解説:アメリカがイランを攻撃しないこれだけの理由
2007年02月23日付 Yeni Safak 紙
誰もがアメリカがイランを攻撃するのか否かを議論している。アメリカがアフガニスタンとイラクの後にイランを攻撃するのはそう遠くないと見られている。しかし私はイランで戦争が起こらないだろうということを示す証拠の方が、戦争が起きることを示す証拠よりもずっと多いと考えている。
第1に、アメリカがイラクで陥った泥沼状況である。アメリカはイラクでそれほど(深い)泥沼にはまってしまったので、泥沼から抜け出す前に別の戦いに乗り出す可能性は大変低い。これに、アフガニスタンでもタリバンが次から次へと攻撃してくることや、死んだ、壊滅したと言われるにもかかわらず突然勢いを吹き返すことも付け加えよう。ブッシュ大統領は最近になって同盟国にアフガニスタンにもっと兵士を派遣するよう呼び掛けを行ったほどだ。
■十字軍の派遣?
第2に、イランに対し行われる軍事介入がイスラーム世界で新たな「十字軍戦争」と受け止められる可能性である。アメリカはそもそもこの問題で以前に失態をさらしている。なぜならブッシュは、以前に「十字軍戦争」という表現をうっかり口にしてしまい、政府の真の意図を明らかにしてしまったからだ。その上にイランへの攻撃となれば、イスラーム世界以外からも「アメリカ帝国主義の最後の攻撃」とみなされるであろう。中東と全世界ですでに悪いイメージが付きまとっており、一方的に自らの主張を世界に押し付けるせいで昔からの同盟国の機嫌をも損ねたアメリカにとって、(悪い)アメリカのイメージを各地に大いに広めることになるこのような戦争に突入することは難しい。
アメリカは、大半が地下に建設されたイランの核施設を爆撃するためには、核兵器を使う以外に方法がないと考えている。イランに対し核兵器を使った場合には、1945年の広島、長崎(への原爆投下)以来初めての核兵器の使用ということになる。広島と長崎の事件によって着せられた歴史的汚名をいまだに払拭できないでいるアメリカでは、核兵器の使用が引き起こす自然的、人文的な大災害のもたらす苦難のため、軍と政府の間にもこの問題について統一した見解はない。軍の高官の一部は、イランへの軍事介入が(イランの)核計画撤廃の役に立たないばかりか、アメリカに莫大な経済的、政治的、軍事的支出を強いるものになるだろうと述べている。有名な研究家で新聞記者のスィーモア・ハーシュは、軍事筋の話に基づいて執筆された記事の中で、イランの核兵器開発に関する証拠がないように、(軍)高官がイランの核施設の場所や範囲に関しても明確な情報がないことに苦言を呈していると書いている。アメリカのある上級の司令官はハーシュに対し、「イランには多くの標的があるが、情報がない。何を攻撃すればいいのか全然分からない」と話す一方で、別の司令官もイランの地形が空爆には大変困難であり、また(国土が)極めて高い山々から成り立っており、イラクのようにどこまでも果てしない平地が広がっていないと語っている。アメリカ中央情報局(CIA)の報告書にも、イランが核兵器開発に取り組んでいる証拠がないことが報告されている。国際原子力機関(IAEA)もイランに対し(情報の)透明性についての批判はしても、核兵器開発に関するいかなる証拠もなかったと述べた。これらが戦争の可能性を低くしている要因である。
■石油に対する不安
他方で、軍事介入の観点からイランがイラクのような国ではないことも念頭に置いておかなければならない。イランは7000万人近い人口と、トルコの2倍近い国土と、古代にさかのぼる歴史を持つ大国である。さらに強力な火器や、自前で開発した戦闘機を所有している。イランは、1991年の湾岸戦争で廃墟と化したイラクにおいてさえ困難な状況に陥ったアメリカにとって間違いなく大きな獲物である。
軍事介入にとって最も大きな障害の1つは石油だ。そもそも一定水準で安定せず、常に上昇を続けて世界経済を混乱させる原油価格が、軍事攻撃によりどうなるかちょっと考えていただきたい。わずかな緊張や強い物言いにさえ(反応して)上昇する原油価格は、戦争となれば青天井となる。イランが世界貿易の要所であるホルムズ海峡を封鎖すればなおさらだ... これらのことは冷静に考えて、誰もどのような体制もあらかじめ対処できない事柄だ。
■民主党の妨害
アメリカの新保守主義者たちがイランへの軍事攻撃への意欲を途中で放棄するであろう別の要因もある。これらのうちで最も重要なものの1つが地域に多くの兵士を派遣しているアメリカが、戦闘状態になったときにイランから容易に標的にされることである。イランの有力な宗教指導者の1人であるアーヤットラー・アフマド・ジャンナティー師もアメリカのイラク、アフガニスタン、そして湾岸での兵士の展開に言及しながら「アメリカは我々の周りを包囲したが、これは我々に有利な状況だ。アメリカ(軍)は今、東、西、あるいは別の方向で我々の射程距離の中に入っている」と語っていた。イランの目と鼻の先にあるイラクにはアメリカの13万人の兵士がいる。またアフガニスタンにも多くのアメリカ軍の兵士が駐留している。クウェートやカタールにもアメリカ軍の基地がある。これらはみなイランのミサイルの射程距離内にある。
アメリカの、イランへの介入問題におけるもうひとつの心配事項は、軍事攻撃が分裂のさなかにあるイスラーム世界の統一の契機となる可能性である。アメリカのある高官はこの観点からの懸念を「アメリカの攻撃はアラブ世界の分裂を解消させ、シリア、イラン、ヒズブッラー、ハマスが我々に向かって攻撃したり、サウジアラビアやエジプトが西側との関係を再検討する事態を招きかねない。このことは我々にとって起こりうる最悪の悪夢(のような事態)だ」と表現した。
アメリカの最新の選挙で(連邦)議会の主導権が民主党に移ることもまた、ブッシュ政権が新たな戦争に突入することを困難にする別の大きな要因である。
(イフラス通信社外報部員 メフメト・エミン・アルヴァス)
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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
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