ハマース指導者、中東和平カルテットの条件を拒否
2007年02月24日付 Al-Nahar 紙

■ メルケル首相がアッバース大統領に対し、ハマースとともに新政府を樹立する可能性を閉ざす
■ ハマースのマシュアル政治局長「我々は中東和平カルテットにとって適切なものではなく、我々にとって適切なものを選択する」

2007年02月24日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面

【AFP、ロイター、MENA、UPI】

 イスラーム抵抗運動「ハマース」のハーリド・マシュアル政治局長は昨日、パレスチナ人への支援再開のために中東和平カルテット[※米、国連、EU、露]が定めた条件を拒絶し、「ロードマップは終わっている」と述べた。またマシュアル政治局長は、複数のヨーロッパ諸国がパレスチナ政府に対して年次支援の提供を決定したことを強調し、アメリカ合衆国がパレスチナ挙国一致内閣の樹立を目指すメッカ合意への同意を拒み続けていることに警告を発した。

 また、EUのハビエル・ソラナ共通外交・安全保障政策上級代表はパレスチナのマフムード・アッバース大統領に対し、EUは「パレスチナの人々を決して見捨てはしない」と述べ、2007年も資金援助を継続することを伝えた。ただし、パレスチナ政府に対する直接支援の再開を検討することは今なお尚早であると伝えた。一方、EUの議長国を務めるドイツのアンゲラ・メルケル首相は、中東和平カルテットがパレスチナの次期政府と協力する条件を堅持する姿勢を再度表明した。

■ ソラナEU代表

 ソラナ代表はブリュッセルで行われたパレスチナ大統領との記者会見において、「EUはパレスチナの人々と断絶はしない。すでに何度も述べたように、我々はパレスチナの人々を見捨てることは決してしない」と発言し、EUは2007年次も支援を継続し「できればより多くの支援を行う」と述べた。

 パレスチナ政府に対する直接支援の再開の可能性について質問されたソラナ代表は、EUは挙国一致内閣の成立を待っており、四者協議が課した3つの原則が遵守されるか否かを見るつもりである、と回答した。また、新政府が樹立され、新政府の政策が発表される前に直接支援の再開を検討することは「非常に尚早」であるとも述べた。

■ メルケル首相

 ドイツのメルケル首相は、ベルリンでアッバース大統領との会談の後にコメントを出しており、中東和平カルテットの立場を堅持する姿勢を示し、ハマースにはいかなる機会も残さなかった。メルケル首相は、「我々が挙国一致内閣の成立を歓迎するのは、その内閣が定められた条件を遵守するかぎりにおいてである」と述べ、「すなわち、イスラエル国家の生存権を承認すること、暴力に歯止めをかけること、すでに結ばれた国際的協定を受け入れることが条件であり、それをハマース側も遵守することが含まれる」と説明した。

 またメルケル首相はアッバース大統領に対し、イスラエル・パレスチナ紛争の解決に向けた最初の一歩として、拘束されているイスラエル軍兵士ギラード・シャリットの解放を確実にするための支援を要請し、シャリットを解放することが、イスラエル・パレスチナ間で囚人を交換する協定など、双方の間に信頼関係を構築するための更なる措置へと繋がり得ると述べた。

■ アッバース大統領

 アッバース大統領はメルケル首相の要請に同意したが、兵士シャリットの解放はパレスチナ人囚人の解放と結びつかなければならないと説明した。また、パレスチナ人とイスラエル人との間における緊張の緩和は包括的でなければならず、また、武器密輸の停止も同様に包括的でなければならないと述べた。アッバース大統領は国際社会に対し、パレスチナ政府に課せられている「不公正な」封鎖を解除するよう、改めて要請した。

 アッバース大統領は、国際社会が要求しているイスラエル国家承認や締結済みの諸協定の承認や暴力の放棄を次期のパレスチナ挙国一致内閣が遵守するかとの質問には直接答えず、「新政府樹立のときまでに、状況改善の助けとなる事柄がいくつか起きることを我々は期待している」と述べただけであった。

■ シャアス氏

 オスロでは、ファタハ中央委員会メンバーであるナビール・シャアスが、「ノルウェーは挙国一致内閣を支持し、物的支援を提供してくれる予定であり、スペインも同じことを約束してくれた。私はヨーロッパ全体がEUを通して同じ立場に向かってくれることを期待している」と発言した。

■ マシュアル政治局長

 カイロでは、マシュアル政治局長が記者会見において、「ヨーロッパ諸国がパレスチナ政府に対する年次支援の再開を決定し、パレスチナ政府高官らに連絡してきた」と語ったが、これらの国々を明らかにすることは拒んだ。マシュアル政治局長は、「封鎖は犯罪であり、過去においても今日も正当化できないが、メッカ合意が結ばれた今となっては、また挙国一致内閣の樹立した後は、封鎖が一瞬たりとも続いてはならない」と述べた。また、「アラブは封鎖を打破することができる(…)メッカ合意以後の段階がメッカ合意以前の段階とは異なることを、国際社会そして世界全体が理解する必要がある。この変化を理解しない者は大きな過ちを犯す」との見解を示した。

 また、「ハマースは優先事項を変えていない。我々は中東和平カルテットにとって適切なものではなく、我々にとって適切なものを選択する。…ロードマップは終わっている。…我々にはパレスチナ人としての見解があり、国際社会が我々の見解を理解するよう要請する」と述べた。

 マシュアル政治局長は、「米政権がメッカ合意以前の流れで動いているならば誤っており、米政権はその流れを変えなければならない。なぜならメッカ合意はパレスチナ人による合意であり、アラブに支持され、ヨーロッパの複数の国やロシアにも歓迎されているからである。こうした全てを鑑みれば、合衆国は立場を変え、パレスチナの人々に対する封鎖を解除しなければならない」との認識を示した。

 またマシュアル政治局長は、近くモスクワを訪問すると発表したことに対するイスラエルの反応を冷笑し、「パレスチナ政府と連絡をとることは許さないなどと、イスラエルはまるでファトワーのようなことを言う」と述べた。

 イスラエル政府はこれに先立って、「ハマースと連絡をとること、とくにこの運動体の中で最も過激な立場を代表するハーリド・マシュアルと連絡をとることも、誰にも許されない」と述べている。

 マシュアル政治局長は、カイロでエジプトのアフマド・アブルゲイト外相、ウマル・スライマーン情報局長官、アラブ連盟のアムル・ムーサー事務局長と会合を行った。

Tweet
シェア


現地の新聞はこちら

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:森本詩子 )
( 記事ID:10361 )