ローマ教皇の発言に対し、イランで抗議声明が続々と発出 ハムシャフリー紙
2006年09月17日付 Hamshahri 紙

2006年9月17日付ハムシャフリー紙

【政治部】バチカンは昨日、教皇が「遺憾の意」を表明することで、ムスリムの抗議の波を収拾しようと躍起となったが、その甲斐なく、教皇ベネディクト16世の侮辱発言に対する他のイスラーム諸国の抗議に合わせる形で、我が国の宗教最高権威や政治指導者・機関からも反発が続いた。抗議の一環として、イラン全国の神学校は本日、休校となることが発表された。

 アーヤトッラー・ファーゼル・ランキャラーニーは、この件に関し声明を発表し、次のように強調した。「表面上一部のキリスト教徒の指導を任されている教皇が、根拠のない発言・非難をしたことに、深い驚きと憂慮を禁じえない。残念ながら、教皇が表明したことは、イスラームの論理・精神とまったく合致していない。このような内容を話すよう誰かが教皇に指示したのか、あるいは明瞭なるイスラーム教に対して教皇があまりに無知なのかのいずれかを、教皇の発言は物語っている。このことは、教皇の支持者たちにとって悲しむべきことだ」。

 他方、アーヤトッラー・マカーレム=シーラーズィーは同様の声明の中で、次のように語った。「教皇は果たして、シオニストが世界の向こう側〔西洋世界〕からやってきて、パレスチナの国土をその所有者の手から奪い取り、荒野に流浪させても、彼ら〔パレスチナ人〕は黙っているとでも思っているのか。あるいは、レバノン人民が、国をシオニストどもによって侵略され、すべてを破壊され、子供であろうと老人であろうと青年であろうと、すべての人を虐殺しても、ヒズブッラーが黙ったまま座っているとでも考えているのか。まったく馬鹿げた考えだ。教皇よ、あなたは世界のムスリムを攻撃する代わりに、植民地時代を終わらせ、イスラーム諸国の独立と世界のムスリムに対して敬意を払うよう、キリスト教徒の血に飢えた無慈悲な政治家どもに、忠言するべきだ。そうすれば、ムスリムはあなたに敬意を払うだろう」。

 また、アーヤトッラー・ムーサヴィー・アルダビーリーも声明の中で、世界のカトリック信者の指導者に対して、発言の撤回と訂正を求めた。

 ▼ アッシリア教徒の国会議員の声明

 アッシリア教徒及びカルディア教徒選出の国会議員であるユーナーターン・ボトケリヤー議員は、教皇に宛てた書簡で、「もし古傷を開けるようなことをすれば、当然のことながら、世界のムスリムもまた、他のキリスト教徒やユダヤ教徒、ムスリムに対して行われた、中世のカトリック十字軍による戦争犯罪に関して口を開くことになろう」と警告した。

 ボトケリヤー議員はさらに、次のように付け加えた。「キリスト教徒の共同体、東洋の広大な地域に広がった民族としてのわれわれアッシリア人は、キリスト教発祥より、この宗教を受け入れ、イスラームの大地に、特に母国イランに長きにわたり暮らしてきたが、宗教的信仰が原因で、ムスリムの暴力や圧政の対象となったことはなく、むしろ同胞〔イラン人〕のもとでの尊厳を享受してきた」。

 ▼ さまざまな宗教機関の抗議

 ゴム講師協会は声明を発表し、イラクやアフガニスタン、レバノン、パレスチナにおける米英イスラエルによる犯罪行為に対して、教皇がキリスト教信者の前で意味あり気に黙認していることは正当化しえないとの見解を示し、この許されざる罪に対する教皇の正式な謝罪を求めた。

 他方、《諸宗教緊密化世界協会》も声明の中で、次のように述べた。「われわれは、神聖なる諸宗教間の対話に対して、教皇がかつて反対の立場を示したことを知っている。世界のカトリック信者の指導を任されたことを契機に、教皇がかつての立場を見直すことをわれわれは期待していたし、特に教皇から聞くことのできた一部の前向きな声明は、将来に対してわれわれに希望をもたらすものであった。しかし、今回教皇は予想に反して、明瞭なるイスラーム教を侮辱し、世界の平和を危険に陥れた」。

 また、イスラーム学世界センターの非イラン人神学生・識者らも、教皇の侮辱発言を受け、火曜日ホッジャティーイェ学院にて集会を開くことを予定している。

 ▼ 公式筋の反応

 イランの公的な人物の中でもっとも厳しい批判を教皇に対して行ったのは、セイエド・モハンマド・ハータミー師であろう。我が国の前大統領を務めた同師は、この種の発言は知識の足りない偏見をもった人間の特徴であるとした上で、次のように続けた。「教皇に関して私が思うのは、彼は教養のない人物だ、ということだ。世界のカトリック信者を指導する地位に相応しい、寛大な心をもつことを期待していたが、今回伝え聞いたことはこの期待に反するものである。誤って伝えられたものであることを希望する」。

 また、ハッダード=アーデル国会議長はレイを訪れた際、教皇の発言について、世界の人々の意識が大波となって目覚めつつあることへの反応であるとの見方を示し、さらに次のように指摘した。「世界の人民は、次のように教皇に尋ねてみるべきだろう。すなわち、あなたは平和だとか友好だとかを口にしているが、一体全体、キリスト教徒を自任する連中によって起こされる争いごとを抑止したためしなどあるのか、と」。

 他方、外務省報道官は「教皇の発言は、神聖なる諸宗教の一つを指導すべき責任・地位とは相容れないものだ」と強調した。セイエド・モハンマド・アリー・ホセイニー外務報道官はさらに、現在の状況下でこのような見解を述べることの意図に疑問を呈し、教皇の発言は世界で紛争を引き起こそうとする輩が狙っている、宗教間の対立という目的に合致するものであり、彼らの政治的意図・欲望に奉仕するものだ、との見方を示した。

 また、国会の国家安全保障外交政策委員会の委員長は、クルアーンをもっと勉強するよう、教皇に勧めた。

 ▼ 教皇、遺憾の意を表明

 教皇ベネディクト16世は、世界のムスリムに向けて、イスラームに関する自らの発言がイスラームに対する侮辱であると理解されていることに遺憾の意を表明し、ムスリムの信仰に対して敬意を示した上で、ムスリムが自身の発言を正しく理解することに期待する旨述べた。

 また、ヴァチカンのベルトーネ国務相(枢機卿)は声明の中で、「ローマ教皇は、自身の発言の一部に、ムスリムが神聖視するものに対する侮辱と受け取られかねない部分があったことに、深い遺憾の意を表明している」と語った。

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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:3519 )