によるものだ。トルコは強固な民主主義の伝統によって世界に一つの例を示したと同時に、すべての地域の利益に対して行う改革によってもさらに一つの例を示している。セゼル大統領と地域的な問題、あるいは両国の関係、そして世界的な関心を呼んでいる問題について意見交換をするつもりだ。このような機会を与えてくれた今回の訪問を、私は非常に重要視している。これまでイスラエルでも、そしてこの地域にも大きな変化があった。私たちが決断しなければならない変化はこれからも起こるだろう。世界のリーダーの目の前には大きな問題がある。それは未来の世代のためにテロをなくし安全な世界を作ることである」
両大統領はその後、大統領官邸で随行団同士の会談を執り行なった。短時間公開が許可された会談は、メディアに対しては非公開で行われた。随行団の会談には大統領府書記長ケマル・ネフロズオール、外務次官アリ・トゥイガン、在テルアビブトルコ大使フェリドゥーン・スィニルリオールとイスラエル側の政府関係者が参加した。
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( 翻訳者:新井慧 )
( 記事ID:2649 )