「アタテュルク廟で喧騒が聞こえる」 ―欧米メディアの伝える最近のトルコ情勢
2007年05月20日付 Hurriyet 紙

西洋のメディアはここ最近の事態の進展の見地からトルコに(紙面の)広いスペースを割き続けている。米ニューヨークタイムズ紙は「アタテュルク廟で喧騒が聞こえる」という見出しの記事で、トルコにおける世俗派-公正発展党(AKP)の衝突を分析する一方、英オブザーバー紙はこの緊張が悪い結果を生じさせるかもしれないという懸念を紙面で表明した。

AKPが政権に就いた2002年がトルコにとって「転換点」となった:ニューヨークタイムズ紙は「アタテュルク廟で喧騒が聞こえる」という見出しの記事で、2002年の(総)選挙が1つの「転換点」となったと指摘し、有権者が「世俗政党の不正行為や能力不足に」対して反旗を翻したと主張した。
同紙は、サブリナ・タバーニス記者の署名と「アタテュルク廟で喧騒が聞こえる」という見出し付で掲載した記事で、アタテュルクの革命に触れたのち、トルコが認められた場合にはヨーロッパに加わる道の途上にあり、これもまたアタテュルクの夢の実現を意味することになると述べた。しかし、トルコをEUへと導いているのがイスラームに価値を置く政治家のグループであるとする同紙は、これを「歴史的な皮肉」と評した。アタテュルクは新しいトルコ人国家のモデルをヨーロッパや西洋の国に求めたとし、アタテュルクの人生を記したアンドリュー・マンゴーの、アタテュルクが「宗教を1つの社会現象と認識していたが、このためには彼の時間は残っていなかった」とのコメントも紹介した。
アタテュルクが「ラディカルな世俗」改革を実現させたとする同紙は、同時代にアタテュルク改革の別のお手本があったと指摘、メキシコとロシアの革命において近代化と世俗主義の概念がもたらした重要性にも言及した。同紙は、イランのシャーもアタテュルクのやり方を丸々取り入れたと述べた。

ニューヨークタイムズ紙は、アタテュルクの築いたシステムが定着し、トルコを経済、社会的発展の観点からヨーロッパの水準に引き上げたと述べた。しかし時とともにヨーロッパが民主主義や寛容さ、人権を重視しながら近代主義思想を再構築する一方で、トルコのリーダーたちが頑なに、時に抑圧的な手段をとり続け、また軍人たちもアタテュルクの遺産を主だって守る役目を果たし続けたと報じた。

■有権者は世俗政党に反抗した

2002年の選挙を「転換点」と位置づけるニューヨークタイムズ紙は、有権者が「世俗政党の不正行為や能力不足に」対して反旗を翻し、AKPを選んだと主張した。
AKPが地方行政の運営において民主主義の決まりと調和を保つことができることを証明したと主張する同紙は、AKPが政権に就いて以来トルコの政治過程により多くの人々の参加がもたらされ、EU加盟が最優先の目標に据えられたと述べた。同紙は、AKPの足跡を列挙する一方、「死刑を廃止した」ことにも触れたことが目を引いた。

■世俗政党が政権に残っていたらEU加盟交渉は始まらなかった

ニューヨークタイムズ紙は、しかし「イスラーム主義の起源を持つ政党」がトルコをどこに導くのかについての不安がついてまわっているとし、「何千人ものトルコ人」が先月デモをしたと伝えた。
これにもかかわらず、外国人の専門家や高官、またトルコの新しいリーダーたちが、EUが中に取り込みたいと願うダイナミックで多元的な社会に見られる紐帯が残っていると信じていると報じた同紙は、この(話の)枠組みでトルコ-EU合同議員会議(Türkiye-AB Karma Parlamento Komisyonu)のユースト・ラゲンディク共同議長の「もし世俗政党が政権に残っていたらEU加盟交渉を始めることは不可能になっていた」という談話も紹介した。
同紙に語ったイスラエルのピナス・アヴィヴィ駐トルコ大使も「トルコとの関係は頂点に達している。いかなる預言者もこれを予期できなかった。イスラエルとの貿易は目下25億ドルの水準で、エルドアン首相の政権以前の2倍である」と述べた。
にもかかわらず、一部のヨーロッパ人は依然疑念を抱いたままであるとする同紙は、この一例としてフランスのニコラ・サルコジ新大統領の態度を挙げた。

