「西欧におけるイデオロギーの欠如は大きな問題である。彼らは虚偽のイデオロギーを追い求めている。何故なら、彼らは我々の文化に対して劣等感を感じているからだ。」
[映画監督の]ナーデル・ターレブザーデはイラン国営放送の4チャンネルの映画番組で、映画『300』について上記のように発言し、更にこう述べた。
「この物語の主人公レオニダスは映画の冒頭で空を見上げる。彼の顔つきは、[欧米人ではなく]しっかりとしたイデオロギーをもった、東洋人の顔つきにきわめて近い。私の考えでは、この四半世紀を通じてのイスラームの西欧への影響に対して、彼ら(欧米人)にはある種のイデオロギー的空白が生じている。彼らは、最後まで抵抗する神話的英雄、すなわちイスラーム世界、特にシーア派の英雄たち(*1)に似た雰囲気をたたえる神話的英雄が欲しいのだ」。
彼は続けて次のように述べた。
「映画『300』では、[イラン人の]敵が『イラン人が怖い』と告白しているが、[このようなシーンによって西欧のイスラーム世界に対する]敵意は新たな段階に入ったのである。実際のところ、我々は、矢を射る前にメディアや映画を通してメッセージを送ってくる軍隊と対峙しているのである。これは非常に驚嘆すべき事である」。
映画『救世主の吉報』を制作した同監督は、更にこのように付け加えた。
「映画『300』はハリウッドによるいとも奇妙な映画であり、イランや他の世界各国で非常な騒動を巻き起こした。この映画は、非常に微妙な時期に市場に出回ったという点、またこの騒動が文化的にマイナスの影響を及ぼした点、更に、当のギリシア人さえもこの映画の主題に対してインターネット上の様々なサイトで抗議を行っているという点で、重要である。」
同氏はまたこう述べた。
「映画『ブラックホーク・ダウン』では、アメリカの兵士らが指揮官の命令に際して「フワー」と雄叫びの声を上げているが、半人前の映画『300』でも、ギリシアの兵士らがレオニダスの命令に際して同じ雄叫びの声を上げている。これは偶然に重なったわけではない。ハリウッドのペンタゴン的な映画に共通したこうした事柄は、いったい誰に対する準備なのだろうか?」
彼は次のようにも発言した。
「[イラン人の]敵は『我々はある点で困難を抱えている』と告白している。我々は、矢を射る前にメディアや映画でメッセージを送ってくる軍隊と対峙しているのであり、これは驚嘆すべき事である。彼らはイラン人を恐れている。彼らは今日、単にイスラームに用があるのではなく、イラン人に用があるのであり、[西欧のイスラーム世界に対する敵意は]新たな段階に入ったのである」。
*1:カルバラーの地でウマイヤ朝支配者らと戦って壮絶な殉教を遂げたシーア派の第3代イマーム・ホセインをはじめ、皆、同様に殉教したと信じられているシーア派イマームたちを指す。シーア派の宗教行事のうち、最も重要なのが、イマーム・ホセインとその一行の殉教を悼む哀悼行事(アーシューラー)であり、シーア派の精神性の基盤をなすものといえる。
なお、最後の第12イマームだけは殉教を逃れ、幼少時に「お隠れ」になり、終末に際して「救世主(マフディー)」として再臨するとされている。
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( 翻訳者:下山伴子 )
( 記事ID:10679 )