イラク、大学講師たちが殺害と処刑の標的に
2007年02月12日付 al-Sabah al-Jadid 紙
■ ディヤーラ大学講師たち、殺害と処刑の被害に苦しむ
2007年02月12日付サバーフ・ジャディード紙(イラク)HP1面
【バアクーバ:本紙】
最近ディヤーラ大学の講師を標的とした暗殺や処刑が続発している。特に優れた能力や適性を持つ人材が多数犠牲になっており、今月1日には同大学のスポーツ教育学部長であったワルハーン・ハミード教授が殺害されたばかりである。その日、武装した集団がスポーツ教育学部に突入し、ワルハーン博士と彼の息子に発砲、2人は即死であった。
また2週間前には教育学部アラビア語学科に所属する修士学生が3人の学生と共に殺害されている。武装集団はマフラク地区の公道で、教育学部の建物に向かう途上にあった彼らの乗った車に停止するよう求め、その直後彼らに向けて発砲したのであった。
スポーツ教育学部の学生であるアフマド・アブドによると、武装集団は自由に大学内の建物に入れるようになっており、誰からも抵抗に遭うことなく講師たちの部屋へと向かい彼らを殺害し、脱出できる状況にあるとのことである。また彼は「悪化した治安状況が改善されるまでは私たちは大学へ行くことができない」と話している。
また工学部教授であるカリーム・ジャッバール氏は、大学講師を標的とした殺害など暴力行為を防ぐため力をあわせるよう呼びかけた。彼は「こうした形で大学講師たちが殺害されるのは前例のないことだ」と述べ、イラク全県で起きている講師を殺害したり、同僚たちの元から追い立てるような行為を止めさせるよう要請した。そして「社会をより良い方向へ向かわせるためには治安の安定があらゆる側から求められている」と付言した。
匿名希望の教育学部の警備員は、「ほとんどの暗殺や殺害の目的は宗派のプライドを刺激することであり、無実の講師たちはこうした宗派間の問題とは完全に無縁でありながら犠牲となったのである」と述べた。また「バアクーバは武装集団の手の内にある。政府が掌握しているのは県庁と警察署のある通り一本だけだ。住民は過激派民兵組織の庇護下に置かれている」と語った。
同じ問題について歴史学科の博士課程学生は、「大学全般を標的にすることの目的は、大学から創造的なエネルギーを取り除き、知の歯車を止めることにある」と述べ、さらに「全ての大学講師は武装組織からだけでなく、勤務時間を守らないと解雇するという政府からの脅迫にもさらされている」と加え、現在起きている事態によって激しい不安が煽られており、多くの講師や学生が大学を離れ移住することを余儀なくされていると指摘し、「現在起きている事態の目的は国全体から思考し、啓蒙する知性を失くすことにある」と述べた。
非公式な統計や数値によれば、2003年にアメリカが主導したイラク侵攻以来、250人以上の大学講師がイラク各地で殺され、その多くは処刑や暗殺といった形で直接標的にされたという。拉致や暗殺を恐れてイラクを去った大学講師や研究者の数は2000人以上にのぼり、彼らがいなくなったことによりイラク各地の大学や研究所における152以上の様々な専門分野の研究部署が活動の停止や停滞に追い込まれた。
こうした深刻な治安、学問状況が続き、重要な知識人層が標的になり続けた事態を受け、カタールの首都ドーハにおいて先月末、複数の大学講師たちのイニシアチブにより、「イラク教官保護のための国際委員会」が設立された。この委員会のメンバーにはイラク各地の大学や研究所の講師たちが100人以上含まれている。
この委員会のリーダーである匿名希望の大学教官は「この委員会では犠牲になった講師の家族に月ごとに支援金を支給し、イラク国内において脅迫にさらされている講師とその子供たちをカタールの大学へ招聘するといった活動を行っていく」と述べた。
また「委員会を後援してくれているカタールの教育・社会開発基金が、イラクの教育現場における能力向上を目的とした教官・講師向けの研修コース設置と、治安の悪化に伴い大学や研究所に入学できなくなった学生に対する代替措置として遠隔教育プロジェクトを導入するに必要なインフラ整備というアイデアを引き受けてくれた」と明かした。
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( 翻訳者:垣平浩明 )
( 記事ID:10216 )