「すべての懸念について明確に指摘」:カーゼミー=ゴンミー大使、イラン・米協議後の記者会見で明かす
2007年05月29日付 Iran 紙
【政治部】バグダードのグリーン・ゾーンにあるマーリキー・イラク首相官邸で昨日、イラン・米の協議がイラク政府高官を交える形で、4時間にわたり行われた。昨日イラン側代表団を率いたのはハサン・カーゼミー=ゴンミー駐イラク・イラン大使で、国家安全保障最高評議会のアミーリー総局長や外務省のアミール・アブドッラーヒヤーン・イラク本部長らが同大使に随行した。他方、アメリカ側の代表団を率いたのは、ライアン・クロッカー駐イラク米大使であった。
協議終了後、イラク政府関係者らは同協議がイラク問題のみを扱うものであったことを認めた。バグダードからの報道によると、イラン・イスラーム共和国と米との間で昨日イラク問題をめぐって行われた公式協議は、非公開で行われた。記者らはイラン・米両代表団が最初に顔合わせをした様子をカメラ撮りした後、この協議を準備した関係者らによって協議会場から退出させられ、協議が開始された。
イラクのヌーリー・アル・マーリキー首相、及びムワッファク・アル=ルバイー国家安全保障上級顧問も、この協議に同席し、イラン・米両者との会談を終えた後、協議会場から姿を現した。マーリキー首相は記者団に対し、「イラクはこの協議の単なるホスト国であるのにとどまらず、むしろその成功に決定的な役割を演ずることになるだろう」と短くコメント、さらに「この協議によって、地域にとって好ましい扉が開かれ、重要な一歩が踏み出されることに期待する」と付け加えた。
▼ カーゼミー=ゴンミー「すべての懸念について、協議の中で明確に述べた」
ハサン・カーゼミー=ゴンミー大使は昨日午後、在イラク・イラン大使館内で開かれた記者会見で、昨日行われた三者協議の結果について前向きに評価した上で、「われわれは、イラク問題に関して自らが抱いているすべての懸念について、明確に申し述べた」と述べた。
カーゼミー=ゴンミー大使によると、協議は3ラウンドに分けて行われ、イランはこの中でイラクにおける占領者たちの役割について言明、イラク統治における彼らの過ちについて指摘したとのことである。同大使は会見の中でさらに、「われわれはまた、はっきりと、イラク占領政策が継続されるならば、イラク人民が直面する問題は増大すると警告した」と語った。
同大使はまた、「われわれがこの協議に参加した主要な動機は、ヌーリー・アル・マーリキー政権を支援することにある。われわれはイラク統治における同国政府の力を強化するためならば、あらゆる側面から支援を提供する用意があることを表明した」とも語った。
同大使は続けて、イランがイラクの不安定化に介入しているとするアメリカ側の主張について、次のように述べた。「このような主張がアメリカから出されるは、今回が初めてではない。われわれは今回の協議で、指摘されたすべての問題に対して、きちんとした回答を行った」。
大使によると、昨日の協議ではイラクの現在の合法的な政権を支持すること、そしてイラク国政に対する同国の主権の回復を支援すべく努力することで、三者は一致したとのことである。同大使はその上で、現在安全の欠如こそがイラクが抱えるもっとも重要な問題であるとの考えを指摘し、さらに「協議参加者らは、イラクの正統な政権が同国の治安を確保するために必要な力を獲得することができるよう、支援をする必要があることで意見が一致した」とした。
また同大使は、「この協議で、イラクの軍事・防衛に関する基礎体力を強化することを目的とした、三者による治安委員会の設立が提起・検討された」と述べた。
カーゼミー=ゴンミー大使はまた、イラク政府関係者が昨日の協議に参集したのは、大変前向きなことだと評し、さらに「この協議は、一つのプロセスの最初の一歩である。イラク政府からは、近い将来に対話を継続することが提案された。これに対しわれわれは、この問題はテヘランに持ち帰って検討し、しかるのちに結論を発表する旨、前向きな視点から表明した」と述べた。
同大使はまた、「協議でもっとも価値があったのは、この協議がイラク政府の提案によって、イラク問題のみを議題とするかたちで、イラク側が取りまとめるかたちで実現したということである」と語った。
