いよいよ開通する黒海沿岸道路:その政治、財政、環境的側面
2007年04月07日付 Milliyet 紙

共和国時代の最も重要なインフラ整備プロジェクトの1つである黒海沿岸道路が、今日(7日)開かれる予定の式典で開通する。このようにして、サムスンからアルトヴィンまでの全海岸線沿いに延びる全長約550キロメートルの高速道路のネットワークが供用されることになる。
黒海沿岸道路には、グルジア国境を経由してトルコの交通網をコーカサスやロシア、中央アジアと結びつける1つの戦略的な架け橋という性格もある。
この困難なプロジェクトは、1960年代からトルコで議論に上っていた。しかし実現に向けて政治力を発揮した人物は、1997年に首相の座に就いた祖国党(ANAP)のメスト・ユルマズ元党首である。
家系の1つがリゼへと延びるメスト・ユルマズがスタートさせたこのプロジェクトを完成させ(道路を)開通させたのが、もう1人のリゼ出身の政治家であるレジェプ・タイイプ・エルドアン(現首相)であったことは運命のめぐり合わせだった。エルドアンがユルマズを開通式に招待したのは紳士的な行動であった。

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政治的、経済的、法的な面、そして環境面で招いた結果という観点から、黒海沿岸道路ほど大きな論議を呼んだプロジェクトはほとんどない。
弾劾裁判所が過去に審理した最も判断の難しい裁判のうちの1つが黒海沿岸道路のケースであった。公正発展党(AKP)は政権に就いた後、このプロジェクトに関連する入札での仕事の振り分けにおいて不正行為を働いたとしてANAPのヤシャル・トプチュ公共事業相(当時の)を弾劾裁判所に提訴していた。丸々14カ月かかった審理ののち、弾劾裁判所は(2000年の)ラフシャン・エジェヴィト恩赦を理由に訴えについて明確な判決を下さない決定をした。
興味深い点は、ANAPのトプチュ公共事業相を弾劾裁判所送りにしたAKPが、その後黒海沿岸道路プロジェクトを引き継いでその完成を最も重要な政治課題の1つにしたことである。AKPが弾劾裁判所に訴えたトプチュがのちにAKPの働きかけによって今日の式典に招かれたことは、一種の政治的なご機嫌取りだと見なすことができる。

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沿岸道が環境面で引き起こした負の影響は、大きな論争と環境保護団体の展開するキャンペーンを引き起こした。1つの提案は、高速道路を海岸沿いではなく、海岸と平行して入り込んだ後背の谷に通すことであった。この場合、掘らなければならないトンネルのコストが高くつくという理由で、より安価な費用で済む海岸埋め立て方式が選ばれた。
当初8億ドルと試算されていたプロジェクト(の実施費用)は、のちの見積もりによって25億ドルに膨れ上がった。
沿岸道に対する最も大きな批判は、海岸線と海とを分断する道路が、環境面に悪影響を及ぼすというものだ。プロジェクトが魚の種類から水中の微生物まで海と海岸に生息する全ての生き物に影響を与え、生態バランスを損なわせるだろうという形で幅広い批判が起こっている。同様に、川の流れが海に達する先が寸断されることが洪水災害を引き起こしている。

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今の段階で黒海の気難しい自然が高速道路にどのような影響を与えるのかは分からないのは確かだ。
他方で、裁判所や行政裁判所でこのプロジェクトに関して審理されている数限りない裁判が、法的な面で深刻な問題を山積させる原因になっている。
しかし、環境面や法的な面での問題と引き換えに、沿岸道は今日、大掛かりな式典で開通する。
今後少なくともトルコで最も開発の遅れた地域の1つである東黒海地方の経済発展を活性化し、地域住民の背負った宿命を変えることがこの道路のもたらす最も大きなメリットとなるはずだ。このような考えから、黒海沿岸道路が我が国にとって有益となることを願っている。

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:10593 )