国連事務総長がベイルートを訪問(アル・ナハール紙)
2006年08月28日付 Al-Nahar 紙
■ レバノン、封鎖の解除を始めとする要求のリストを提示
■ アナン事務総長がベイルート訪問 事態打開の兆し
■ ナスルッラー書記長、「戦争の第2ラウンドはない」と明言
2006年08月28日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面
国連のコフィ・アナン事務総長は今日の昼、2002年の最後の訪問以来4年ぶりにベイルートを訪問する。最初の訪問地となるベイルートの後、アナン事務総長はイスラエル、シリア、イランやおそらくは他の諸国も歴訪する予定である。
この訪問は、国連安保理決議第1701号の履行に向けてアナン事務総長が行なう努力の中で、大変重要なものだ。ブリュッセルで行なわれたEU諸国外相との会議において、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の増強部隊に兵員7000人というEU諸国の大規模な参加の約束をとりつけることに成功した直後に行なわれる訪問だからである。今回の派兵は、今までヨーロッパが参加した世界の平和維持活動の中で最大のものである。レバノン南部への国際部隊の展開はアナン事務総長の目標のなかでも最も重要な位置を占める。何故ならこの一歩は、8月14日の戦闘行為が停止してレバノン南部にレバノン国軍の兵員16000人を展開させた後、2番目に重要な実務上の礎石を形成するものだからである。
イスラエルのエフード・オルメルト首相官房によれば、アナン事務総長はベイルート訪問に先立ち、オルメルト首相との電話会談にて昨夜、「レバノン南部への国際部隊の増強は約1週間のうちになされるだろう」と述べた。またアナン事務総長とオルメルト首相は水曜日にエルサレムで会談することに合意したとのことである。
レバノン政府は、アナン事務総長の中東歴訪がイスラエルのレバノンに対する海空からの封鎖を終わらせる根本的な一押しになることを期待しているが、このことについてはまだいかなる保証もなされていない。政府筋が本紙に述べたところによると、アナン事務総長は国連決議第1701号の内容を例外なしに実行する必要性を伝える予定で、レバノン側が陸海空の通行所の統制のためにどのような措置を講じたか、また今後講ずる予定であるかについての報告も要請する予定である。
一方でレバノン側も多数の要求事項のリストを準備している。第一の要求は、イスラエルが国連決議第1701号を履行して同決議への違反を停止するよう圧力を強化することである。これに関してレバノン側は、戦闘行為の停止以来つづいてきたイスラエルの決議違反について、詳細にわたる現地報告を提示する予定である。また、国際的に禁じられている兵器を用いてイスラエルが犯した戦争犯罪の問題、レバノンに対する封鎖の問題、イスラエルがレバノン南部の占領地域からの撤退を完了していない問題、シャバア農場地帯の問題、レバノン人捕虜の問題や遺棄された地雷の問題をアナン事務総長に対して提起する予定である。同様に、国際部隊の展開、そのレバノン軍や展開地域の住民との関係、レバノンに対する国際的な援助について話し合われる予定である。
アナン事務総長はフアード・アル=セニョーラ首相と3回にわたって会談を予定しており、第1回目は午後2時に、2回目は4時に、3回目は夜の8時半に行なわれる予定である。またアナン事務総長はナビーフ・ビッリー国会議長とも午後3時に会談予定であり、夕方6時には国連西アジア経済社会委員会(ESCWA)事務所を訪れる。セニョーラ首相がアナン事務総長のために政治家や要人を招いて主催する予定だった夕食会は中止されたが、その代わりにアナン事務総長とセニョーラ首相の他に軍事・治安・政治の顧問が同席してレバノン南部への国際部隊展開について検討するための実務を兼ねた夕食会が開かれる。明朝にはアナン事務総長はナークーラにある国際部隊の本部に移動することになっており、レバノン南部の視察を行なうものと思われる。
(中略)
■ ナスルッラー書記長
一方ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長はアナン事務総長の到着を前に立場の表明を行い、それによってアナン事務総長はイスラエルが撤退を完了しレバノン封鎖を解除するよう説得するためのさらなる論拠を得ることになった。
