英水兵をめぐる危機、終結:15名の英海兵隊員釈放される
2007年04月05日付 E'temad-e Melli 紙
写真:ホッジャト・セパフヴァンド(エッテマーデ・メッリー)
英国王室海兵隊員15名に対する恩赦による釈放が発表されたことで、12日間に及んだ危機は沈静化に向かうこととなった。
昨日、英首相が言うところの「英国水兵問題をめぐる極めて重要な48時間」の最初の一日が終わろうとしている頃、イラン大統領は記者会見の中で、偉大なる預言者ムハンマドのめでたき誕生とキリスト教徒らの清らかなる祝日を祝って、拘束された英兵15名に恩赦を与え、釈放すると発表した。
マフムード・アフマディーネジャード大統領は、この措置はイラン人のイスラーム的慈愛の精神を示すことが目的だとした上で、「英海兵隊員15名は、この記者会見の後、テヘランの空港に向かい、家族らのもとに帰ることになる」と述べた。
英水兵15名の釈放の発表は、昨日大統領が武勲3等の勲章を革命防衛隊海軍大佐アボル・ガーセム・アーマーンガーフ海上警備隊司令官に授与した後に行われた。
15名の英兵の釈放はイギリス国民に対するイランからの贈り物であるとしたアフマディーネジャード大統領は同兵士らと面会し、その後駐イラン英大使に彼らの身柄を引渡した。この面会の中で、15名の英兵らはイラン大統領及び国民に謝意を表明した。
アフマディーネジャード大統領はイギリス人女性兵士フェイ・ターニーと面会した際、「ご家族のもとに帰ることで、ご家族の皆さん、特に年少のお子さんはきっと喜ばれることでしょう」と声をかけた。
また、英兵らを指揮していたステファン・フェリックスも、イランで過ごした13日間、自らを含めた英兵らに対する待遇の良さに感謝の意を表明した上で、「イラン領水を侵犯したことに対してイラン人が不快な思いをしていることは、われわれもきちんと理解しています」と述べ、さらに部下の兵士らの謝罪の気持ちを大統領に伝えた。
大統領はこの面会の中で、英兵らと歓談しつつ、「あなた方に恩赦を与え、イラン国民と我が国があなた方の不法行為に対して目をつむったことは、イランのイスラーム的な慈悲と慈愛の精神によるものである」と述べた。
英兵らはその後、ロンドンへ向けイランを後にした。
▼ 英兵釈放をめぐる外交交渉
イギリスがイランとの直接交渉を提案したこと、トルコとシリアが英イラン間の調停に正式に名乗りを上げたこと、そしてイラン政府当局者によるイラクで拘束された5名のイラン人外交官との面会の可能性が浮上していること‥‥英海軍兵士15名が拘束されて12日が経ち、彼らの釈放をめぐる48時間の一連の緊迫したやり取りが行われる中で、これらの動きは恐らく検討に値するものとして挙げることができるであろう。
ラーリージャーニー国家安全保障最高評議会書記がイランで拘束されている英兵の釈放に向けた英イラン両政府間の交渉開始について発言してから一日後、英首相府は同問題について二国間の直接交渉をイランに提案、両国とも同問題の速やかな解決を望んでいるはずだとの内容の声明を発表した。
この声明は、イギリスは火曜日にアリー・ラーリージャーニー書記を初めとするイラン当局者と接触をしており、〔交渉開始の〕提案に対するイラン側の回答を待っているところであると言及している。さらにこの声明の中で英首相は、英イラン両国はともに、話し合いを通じた問題の速やかな解決を望んでいるはずだとの見方を示している。
ジョン・ヴィクルス英外務報道官もアル・アーラム放送に対し、イギリスはイラン側と直接接触して、英兵をめぐる問題に関して平和的に解決する方法を模索しているところであると語った。これについてある情報筋がイラン国営通信に語ったところによると、英兵らの最新の状況についてラーリージャーニー書記と話し合ったイギリス当局者とは、トニー・ブレア英首相の顧問であるナイジェル・シャインワルドであったとされる。火曜日の夜に行われたこの接触は、イラン側が両国の話し合いによる英兵拘束問題の解決に関心を示し、イランの領土に対する侵犯を繰り返さないことを英側に約束させる必要性を強調したことを受けて、実現したものであった。
英イラン二国間交渉が開始されたことは、3つの外交メッセージを内に有するものであった。第一のメッセージは、英政府は拘束された英兵が釈放されるまでイラン政府との二国間交渉を凍結するとの以前の公式の立場を破棄した、ということである。第二のメッセージは、イランとイギリスは、トルコとシリアによる仲介と並行して、メッセージや立場を直接伝えるためのチャンネルを確立した、ということである。
