米国務長官「イスラエル首相とパレスチナ大統領は定期的に会談を開催」「最終的地位交渉は時期尚早」
2007年03月28日付 Al-Nahar 紙
■ ライス米国務長官「アラブ諸国はイスラエルに対して開かれた姿勢を見せなければならない」「最終地位交渉を行うには機が熟していない」
2007年03月28日付アル=ナハール紙(レバノン)HP1面
【ラーマッラー:ムハンマド・ハウワーシュ、諸通信社】
アメリカのコンドリーザ・ライス国務長官は、記者会見を3月26日から昨日27日に延期した理由をイスラエルのオルメルト首相との意見の相違ではないと否定したものの、ライス長官が公表した内容は、発表する予定だった立場から長官が一歩遠ざかったことを示している。すなわちエルサレム問題や難民問題を含む最終交渉の件には触れず、パレスチナ・イスラエル両者が並んで対話する計画の発表は先延ばしされた。しかしライス長官は、オルメルト首相とバレスチナのアッバース大統領との二者会談が再開されることを発表した。ライス長官は、アッバース大統領をパレスチナ新内閣とは区別している。またライス長官は、リヤドでのサミット開催を前にアラブ諸国へのメッセージとして、アラブ諸国がイスラエルに対して開かれた姿勢を示すことを要請しつつ、最終地位交渉を行うには機がいまだ熟していないとの見解を示し、オルメルト首相の立場を採用した。
ライス長官は昨日エルサレムでの記者会見において、「オルメルト首相とアッバース大統領が2週間に1回の定期会談を行い、私も時折赴いて会談に参加する予定である。この会談ではガザ地区からのロケット弾発射を停止すること、パレスチナ高官らが出発点となりうる基礎を作る活動を容易にすることなど、信頼構築のための具体的な措置について協議が行われる。目的は、交渉成功の可能性を高めるために信頼関係を回復させること」であり、また、「ジョージ・ブッシュ米大統領の二国家構想に基づき、イスラエルの隣に平和に共存するパレスチナ国家を建設するためである」と述べた。さらにライス長官は、「我々は、交渉の時機が訪れたときには成果をもって終えることができるように基礎を築いていかねばならない。イスラエルが新たな考え、新たな実践を示すことは重要である」と付け加えた。
アメリカの役割については「諸々の障害を乗り越え、新しいアイデアを発展させ、国際的支持を得るために基本的な支援を提供すること」になるであろうと説明した。
また、今後行われる定期会合で、「ロードマップが宙に浮いた状態になってしまっているために現在は存在していない政治的展望」を見出すことの重要性について強調した。ライス長官は、「中東和平四者協議が課した条件に応じることを(イスラーム抵抗運動)ハマースが拒否したまま挙国一致内閣が樹立されたことによって状況はより複雑になったものの、前進可能な進路は存在し、特にアッバース大統領は前に進むことに熱意を持っており」、彼はイスラエルとの和平のパートナーとして「ふさわしい」との見解を示した。ライス長官のこの立場は、アッバース大統領がイスラエルに対する約束に「あからさまな違反」を犯したとするオルメルト首相の日曜日の非難とは食い違っている。
ライス長官は、「アラブ諸国はイスラエルに対して開かれた姿勢を見せ、イスラエルが中東において位置を占めることを受け入れたことを目に見えるようにしなければならない」と明確に述べた。しかし、アッバース大統領とオルメルト首相がガザ地区およびヨルダン川西岸におけるパレスチナの土地の「最終地位」について交渉を行うには、機はいまだ熟していないとの見解を示した。
パレスチナ内閣は反論しており、ムスタファー・アル=バルグーティ情報相は、ライス長官の発言が「イスラエルの見解に偏り、期待を裏切るものだ」と述べている。
■ オルメルト首相
一方でオルメルト首相は、「交渉再開のための方程式は全て、ロードマップと段階的進行(すなわち、入植地の解体、一時的国境によるパレスチナ国家、その後に恒久的解決)に基づく」と主張し、「解決策はロードマップに則って実践するという条件のもと、将来のパレスチナ国家の治安整備など、よりセンシティブでない事項の議論」を行う用意があることを表明した。オルメルト首相は、「アメリカ合衆国が両当事者の役割を代替することはできない」ことを理由に、「イスラエル・パレスチナ間の交渉」をあくまで主張している。
イスラエルの放送局は、ライス米国務長官とオルメルト首相の意見が異なっているために、ライス長官は「期待値の上限を下げる」ことを強いられ、「オルメルト首相は最終地位に関してパレスチナ人と交渉を始めることを拒否し、アメリカが交渉に直接介入することには反対を示した」と報道した。また、「アメリカ人は、サウジアラビアとの関係を改善するために我々を犠牲にしてはならない」とのオルメルト首相に近い筋の言葉を伝えている。
「イディオット・アハロノート」紙は、最終的解決の問題、すなわち国境・エルサレム・難民の諸問題を議論しようとするライス長官の試みに対してオルメルト首相が「断固反論した」と報じ、「ライス長官は、サウジアラビア人や湾岸諸国から、イスラエルの承認や、イスラエル特使らとの地域会議への参加の同意を取り付けることに成功しなかった。また、イスラエル軍兵士ギラード・シャリットの解放問題でも進展を得られなかった」と伝えた。
「ハアレツ」紙は、「この意見の相違は皆に好都合である」と指摘し、「ライス長官は、アメリカ合衆国がパレスチナ問題に対処するために真に尽力しているとアラブ世界に確信させたいと望んでいる。イスラエル首相との公然たる意見の相違以上に、アメリカが真剣であることをアラブ諸国に納得させられる事があろうか?」と述べている。また同紙は、今回の意見の相違は、オルメルト首相に対してイスラエル内閣の内外から向けられている政治的攻撃を防ぐための助けとなるであろうと報じている。
ガザ地区のウンム・アル=ナスル村では、同村が下水によって浸水したことに怒った群衆から、ハーニー・アル=カワースィミー内相の車列が発砲を受けた。
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( 翻訳者:森本詩子 )
( 記事ID:10541 )