Taha Akyol コラム:国内移住と社会統合
2007年03月29日付 Milliyet 紙

トルコで最も深刻な社会問題は国内移住だ... 100年遅れではあるが、我が国は大変光栄なことにこの50年間都市化を経験している。史上初めて農村社会から脱し、田畑への従属から解放されようとしている。このプロセスが遅れてしまったために、急速に、まさに各都市に人が次から次へと積み重なっている状態である。インフラは十分でない。農村出身の、教育や社会適応能力の不十分な何百万人という人々が都市の郊外に集積している。
失業と経済的生産性の低さ(の問題)以外に、文化的・政治的危機もこの変化のプロセスで生じている。このプロセスは「アイデンティティ」をグループ化し、強化する過程であった。イスタンブルのバージュラル郡はその典型的な例だ。1970年代初頭に移民が流入し始め、1973年に人口3万人だった「町」は、今や人口76万人の「郡」である。
ヨーロッパの大都市は、時間をかけて広がった都市化の歴史の中で、このような(急速な)人口の集積は経験したことはなかった!

■世帯別調査

バージュラル市のフェイズッラー・クユックルック市長は、実施した世帯構成員調査について記者団に説明した。市長自身もまた農村出身者であり、その上15年間市長を務めている。つまり問題が何か知っており、それを肌身に感じながら生活しているのだ。
調査によれば、90パーセント以上の世帯に冷蔵庫や洗濯機、テレビや電話がある。46パーセントの世帯は衛星アンテナを使ってテレビを視聴している。(衛星アンテナは)高い(次元の)消費文化を示す家財道具である...
しかし... 人口のおよそ半分は小学校しか出ていない。出生率はトルコの平均以上だが、徐々に低下している。毎年およそ1万3千人の子どもが小学校に入学しており、そのことから新たな投資が必要となっている。調査時の人口の59パーセントは仕事に就いておらず、失業状態にある。就業者の87パーセントは労働者または公務員である。
バージュラル市の人口の4分の1は東アナトリアまたは南東アナトリア生まれの人である... 市長は私の質問に対し次のように答えた:「我々の地域(の人口)のうち、移住してきた市民は4分の1を占め、この4分の1の人々のさらに4分の1は(クルド系の)民主市民党(DTP)に投票している。バージュラルでの住民登録期間が長くなればなるほど、そして(周りの)社会との同化が進めば進むほどこの割合(=DTPに投票する割合)は低下している」。

■統合への道

バージュラル市のクユックルック市長は、ありとあらゆる「社会化(社会適応能力の向上)」や「社会統合」を進めるために多くの施策を実施している。いくつかの例を挙げよう。

・国民教育省と協働して識字学校を開いている。この学校では1年間に1万6千人の人が読み書きを学んだという。今現在も5000人の人が講座に参加している。受講者の90パーセントは女性である。成績優秀者には抽選ではあるが数多くの電化製品が贈られているほか、子どものいる受講者のためには託児所も用意されている。読み書きを学んだ女性たちは「世界が変わった」と話している。クユックルック市長は、識字能力は女性の社会適応能力の強化にとって非常に重要であると強調する。

・男性・女性の双方と、出自の異なる全ての社会集団からの市民が参加した「市民議会」で、郡の抱える問題が話し合われている。(市民に)「生まれた場所ではなく、今生活している場所での同郷意識」の自覚を持つよう促している。講演会やコンサート、街巡りや美術館巡り、チャナッカレやコンヤ、カッパドキアへの都市間ツアーが開催されている。「満ち足りた家庭、満ち足りた生活」講座への女性たちの関心は非常に高い。各学校のスポーツ、文学、美術クラブに対し市が積極的な支援をしている...
クユックルック市長は確信を持って「農村社会から脱するための唯一の道は、社会適応能力を強化することだ」と言っている。

郊外を都市の中心部と統合し、個々人それぞれのアイデンティティを統合することは、我々の抱える最も重要な課題である...
バージュラルはこの長い道のりにおける1つの好ましい例である...

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:10518 )