都市部ではアレヴィーとスンナ間の境界が薄れてきているー調査結果を中東工科大学教員が評価
2007年03月26日付 Milliyet 紙

センジェル・アヤタ教授:中東工科大学社会科学研究所所長
ムスタファ・シェン博士:中東工科大学社会学科
アイカン・エルデミル博士:中東工科大学社会学科

コンダ調査・コンサルタント株式会社の調査結果を元に我々3人が行った分析では、数字的な側面の代わりに、国民、民族、宗教、故郷のアイデンティティーに関し主立った傾向を解明しようとつとめた。

世界とトルコを比較した上で、世界一般的な傾向は、特にポスト冷戦期に顕著な民族的・宗教的アイデンティティーの著しい高まりである。過去数年間でも、トルコだけでなくロシアからフランス、イランからボリビアまで、多くの国で民族主義的傾向が高まり始めている。

その問題を議論する前に、民族的・宗教的アイデンティティーが、社会構造や政治文化の一要素であることを明らかにしておきたい。アイデンティティーは普遍的なものではない。アイデンティティーの境界線は、条件によって伸縮し変化する。固定された不動のものではないのだ。というのも、アイデンティティーの中身は再解釈し直され変化しえるからである。

この調査で実施されたアイデンティティーに関する質問への回答から、主に4つの傾向を導き出せる。第一にして基本的な傾向は、国家と国民意識の結びつき(トルコ国民意識)がアイデンティティーの最も重要な要素になっていることである。より一般的な表現では、調査協力者の大部分が「この国の者です」と答えている。

■都市が緊密化をすすめる

国民意識の高まりは、一般的に村落部から近代都市への移住が理由だと考えられる。以前は互いに相対的に別々に住んでいた集団が、移住や都市化をきっかけに、緊密かつ継続的で多様な影響を与え合っている。

都市化は、予想外なことに、社会の一体化と共通の生活文化の形成を助長している。それが、都市で新たな共通の生活の場所や関係を生み出しているからである。様々な出自をもつ諸個人が、学校、職場、礼拝場所、買い物や娯楽の場所で集まり、隣人・知り合い・友人関係を発展させるのである。さらに教育やメディアのような機関は、共通の価値観を創造し広めるという基本的な役割を担っている。

■宗教を最優先する人々

国家と国民意識のアイデンティティーを一番に認識するとの回答から20ポイント後退して、2番目に多いのは、宗教・宗派のアイデンティティーである。こうした回答を行った層では、基本的にイスラム教徒スンナ派が大部分を占めている。

民族的アイデンティティーと宗教的アイデンティティーが互いにどれだけ対立していて、どれだけ補い合っているのかは、調査結果を見てもまだ分からない。この件に関して、以前実施された調査によると、トルコ全体で人口の約10%がイスラム法を基にしたイスラム国家を望んでいることが明らかにされた。この結果を考慮すると、今回の調査で宗教的アイデンティティーを最優先した人のうち、4分の1のみ(注)がイスラム主義者的傾向にあることが見て取れる。

■アレヴィーとスンナの関係融和

調査ではアレヴィーに関し、以下の3点が明らかになった。1つ目は、アレヴィーは地理的に最も移動の盛んな集団であることである。アレヴィーの大部分はすでに都市部に住んでいる。教育水準、一世帯あたりの居住者数や所得水準は、アレヴィーが急速に都市化してきたことを示している。

2つ目は、他の集団とは異なり、アレヴィーの大部分は自らのアイデンティティーを(表明して)自由に暮らすことができないと述べている。これは、アレヴィーが多方面からの抑圧、差別、疎外を受けていることが原因といえる。

3つ目は、アレヴィーは集団外の結婚に最も寛容であることが明らかになった。都市部での生活により、アレヴィーとスンナの間の伝統的な境界線は薄れ、共通の生活の場が設けられている。一方でイスラムの特定の解釈に依拠する過度に宗教的な集団とアレヴィーとの間の境界線は、より明確になってきている。

■都市で「同郷人」の助け

故郷や同郷のアイデンティティーにはまた別の重要性がある。一方では現在も生まれた村や都市で暮らし、自分を何よりも出生地のアイデンティティーと強く結びつける人が多くいる。他方では、出生地と居住地が別の人たちもいる。この都市部に流れてきた人たちは、故郷のアイデンティティーを都市部でも守ろうとしている。この状況は時には「都市部の村人」という言い方をされるように、「都市化できない人たち」と認識されている。

同郷人による協会は、都市でも村との繋がりを維持し、慣習を継続させようとつとめており、このことは、上の認識が正しいのを示している。しかし同郷人意識は、望郷や都市生活への不平といった現実問題とも関連している。というのも、「同郷人」というのは、精神面のみならず、物質面でも助け合うからである。病院での部屋探しから市役所での用事まで、困ったらお金を借りることから仕事探しまで、多くの場面で同郷人の助けが必要になるのだ。

同郷人意識は、我々が思っているほど縛りが強く排他的なものではない。それとは反対に、この同郷集団への出入りは容易で、集団の中でメンバーは多いに自由裁量があるのである。同郷のアイデンティティーは、国民的、宗教的、民族的、政治的アイデンティティーと張り合うようなものではないため、これらと共に共存させることができる。故郷のアイデンティティーの強調は、村・町でも都市部でも、調査協力者が日常生活でこの繋がりをいかに重視しているかを表している。

(注)新聞に掲載されるグラフでは、宗教・宗派を自らのアイデンティティーとする男女共通の割合は、42.77%。

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http://www.milliyet.com.tr/2007/03/19/guncel/agun.html


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( 翻訳者:田辺朋子 )
( 記事ID:10486 )