《リベラル・デモクラシー》はイスラームの道にあらず:メスバーフ=ヤズディー シャルグ紙
2006年09月10日付 Sharq 紙
2006年9月10日付シャルグ紙2面
【政治部】アーヤトッラー・モハンマド・タギー・メスバーフ=ヤズディーは《勧善禁悪》に関するクルアーンの章句〔訳註1〕に触れ、「この光溢れる考え方、預言者の家族の教えを伝えるためには、統一のとれた組織、システマティックな活動が必要だ。この道に励むならば、〔終末の時に救世主として再臨する〕《時のイマーム》も喜ばれるであろう」述べた。
同師は、アフヴァーズ市チャムラーン大学のバスィージ学生との集会でこのように述べ、宗教的教えと勧善禁悪の《組織化》について語った。
高位の宗教指導者として《イマーム・ホメイニー教育研究機構》を主宰するメスバーフ=ヤズディー師はまた、マシュハド市を訪問し、《マシュハド殉教者の家》で開かれた「文化研究所第7回大会開会式」にも出席した。
同師はこの席上で、《ヴァリーイェ・ファギーフ》〔社会の後見人を務める者=最高指導者のこと〕は無謬なるイマーム〔訳註2〕により任命されるものであるとの見解を再度強調し、ヴァリーイェ・ファギーフの選別について、次のように論じた。「人民は、限られた人々の中から選出され、無謬なるイマームによって人民の名のもとに任命された専門家を通して、ヴァリーイェ・ファギーフを選別し、社会に送り出す」。
メスバーフ=ヤズディー師はさらに、次のように持論を展開した。「人民はヴァリーイェ・ファギーフの資質を判別すべく思いをめぐらせている人々の中から、最良の者たちを選出し、こうして限られた人々の中から人民によって選ばれた専門家らが、最高指導者を選別する。ヴァリーイェ・ファギーフを選別するより賢明で安心確実な方法は、これ以外に存在しない」。
その上で、次のように続けた。「人民、あるいは選ばれし専門家は、最高指導者の地位を誰かに《与える》のではない。むしろ人民は次のように言うだろう。われわれは検討の結果、専門家として代表を選び、こうして選ばれた専門家らが、人民の名のもとに、全体の中から最高指導者として任命されるべき人物を選別し、社会に紹介するのだ、と。このようにして、無謬なるイマームによる任命が行われるのである」。
メスバーフ=ヤズディー師はその上で、《デモクラシー》と《リベラル・デモクラシー》を批判して、西洋人は「一人間は、他の人間を支配する権利を、何処から得るのか」との疑問に答えることができないが、ムスリムはこの疑問に対して「無力」ではないと主張し、次のように語った。
「われわれムスリムは、この疑問に対し、決して無力ではない。なぜなら、われわれは神を信仰しているからだ。神は実に、次のように仰っている。『あなたがた信仰する者よ、アッラーに従いなさい。また使徒とあなたがたの中の権能をもつ者に従え』〔クルアーン4/59〕。〔中略〕国家運営に関するこのような章句がある以上、われわれは自由民主主義者(リベラル・デモクラット)と同じような方法で、政府の仕組みを決めることはできない。もしトーラーや福音書がクルアーンの代わりであったならば、そのようにすることもできたかもしれないが」。
さらに同師は、自らの見解を擁護して、次のように論じた。「研究によれば、イスラーム初期から今日まで、『イスラーム的主権者は人民の承認をもって初めて、統治の権利を見出す』などと述べたシーア派法学者にお目にかかったことは、一人の例外を除いてない。その一人も、ためらいがちに、憶測でそう述べたにすぎない。シーア派法学者の間でこのような一致・合意があるにもかかわらず、果たしてリベラル・デモクラシーに固執する理由など、どこにあろうか」。
メスバーフ=ヤズディー師はまた、一部の不適切な人物を責任ある地位に就かせている現状を批判し、次のように述べた。「これらの者たちの存在は、彼らの考え方から判断する限り、必要でないばかりか、害悪を伴うものであるといえよう。これらの者どもが、不当にも責任ある地位にすでに就いているようであれば、彼らを降格させ、相応しい人物を代わりに就かせる必要がある。『われわれはイスラーム体制そのものだ。われわれの存在が必要だ』などと言っている者たちがいる。まったく誤った発言だ」。
同師はその上で、「もし不適切な人物が不当にも責任ある地位に就くならば、それは地位の簒奪であるだけでなく、適切な人物から得られる恩恵を社会から奪うことでもある」と述べた。
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*訳註1:《勧善禁悪》(善を命じ悪を禁ずる)に関するクルアーンの章句は、管見の限りで、9句見られる。それらは以下の通り(以下、日本語訳はすべて日本ムスリム協会『日亜対訳注解聖クルアーン』(http://www.isuramu.net/kuruan/index.html)によった)。
3/104. また,あなたがたは一団となり,(人びとを)善いことに招き,公正なことを命じ,邪悪なことを禁じるようにしなさい。これらは成功する者である。
3/110. あなたがたは,人類に遺された最良の共同体である。あなたがたは正しいことを命じ,邪悪なことを禁じ,アッラーを信奉する。
3/114. かれらはアッラーと最後の日とを信じ,正しいことを命じ,邪悪なことを禁じ,互いに善事に競う。かれらは正しい者の類である。
7/157. かれらは文字を知らない預言者,使徒に追従する者たちである。‥‥かれは正義をかれらに命じ,邪悪をかれらに禁じる。
9/67. 男の背信者も女の背信者も,凡て同類である。かれらは邪悪を命じ,正しいことを禁し,(アッラーの道のために費すことに)その手を閉じる。
9/71. 男の信者も女の信者も,互いに仲間である。かれらは正しいことをすすめ,邪悪を禁じる。
9/112. 悔悟して(アッラーに)返る者,仕える者,讃える者,斎戒する者,立礼する者,サジダする者,善を勧める者,悪を禁ずる者,そしてアッラーが定められた限界を守る者。これらの信者たちに,この吉報を伝えなさい。
22/41. (かれに協力する者とは)もしわれの取り計いで地上に(支配権を)確立すると礼拝の務めを守り,定めの喜捨をなし,(人びとに)正義を命じ,邪悪を禁ずる者である。
31/17. 「息子よ,礼拝の務めを守り,善を(人に)勧め悪を禁じ,あなたに降りかかることを耐え忍ベ。本当にそれはアッラーが人に定められたこと。
*訳註2:イマームは「指導者」の意。シーア十二イマーム派では、預言者ムハンマドの家族=アリーの直系の子孫には、神の教えを判断する特別な能力が備わっており、彼らこそがイマームとして、預言者亡き後のイスラーム共同体を指導すべきだとされる。イマームは12代続いたが、第12代イマームはお隠れになり、終末の時に救世主マフディーとして再臨するとされる。その間公正なイスラーム法学者が後見人(ヴァリーイェ・ファギーフ)として、社会を指導すべきである、というのが、ホメイニーのヴェラーヤテ・ファギーフ(法学者の監督)論である
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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:3464 )