■英紙「トルコでの激しい闘争の影響は破壊的となり得る」

トルコでの事態の進展に対する解説はイギリスのオブザーバー紙からもやって来た。同紙は、トルコの中心での緊張が徐々に深刻化しているとし、「近代主義と伝統、イスラーム主義と世俗主義、民主主義と抑圧の間で激しい闘いがある。この結果がもたらす影響は、我々皆にとって破壊的となり得る」という見方を示した。
毎週日曜日にイギリスで発行されている同紙は、アンドリュー・アンソニーの署名でトルコに関連したとても長い評論を掲載した。「地理的に、またシンボルとしてヨーロッパとアジアの間に位置するトルコは、戦略の観点から最も重要な国の1つである」とする同紙は、次のように続けた:
「しかしトルコの中心での緊張は徐々に深刻化している。近代主義と伝統、イスラーム主義と世俗主義、民主主義と抑圧の間で激しい闘いが起こっている。この結果がもたらす影響は、我々皆にとって破壊的となり得る」。
トルコで引き続いている論争にも言及した同紙は、レジェプ・タイイプ・エルドアン首相は、大統領候補として示したアブドゥッラー・ギュル外相同様1990年代にはイスラーム主義者の見解を表明していたが、政権に就いた後に態度を穏健化させたと述べた。

■トルコ史上最もリベラルで民主的な政府

オブザーバー紙は、AKPが「トルコ紙上最もリベラルで民主的な政府」であるとし、AKPの行った改革のいくつかを取り上げた。これにもかかわらずギュルの立候補は不快感を生み出したという同紙は、ギュル夫人がイスラーム風スカーフを使っていることを指摘する際にもイスラーム風スカーフをトルコ政治における「最も挑発的なシンボル」と位置づけた。
トルコは国民の大部分がイスラーム教徒であるにもかかわらず世俗的な国であることに触れ、アタテュルクの宗教分野での改革、トルコにおける世俗主義の適用、トルコでの軍の立場とエルドアンのこれまでの活動を取り上げた。
多くのトルコ人がエルドアンの「新しい穏健的態度」について疑念を抱いているとする同紙は、世俗主義についてAKPに関して挙げられた不満についても紙面を割いた。
ギュルが大統領候補に挙がったことが軍人にとって「コップをあふれさせる最後の一滴」になったとする同紙は、参謀総長の意見表明が「e-クーデター(電子クーデター)」と名づけられたことにも言及した。何が起ころうともAKPの選挙での勝利が予想されると報じた同紙は、「しかしもしAKPが勝利すれば、多くの評論家はこの結果を第5次クーデターとなると信じている」と述べた。

■政治的基盤は急速にずれつつある

オブザーバー紙は、マルマラ海を通る地震断層になぞらえて、「政治的基盤は急速に、予期しない形でずれつつあり、もしかしたらサミュエル・ハンチントンが主張し多くの論争を巻き起こした文明の衝突が実際に生じる可能性がここより大きい場所は他にない」と表現した。
何百万人ものトルコ人が5月になって(デモのため)通りにあふれ出たことも報告した同紙は、これらのデモが特に参加者の65パーセントが女性であったことから、遠くからは進歩主義者の抗議活動のように見えたとし、「多くのトルコ人女性が、隣国イランの女性の束縛された状態を見て、同じ運命をトルコで共有することに危機感を抱いた」と述べた。
トルコでの表現の自由の問題についても取り上げた評論で、トルコのEU(加盟)プロセスに言及した際には、フランスでニコラ・サルコジが大統領になる一方でトルコの最大の支援者であるトニー・ブレアが首相職から降板することに触れ、「ブレアの降板はロンドンよりもイスタンブルで悲嘆された」との表現で伝えた。
同紙は、トルコを急速に発展しつつある経済と大きなポテンシャルを持つ市場と位置づけ、話をしたトルコ人の大半が長期的に見てトルコは経済的魅力や政治的、文化的相違に関する懸念を払拭するであろうと信じていると報じた。

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:10936 )