アメリカの雑誌タイムは、ヨーロッパ版タイム誌でアルメニア人虐殺説を擁護するDVDを同誌の付録として配布し、アルメニア人団体のプロパガンダを1ページ丸々、広告料無しで掲載した。
タイム誌は、2005年にアンカラ商工会議所の企画で、「アルメニア人虐殺」論に関しトルコの主張を反映させたDVDを有料で配布していたが、今回故地を離れているアルメニア人ディアスポラを喜ばせる第一歩を踏み出した。以前に、虐殺の主張を「歴史的事実」とする立場をとることを明らかにしたタイム誌は、今回、読者に「虐殺のDVD」を無料で配った。発行部数55万を数えるヨーロッパ版タイム誌で、アルメニア人ディアスポラの声明が載せられたページとDVDは、まったくの無料であった。
雑誌と一緒に配られたDVDには、「アルメニア人虐殺」というタイトルが付けられている。フランス人監督ローレンス・ジョルダンによる52分のドキュメントで、以前フランスとドイツの共同テレビ局、アルテで放映されたものであった。DVDには、ドキュメント映像の合間に、虐殺説を擁護するイブ・テルノンによる長いルポルタージュも収められている。
タイム誌は、「トルコ人のDVD」が配られた2005年6月5日以来、アルメニア人ディアスポラを援護する立場をとってきた。主要なアルメニア人ディアスポラ団体の、タイム誌との接触は、2005年の終わりに最初の実を結んだ。タイム誌と彼らとの間に、「雑誌ではアルメニア人虐殺の真実性は議論の余地ないものとして扱う」という方向で意見が一致した。その後、タイム誌の編集長ミシェル・エリオットの説明で、雑誌の記者と編集者らに「アルメニア人虐殺」という表現を使うよう指示がなされたことが分かった。
アルメニア人ディアスポラ側の説明
タイム誌が「アルメニア人虐殺」説に関するDVDを配布したことは、ディアスポラ各団体に満足をもって迎えられた。団体の実力者らは、DVDの配布を「アンカラ(トルコ政府)の、虐殺を否定するための作為に抵抗する」一歩として考えている。DVDが付録された号には、アルメニア人団体連合会により出された声明も掲載された。
声明は、アドルフ・ヒトラーの発言内容を意味する「今日、アルメニア人が抹殺されるなど誰が言っているのか?」という表現で始まっている。そして、こうした認識がナチスの指導者をユダヤ人虐殺に駆り立てたと主張している。声明の終わりでは、ニューヨークタイムズ紙、ロサンゼルスタイムズ紙、ボストングローブ紙、モントリオール紙、そしてタイム誌が、「アルメニア人虐殺」を、議論の余地なく歴史的事実として認める立場をとっていることが述べられている。
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( 翻訳者:林奈緒子 )
( 記事ID:10073 )