そして第三のメッセージは、問題解決のために〔直接交渉開始前に〕英政府関係者一行がイランを訪問したことは、〔直接交渉の開始によって〕すっかり色褪せたものになってしまった、ということである。実際、イランの外務報道官はこのことについて、「英外交団のテヘラン訪問は、イラン領水を侵犯した兵士らをめぐるイランとイギリスの間での交渉開始を意味するものではない」と述べていた。〔その後〕セイエド・モハンマド・アリー・ホセイニー外務報道官は火曜日〔になって〕、英イラン両国の大使らを通じた交渉が行われていることを明らかにしている。
他方、この頃在イラン英大使館もまた、「英兵問題に関してイランとの二国間交渉はこれまでのところ行われておらず、この件についてイラン側の回答を待っているところだ」と表明していた。テヘランの英大使館の広報担当アタッシェはイラン学生通信(ISNA)に対して、「現在交渉については、主に両国の大使館や代表らによって検討されており、本件の直接の責任者は両国大使である」と述べている。
他方、英外相は出口の見えないイランとの問題が「早急に解決」されることに期待すべきではないと警告を発していた。マーガレット・ベケット外相は、軍事的措置の可能性は低いとした上で、「われわれは衝突を望んでいるわけではなく、この問題を外交的な手段で解決したいと考えている」と述べていた。
〔中略〕
▼ トルコとシリアが仲介に名乗り
他方、トルコとシリアは英兵士釈放を促すことを目的に、英イラン間の仲介に名乗りをあげた。
トルコは英兵が拘束された初日から、英イラン両国間での話し合いに関心を向け、結局イラン側からの回答はなかったものの、拘束された英兵士らにトルコの外交官が面会するという案を出していた。トルコ外相はまた、昨日ベルリンでのドイツ外相との会談後、英兵の釈放へ向けたトルコの懸命の努力について明かし、数日以内にこの問題が前向きに進展することに期待を表明している。
他方シリア外相も、シリア政府が公式に英イラン間の仲介に正式に乗り出していたことを明らかにしている。ワリード・ムアッリム外相は、イランによる英兵拘束は米英によるイラン攻撃の口実に発展するのではないかとの質問に、次のように答えている。「そのようなことになるとは考えていない。われわれはこの問題が平和的・外交的に解決されることを願っている。もちろん、シリアは同問題の解決に全力を尽くすつもりだ」。
▼ イラクでイラン外交官5名と面会?
これまでのところ英イランいずれの当局者からも、15名の英兵とイラクで拘束された5名のイラン人外交官の交換に関する発言はなく、これについては非公式筋やメディアが憶測を述べているに過ぎない。
他方、米大統領も、イランとの取引は考えていないと表明している。ジョージ・ブッシュ米大統領は、8名の英水兵と7名の英海兵隊員が「人質」であるとの見方を繰り返し示した上で、「人質問題となれば、いかなる取引もあってはならない」と述べている。
唯一公式筋で英兵とイラン人外交官の釈放をリンクさせているのは、イラクのフーシヤール・ズィーバーリー外相の発言だけである。同外相は、もしアメリカがイラクのアルビールで2ヶ月半前に拘束された5名のイラン人を釈放すれば、イラン側の英兵釈放にも好影響を与えるであろうと述べている。同外相はまた、長期にわたり米側に5名のイラン人を釈放するよう正式に申し合わせているが、これまで実現されていないとも語った。
ズィーバーリー外相のこの発言と同じ時期、イラン国営通信(IRNA)はある信頼できる筋の話として、バグダードにあるイラン大使館の努力と、イラク当局ならびに駐イラク国連代表らの協力によって、イラン大使館の代表者が拘束された5名のイラン人と面会する予定だと伝えた。IRNAはまたイラク政府筋の話として、イラクで拉致されたイラン人外交官の問題に関して、さまざまな接触が行われていると報じている。
この報道の直後、在イラク・イラン大使館のある高官はISNAに対し、「イラク情勢の変化やイラク政府の努力に鑑み、なるべく早期に領事がアルビールで拉致された5名の外交官と接触できることを願っている」と述べた。アル・アーラム放送もまた、イラン本国から派遣された代表者が5名のイラン人外交官と面会する予定であると伝えている。
拘束された外交官らとの面会に向けた努力は、85年バフマン月中旬〔2007年1月末から2月初旬頃〕に誘拐された在イラク・イラン大使館員のジャラール・シャラフィー二等書記官の釈放後、さらに加速されている。しかしイラク外相によると、シャラフィー二等書記官の釈放は英兵釈放の問題とはまったく関係がないとのことである。ズィーバーリー外相はその上で、シャラフィー氏を誘拐したのが誰なのかは不明であると述べている。
現地の新聞はこちら
( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:10576 )