カーゼミー=ゴンミー大使は続けて、アメリカによるイラク占領体制の役割について、「アメリカはイラクを攻撃する際、国連の許可を得ていなかった。同国の指導者たちの行動によって、われわれは占領国家を隣国として接することになってしまった」とした上で、「占領後の数年間におけるアメリカの実績を評価するならば、現在の政策を継続しても、今後もイラクの問題の解決は不可能だということは明らかだ。現在の状況を解決するための方法・イニシアティヴとして、今回の協議開催の提案があったのも、そのためだ」と述べた。
同大使はまた、イラクに拘束されているイラン人外交官の問題については、「この件については、今日の協議ではまったく議題に上らなかった。というのも、われわれの考えでは、この問題で責任を負っているのはイラク政府だからであり、イラク政府がこの問題を解決するための必要な措置を採るべきだからである」とした。
大使はまた、イラクの治安確立の責任は同国の合法かつ正統な政府にあると明言した上で、「イランはあらゆる分野で、必要とされる支援をイラクに提供する用意がある」と語った。
カーゼミー=ゴンミー大使は最後に、イラクでの「偽善者集団」〔=イラン反体制組織モジャーヘディーネ・ハルグのこと〕のメンバーの状況について質問され、「イラク政府の決定によると、この集団のメンバーは同国を退去しなければならないことになっており、イラク政府は彼らを国外に追放することに強い決意で臨んでいる」と答えた。
▼ クロッカー大使:イラン人のイラクにおける活動の証拠を提示するために来たのではない
駐イラク米大使は駐イラク・イラン大使との協議後、記者会見に臨み、「われわれはイラクにおけるイラン人の活動に関する証拠を提示するために、今回の話し合いに臨んだのではない。イラン人たちがイラクにいて、活動を行っていることを、われわれは〔証明するまでもなく〕熟知しているからだ」と述べた。
さまざまな報道によれば、ライアン・クロッカー大使は、イラクに関するイラン側との昨日の公式協議について前向きに評価した上で、「イラン、イラク、アメリカの三者は、イラクの安定と安全の確保の必要性について、政治的な合意を得た」と述べた。
AP通信の報道によると、クロッカー大使はイラク問題に関して真剣かつ集中的な協議が行われたとし、アメリカ側の発表では、同協議中イラン側はアメリカ、イラン、イラクの三者による治安機構の創設を提案したとのことである。他方で、イラン大使はアメリカ側との協議後の記者会見で、このような提案はイラク側によって提起されたものであり、イラン側はこれに関連した提案を一切行っていないと述べている。
クロッカー大使はまた、「イラクにおけるイラン人の活動やイラクへのイランからの武器の流入について話し合う予定であると、以前表明していたが」との質問に対して、「われわれの主要な目的は、この件について話し合うべく努力していきたいというものだったが、イラン側はこの問題について話し合う用意がなかった」と答えた。
クロッカー大使のこの発言から明らかなように、アメリカ側は協議の中で予定していたことの一部を実現することができず、逆にイラン側は慎重に立ち回ることで非難めいた議論を提起する機会をアメリカ側に与えなかった模様だ。
▼ イラク政府報道官:「両者はイラク問題に対して責任ある態度を示した」
その一方で、イラク政府当局者らは、「イラン・アメリカ両大使による協議は誠意あるものであり、イラク問題にのみ集中して行われた」と述べた。
イラクのアリー・アル・ダッバーグ政府報道官の発言としてAP通信が伝えたところによると、この協議はイラク問題にのみ集中して行われたとのことである。他方で、ニコラス・バーンズ米国務次官は、「アメリカ市民はイランとの関係樹立に向けて、心の準備をしておくべきだ」と述べた。
▼ 次回協議は1ヶ月後にも
駐イラク・イラン大使は昨日、米大使との会談後、「両者は1ヶ月以内に、再び協議を行うであろう」と述べた。
ハサン・カーゼミー=ゴンミー大使はさらに、「軍事・治安維持を担う新たな機構の創設を目的に、イラン政府はイラクの軍や警察に教育を施し、装備を提供する用意があることを、〔協議のなかで〕アメリカ側に伝えた」と述べた。
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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:11027 )