続く資本の海外流出:イラン企業350社がアラブ首長国連邦自由貿易地区に進出
2007年05月30日付 E'temad-e Melli 紙

 第9期政権〔アフマディーネジャード政権〕にとって「資本流出」や「資本の安全保障」といった語句は、「無意味なもの」、あるいはよく言って「重要性の少ないもの」である。そんなものに着目する理由などないというわけだ。しかし、第9期政権が政権を担ってからこの2年間、これらの語句はこれまで以上に重要性を帯びた語彙となっているようだ。司法権長はこれらの語句を用いて、幾度となくさまざまな形で警告を発しているが、当然のようにこれまであまり注目を浴びていない。

 大統領は「石油マフィア」の摘発に向けて脅迫めいたことばを口にし、アフマディーネジャードと意気投合した国会議員らは大衆好みの言動によって「経済的腐敗」との闘いに躍起となっている。このような例は数多いが、イラン人投資家たちの多くにとっては、不安と戸惑い以外のなにものも生んでいない。

 きちんとした前置きや法的手続きなどを経ることなく政府関係者によって下された突然の決定、あるいは司法機関の判断を経ることなく一部の人々に対して向けられる非難に対するこのような不安や戸惑いは、イラン人投資家たちにとって悪夢となっている。そして投資家たちは早足で、ペルシア湾の南の端にこの悪夢への答えを見出すようになっている。

 ISNAの報道によると、アラブ首長国連邦のラアス・アル・ハイマ自由貿易地区に登録をした会社の数は、3千件をすでに越えているという〔註:ラアス・アル・ハイマはアラブ首長国連邦を構成する首長国の一つ〕。アラブ首長国連邦ラアス・アル・ハイマ自由貿易地区の設置・始動から1年がたった現在、40億ディルハム〔約1250億円〕以上が同地域に進出した企業から同国政府にもたらされており、投資家たちを引き付けることを目的としたこの自由貿易地区は、アラブ首長国連邦が設置した同種の地区としてはもっとも成功した地区の一つとして知られるようになっている。

 ラアス・アル・ハイマ自由貿易地区の責任者を務めるシャイフ・ファイサル・ブン・サクル・アル・カースィミー氏は、同地区設立一周年記念日に際し、「過去1年間で、世界100カ国から3186社以上の企業がラアス・アル・ハイマ自由貿易地区に投資を行っており、国内外の投資家から40億ディルハム(11億ドル)以上の投資が同地区にあった」と述べている。

 西暦で今年の初めに出された最新の統計によると、350社以上のイラン企業がラアス・アル・ハイマ自由貿易地区に登録しているが、この数字はアラブ首長国連邦で活動し、大小さまざまな資本を同国の経済で運用しているイラン人のすべてを表すものではない。

 さまざまな報告によると、ドバイだけで2年前までに6500社のイラン企業が同国に進出しており、3500億ドル近くの投資をこの首長国に行っているという〔註:ドバイはラアス・アル・ハイマなどとともに、アラブ首長国連邦を構成する首長国の一つ〕。

 過去2年間インフレ率が上昇し、その数値は17%以上に達していること、諸々の法律・規制がつねに変更を繰り返していること、経済的腐敗問題に対するスローガン優先の、しかも政治的な傾向の強い「闘い」が〔政府の施策として〕採用され、民間部門が圧力に晒されていること、その一方で制裁が重くイラン経済全体に影を落としていること、これらの要因がさらなる資本の流出を促している。

 このような中で、マフムード・ハーシェミー=シャーフルーディー司法権長は、その他のイラン体制関係者と比べて、資本流出問題をより真剣に捉え、対策の必要性を敏感に感じ取っている人物だ。シャーフルーディー司法権長は以前、次のように強調していた。「われわれは投資家に対して、奨励策を行ったり、特別の便宜を図ることを考えるべき時に来ている。投資家の信頼を獲得し、資本の流出の原因となっている問題への対策を講ずる必要がある」。

 司法権長はさらに、「我が国の投資部門には複数の問題が存在している。これらの問題を取り除かない限り、〔我が国への〕投資が行われることはないだろう。われわれは投資の不在を引き起こしている諸問題を明らかにする必要がある」と述べている。

 ハーシェミー=シャーフルーディー司法権長はまた、次のように語っている。「国外に工場を作り、投資をして、その国に税収と職をもたらすようなことをする理由は何なのか、どのような問題があってそのようなことをするのか、海外に投資をしているイラン人投資家たちに訊いてみる必要がある。投資先となっている国は、イランにはないようないかなる優遇策を投資家のために考えているのか、調査しなければならない。これらの疑問にきちんとした回答が得られない限り、憲法第44条はかけ声倒れに終わるだろう」。
〔註:憲法第44条はイラン・イスラーム共和国の経済体制として、「政府部門」「協同組合部門」「民間部門」の3部門を想定し、各々の領域を定めた条項。国営企業の民営化推進政策の根拠になっている〕

 司法権長はさらに、「世界では、一ドルでも国外に流出させないということが、極めて重視されている。彼らは、国内投資が活発になるよう、資本家を大切にしている」と付け加えている。

 シャーフルーディー司法権長が指摘するこの重要問題は、しかし第9期政権の関係者らにとっては、未知なるもののようだ。

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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:11043 )