ドイツ人のあいだで最近の話題のトルコ人歌手、ムハッベット(Radikal紙)
2006年06月08日付 Radikal 紙
R&Bとアラベスクを融合させた音楽で、ドイツのアイドルとなったムハッベットは、コンサートやインターネットサイトを通じてファンを増やしつつある。
音楽界に“ムハッベット”というニックネームで進出したトルコ人の青年ムラト・エルシェンは、最近のドイツの話題の中心だ。R&Bとアラベスクを融合させてR&Beskという音楽ジャンルを生み出したムハッベットは、この名前で1枚のアルバムも発表した。
1年半前に何曲かをインターネット上で配信し、すでに皆からステージネームで知られていたムハッベットが初めて有名になったのも、このときの曲だ。「Ich will nicht gehn」(Gitmeyecegim)という曲が100万ダウンロードを記録し、スターへの道が開かれたムハッベットは、今やドイツの大都市で行うコンサートでファンの数を増やし続けている。
ドイツのティーンエイジャーは、まるでムハッベットのことを崇めているようだ。ウェブサイト上の掲示板には、ファンから少なくとも1日に300件ものメッセージが書き込まれる。
■“第三世代”のアルマンジュ※
ムラト・エルシェンの祖父は、ドイツに1960年代にやってきて定住した。そのためムラトは“第三世代”と言われる世代に当たる。ケルンのBocklemündで育ったムハッベットは、17歳の時家を出、お金を借りて一軒の家を借り、音楽スタジオを開いた。R&Beskと呼ばれるジャンルの恋愛ソングを、オルハン・ゲンジェベイやミュスリュム・ギュルセスのように情感を込めて歌い始めた。パーカッションをベースとした、ドイツ語の歌詞の歌は、インターネットを通じてドイツで何百万人もの人々の間で広まっていった。
ムハッベットが自身の音楽スタイルを前面に出したファーストアルバムでは、どの歌の歌詞にも外国での生活や郷愁、愛についての哀調に満ちたフレーズがある。有名な「Gitmeyecegim」にも、生まれ育ったドイツに対するこんな叫びが含まれている。
‘Kapi acik/Cikabilirim/Ama kalmayi seciyorum/Lanet olsun, hicbir yere gitmeyecegim!’
(ドアは開いている/出て行くことだって出来る/でも僕は残ることを選ぶんだ/畜生、どこにも行くもんか!)
時には友達に対しても問い掛けている。
‘Icimde bir seyler yaniyor/Bilmiyorum Cetin, nasil anlatsam sana/Cabaliyorum/Seni duyuyorum hayat/Benimle kal ve bana beni hissettigini soyle!'
(僕の中で何かが燃えている/分からないんだチェティン、どうやって君に説明すればいいのか/努力はしてるんだ/君の言葉を聞いているよ/僕と一緒にいてくれ、君の気持ちがよくわかると僕に言ってくれ!)
■「僕のすべての感覚はアラベスク」
ムハッベットは、衛星放送のトルコ語チャンネルの番組にも度々登場している。その番組では、主に若者に支持されているドイツ語の歌が紹介されている。このほかwww.muhabbet.deというインターネットサイト上でも培った若者との熱い関係を、常に維持することに努めている。「やぁ、ムハッベット。僕はアスィズと君にぞっこんだよ。僕はトルコ人だ。君をトルコとドイツのテレビで見ているよ。君が大好きだ」といったメッセージを受け取ることも珍しくない。
曲の中でサズ(トルコで用いられる伝統的な弦楽器)やカーヌーン(同)、ダルブッカ(打楽器)といった楽器を好んで使うムハッベットは、自身の音楽はこう定義している。
「R&Beskは、R&Bとアラベスクの融合で生まれたんだ。R&Bが“リズム・アンド・ブルース”から生まれたのとまったく一緒だよ。アラベスクはトルコで生まれ、街角でその日その日を精一杯暮らしている庶民の物語を歌にしたものだ。「高いコンサートに行くお金は無い。自分の音楽を自分で作ろう」と考えた人の音楽なんだ。(アラベスクは)通りからやって来た人たちの情熱の結晶さ。僕の内面や、すべての感覚はアラベスクだ。僕の歌は情熱や、愛、別れ、辛い思いがテーマだ。僕は通りからやって来て、新しいR&Bの歌を歌っているんだ」。
※アルマンジュ:ドイツで働くトルコ人
現地の新聞はこちらから
( 翻訳者:住永 千裕 )
( 記事ID:2656 )