シリア政府、過激派勢力に対する掃討作戦の存在を公表
2007年05月04日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ 米国務長官とシリア外相の会談に合わせ、シリア政府が原理主義者に対する作戦の存在を公表
■ シリア政府、アル=カーイダ所属者を含む数十人を殺害したと発表

2007年05月04日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【ダマスカス、シャルム・アル=シャイフ:ロイター、AFP】

 シリア政府高官らは昨日木曜日、シリアの治安部隊がここ数週間強化している作戦行動において、イスラーム主義過激派であるとの容疑がかかる数十人を殺害し、そのなかにはイラク国内のアル=カーイダ組織と繋がりを持つ人物も多数いた、と述べた。バアス党党員であるアリー・ディラーヤは公表されていなかったこの作戦行動に関し、過激派を何百人も拘束し、そのうち4月にはアル=カーイダ組織の大物の少なくとも1人の身柄を確保した、と述べた。同氏は、シリアが1980年代に国内のムスリム同胞団に対して打ち出した強硬な作戦行動を引き合いに出しながら、今回のアル=カーイダのメンバーはシリア出身者ではないと述べた。シリアではこうした種類のテロについて経験をもっている。

 また同氏によれば、過激派と疑われる容疑者らのうち1人は爆発物を仕掛けたベルトを身につけており、治安部隊の上級士官であったが、彼らの多くは、イラク難民が大勢住むダマスカス郊外のある地区で最近起きた衝突の際に殺害されたという。また、爆発物を装備していた者は公共の場所にいたが、監視下にあったために悲劇を避けることができた、という。

 さらに同氏は、シリア中部における別の衝突では5人が殺害され、他にも今年に入って国内各地で、シリア国内の過激派やイラクとの国境を越えようとする過激派を標的とした作戦が実施された、と述べた。政府系の各紙は複数の作戦に関する昨年の報告内容を掲載したが、主要メディアはこの作戦行動のニュースを取り上げなかった。しかし在ダマスカスの西側外交官らは、組織的な制圧作戦が存在するとの信頼に足る証拠を目にしたと述べている。アメリカ軍も、シリアは戦闘員が国境を越えてイラク国内へ流入することを阻止するためにより多くの努力を行っていると評価している。アメリカ軍のウィリアム・コードウェル報道官は昨日のバクダードでの記者会見において、「シリア人による、何らかの動きが存在する…、我々がここ[※イラク]で先月4月に見たところでは、イラクに入ってくる外国人戦闘員の流入に減少が起きている」と述べた。

 しかし、アメリカのコンドリーザ・ライス国務長官は昨日、アメリカとシリアのコンタクトとしてはここ2年間で最高レベルとなる、シリアのワリード・アル=ムアッリム外相との会合を行った後、シリアに対し、外国人戦闘員のイラク流入を阻止するようあらためて促したと述べた。シリア政府は、戦闘員が国境を越えてイラクに流入することをシリアが許しているとのアメリカの嫌疑を否定し、シーア派のイラク民間人への攻撃に関わっていると考えられるアル=カーイダ組織の戦闘員はイラクにとって脅威であるのと同様にシリアにとっても脅威である、と述べた。ある高官は、「現在我々は過去のいかなる時よりも警戒している。イラクの状況が崩壊すればするほど、それがシリアにとっての不安定要素となる」と述べた。

 またこの高官は、「イラクで燃え上がったこの戦火が続けば、最後には地域の残りの部分にも破壊をもたらすだろう。シリアはアメリカによる占領に対する抵抗と宗派間の殺し合いを区別している」と述べた。しかし同高官によれば、シリアには最近の治安上の努力についてアメリカに知らせる意図はない、という。9月11日の攻撃の直後、シリア政府はアメリカ政府に情報を提供したが、2年前にレバノンやイラクにおけるシリアの役割をめぐって関係が悪化した際に諜報の分野での協力を停止している。同高官は、「万事において、アメリカ人が我々に感謝したことはなかった。我々の支援でアメリカ人の生命を救出できたときでさえもだ」と述べた。

 しかしシリアは最近、シーア派のイスラーム主義者でありイランに近いヌーリー・アル=マーリキー首相に率いられアメリカの支援を受けるイラク政府との関係改善に努めている。ダマスカス訪問中のイラク政府高官は、「シリアはアル=カーイダに関して実際的な懸念を抱き始めている。シリアはイラクが崩壊することや、国境地帯にイスラーム主義勢力の支配する県が生まれることを望んではいない」と述べた。

 一方、シリアのムアッリム外相は、アメリカのライス国務長官とイラク情勢やイラクの治安を実現する必要性について話し合ったと述べるとともに、会談ではレバノンについては取り上げなかったと説明した。

 ムアッリム外相はおよそ30分の会談の後、記者らに対し、会談ではシリアとアメリカの二国間関係についても取り上げたことを明らかにしたが、質問に答える形で、レバノンには触れなかったと述べた。

 しかしムアッリム外相は、ライス長官との会談によってシリアの役割が重要であることが確認されたのかとの質問に答え、「確認されたのはシリアの役割だけではなく、シリアが中東地域の問題解決の一部であり、イラクにおける治安と安定の実現のためにも、レバノンにおける国民合意の実現のためにも、アラブ・イスラエル紛争の公正かつ包括的和平の実現のためにも、戦略上の中心として重要であることが確認されたのである」と述べた。

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( 翻訳者:森本詩子 )
( 記事ID:10827 )