ナスルッラー師はニューTVのインタビューに答えて「イスラエルとの戦争が再開されることはない」と述べ、戦争が再開されるとの「恐怖を煽る人々」を非難し、そのなかにはテリー・ロード・ラーセン国連事務総長特使(安保理決議第1559号履行監視担当)も含まれるとして、同特使が「イスラエル側からのさらなる要求を押しつけようと試みている」と非難しつつ、「我々は戦争再開の方向へは向かわない」と断言した。ナスルッラー師は「いついかなる時でも抵抗活動の権利を行使すること」はあるのであって「[イスラエル側を]安心させるつもりはない」としつつも、「UNIFILとレバノン国軍が展開すればイスラエル軍は残留しないはずなのだから、戦う相手のイスラエル軍兵士がいないとなれば、こちらが作戦を行なう理由もなくなる」と述べた。また、「国軍は我々からあらゆる便宜と援助と支持を得ることになろう。国軍を困らせるようなことは何もしない」と強調するとともに、「UNIFILについても、その任務が抵抗運動の武装解除でないかぎりは何の問題もない」と述べた。また、「我々はイスラエル軍兵士の捕獲作戦がこのように大規模の戦争につながるとは1パーセントも予測していなかった。作戦がこのような結果をもたらすと分かっていれば、絶対に実行することはなかった」と述べた。
■ ダレーマ外相
イタリアは国際部隊に参加する先発部隊を明日レバノンに送る予定である。イタリアのマッスィモ・ダレーマ外相は「ヒズブッラーはレバノン社会の重要な一部である。国連平和維持部隊の目的は、ヒズブッラーの破壊ではない」と述べた。
ダレーマ外相は土曜日に公開されたインターネット版「タイム」誌のインタビューの中で、「平和維持部隊はイスラエルとヒズブッラーの間で33日間つづいた戦争の後にレバノンの民主的な政府を強化するために送られる。アラブ世界は民主的な勢力が暴力的な宗教的原理主義と対峙するなかで岐路に立っている。我々は民主主義勢力の勝利を望んでいる。かくして国連軍は、レバノン政府を強化するためにかの地にいるのだ」と述べた。アメリカがテロ組織とみなすヒズブッラーにとってその見解は何を意味するのか、と同誌が質問するとダレーマ外相は、「我々の目的は現在レバノン社会の重要な一部を形成するヒズブッラーを破壊することではない。我々はヒズブッラーが合法的な政治運動に変化することを望んでいる。しかし、もし今軍事作戦の再開を望むならば、国際社会と対決しなければならないということをヒズブッラーは知っている」と答えた。また、イタリアとその他の諸国が15,000人の兵員をレバノンに送るのはイスラエルの安全保障を支援することを望んでいるからであると述べ、イスラエルの対レバノン爆撃は「受身的な反応であって、特定の戦略に基づくものではない」と述べた。
(中略)
■ 占領地域
そうしたなか、昨日ラフィーク・アル=ハリーリー国際空港にフランス工兵連隊の兵員200人が到着した。彼らはレバノン南部に臨時用の橋梁を建設することになっているが、この任務はフランスの国際部隊参加からは独立したものである。
レバノン南部では、治安当局筋の情報によればイスラエル軍部隊は昨日、スールおよびビント・ジュバイルの周辺に拠点を新たに設営した。その一つはバイヤーダとシャムウの間の地点に設けられたもので、戦車とブルドーザーと兵士が駐屯し、イスラエル国旗を掲揚しているのが目撃された。またイスラエル軍はミルワヒーンにも新しい拠点を設営してイスラエル国旗を掲揚し、カウザフにも拠点を1ヶ所設営した。
レバノン国軍の報道官の談話によれば、イスラエル軍はレバノン南部の拠点9ヶ所をなおも占領しており、レバノン領内に対する限定的な侵入作戦を夜間に実行しているため、レバノン国軍のイスラエル国境地帯への展開が阻害されている。また同報道官によればイスラエル軍の撤退は、レバノン駐留国連軍部隊の一部としてイタリア軍およびフランス軍の部隊の展開が行なわれる1週間のうちに完了する可能性もあるとのことである。
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( 翻訳者:新谷美央 )
( 記事ID:3415 )