Murat Yetkin コラム:英駐土大使が語るトルコへの3つの期待
2007年01月31日付 Radikal 紙

イギリスのニコラス・ベアード駐土大使は、トルコが総選挙を迎える今年(2007年)に直面するであろう国内外での事態の進展が、政府のこれまでとってきた外交政策の方針に悪影響を与えないことを望んでいると話した。トルコには「グローバル化した世界」に対し果たすことができ、それと引き換えに得られるであろうとても多くの役割があると指摘したベアードは、トルコに対する期待を大きく次の3つにまとめた:EUからの否定的なシグナルに対し辛抱強く毅然とした態度をとり続けること/中東とのパイプと対話を断ち切らないようにすること/南コーカサス諸国の問題の対話による解決に貢献すること。
ベアード大使との会談で挙がったテーマはこうした状況を反映している。次のように要約することが可能だ。

■民族主義的な反発

フラント・ディンク殺害事件について考えてみると、2つの光景が頭に浮かんでくる。1つはイスタンブルの街角を埋め尽くす人々による事件への反発である。もう1つはサッカーの試合で観客が示した、反発に対する反発である(※)。これらのどちらがトルコ国民の多数派の見解を代表しているのかは完全には分からないが、さまざまな事件に対する民族主義的な反発は、ほとんどどの国でも、我が国イギリスでも見られる。トルコは、世界のグローバル化の重要なアクターである。したがってグローバル化の進展はトルコ国民にとって大きな意味を持つものであり、世論もグローバル化から影響を受けている。

■反発は増すかもしれない

我々はいかなるテロ行為も非難する。イギリスはPKK(クルド労働者党)を、用いている他の組織名と合わせてテロ組織とみなしている。トルコにとって現在の最重要課題は、イラク情勢がPKK・クルド問題にどのような影響を及ぼすかである。アメリカ人は目下イラクについて新しい戦略を実行しつつある。ジェセフ・ラルストン米PKK担当特使もアンカラにいる。PKKがイラクに持つ拠点についての問題では、我々は絶対にやり遂げる必要がある。もしアメリカでアルメニア人大虐殺法案が議会を通過し、我々がPKK問題におけるトルコの要望に期待通りに応えることができなければ、トルコにおける反発は増す可能性がある。

■政治への影響に対する懸念

私は、トルコ政府のとっている外交方針が、困難な年となろう2007年に国内外の出来事や反発からよくない影響を受けなければいいがと願っている。トルコにはグローバル化した世界に対し果たすことができ、より信頼できる国際環境に貢献できる大きな役割がある。これに対して短期間で得られるものはもしかしたらそれほど多くはないように見えるかもしれない。世界は困難な時代を生きている。しかし長期的に見て得られるものは大きいであろう。キプロス問題が国連の場で解決されることや、イラクが分割されることなく単一の国として存続すること、そしてもちろん最終的にはかなえられると信じているトルコのEU加盟においても、(トルコの得られる)国家的な利益がある。

■トルコに対する期待

トルコは、EU問題で送られている否定的なシグナルに対し、辛抱強く毅然とした態度をとり続けなければならない。イギリスも2度(EUから)拒否されたが、それでもひるまなかった。大きく力のある国のEUへの参加は、小国の場合に比べ常に困難であった。2007年がEUでもトルコでも選挙の年となることから、EU問題では大きな進展はないとも考えられる。しかしそれでもEUは期待以上の速さで事態を進展させることができると信じている。

■中東とのパイプ

(トルコに対する)2番目の期待は、トルコが広い意味で中東での対話のチャネルを開いておくことであり、保ち続けることである。トルコは、イランやイラクにおけるスンナ派グループ、またパレスチナにおけるハマスのように、我々が気楽に話すことのできない国やグループと対話を続けている。我々はこれを評価し支持している。英土両国による計画でトルコとこの問題について話し合っている。レバノン問題における最近の情勢が、キプロスにおける2つの社会の間の対話の可能性を低くするならば大変残念だ。

■コーカサス諸国とアルメニア

南コーカサス諸国の情勢を安定させること、例えばアルメニア-アゼルバイジャン紛争の話し合いでの解決のために、トルコの果たす役割は大変重要だと考える。もちろんアメリカ議会が(アルメニア)大虐殺法案を承認することは、トルコ-アルメニア関係にも、米土関係にも、南コーカサス諸国における安定化の努力にもよい影響を及ぼさないだろう。思い起こしていただきたいのは、恐ろしい殺人事件の犠牲者となったフラント・ディンクもまたこれに反対だったということである。もしかしたらディンクが殺された後に生じる事態の進展が対話を進める雰囲気を醸成する契機となるかもしれない。トルコ-アルメニア関係の進展のため、我々はトルコが提案した共同委員会のアイデアを重視し、支持する。


(※)マラトゥヤスポル対エラズースポルの試合でアルメニア人と相手チームを揶揄する掛け声をきっかけに観客同士が乱闘騒ぎを起こした事件を指していると思われる。
関連記事:2007年1月30日 Can Dundar コラム:「私たちは皆アルメニア人」という言葉の意味するもの http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/News20070130_201216.html

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:10045 )