作家メフメド・ウズンへのインタビュー
2007年07月16日付 Radikal 紙

なぜメフメド・ウズン氏なのか

トルコでは総選挙にあと一週間と迫った。国内のあらゆる社会問題が論じられるときのように、選挙においてもクルド問題が、そしてこの問題に対するトルコ人とクルド人の見解が論点として現れてくる。互いに傷つけあうことを免れない両者が、互いの言うことを理解し、聞き入れ、互いの要求や心情を尊重することが重要となっている。トルコの最も重要な小説家の一人であるメフメド・ウズン氏は、重い病気を患い、スウェーデンでは医者が死を宣告していたにもかかわらず、ディヤルバクルで何百万ものクルド人とトルコ人の愛情ある歓迎を受け元気を取り戻した。ウズン氏は小説をクルド語で執筆し、その作品は世界中で多くの言語に翻訳されている。トルコ、トルコ人、そしてクルド人についてよく知り、彼らの心理を小説家としての細やかな知性でとらえている。今回、彼にクルド問題をどう解決することができるのか、そしてクルド人の苦しみを終わらせるためにはどうすればいいのかを尋ねた。

(中略)

■ (質問者:ネシェ・デュゼル)過去には多くの人々が苦しみ、不当な扱いを受けてきました。一時はクルド人は母語を話すことさえも禁止されました。しかし現在、EU加盟を進めるうちにトルコの民主化実現の可能性が見えてきました。EU加盟と真の民主主義はクルド人に対し不利な結論を下すでしょうか?

(メフメド・ウズン;以下M.U)正反対に、有利な結論を下すでしょう。クルド人は絶対にEU加盟交渉を支持していかなければいけません。トルコにはEU以外の選択肢はありません。ロシア、イラン、パキスタンとは同盟を組むことはできないのです。それらは権威主義で全体主義の暗い国々です。トルコの唯一の目的は、文化的で民主的、そして透明性のあるEU加盟国としてのトルコであるべきだし、我々皆がこの目的を支えていかなければなりません。さもなければ西欧諸国がトルコの加盟を今のような状態で認めるなど不可能です。4月27日付の軍部による声明を思い出していただきたい。民主主義国家でこのような醜態が起こりうるのでしょうか?軍がこれほどまで政治に干渉し、トルコの後見人のようにふるまい、そして頻繁に声明を出すような国がEUに加盟できるでしょうか?これらが変わらなければならないのです。

■ クルド労働者党(PKK)はなぜトルコで軍事支配を求めるかのように行動していると思いますか?なぜ暴力や民族主義を助長するような戦略を実行しているのでしょう?

(M.U)もちろん私も彼らを理解することは非常に難しいと感じています。クルド人は直ちに暴力的行為をやめるべきであり、そして二度と暴力に訴えてはなりません。一日も早く話し合いによる政治に戻らなければならないのです。EU加盟交渉によって、彼らの前には民主的アプローチと方法で戦う道も開けてきています。クルド人が、特にクルド労働者党党員が求めているのは、独立国家や連邦制の建設や自治権ではなく、個人的権利だけなのです。そのために暴力に訴えるのは間違いです。しかしクルド人が暴力に訴えるのを望む人々もいます。それはクルド人もトルコ人も快く思わない人々なのです。

■ それは誰だとお考えですか?

(M.U)トルコ国内のダークフォース、またはトルコと確執のある国である可能性も高いと思います。私はアメリカ、ヨーロッパを意図しているのではありません。シリア、イラン、ロシアなどの国々とトルコの間には多くの問題があります。いくら友好国のように見えても、これら国々がクルド問題を利用する可能性は常に存在するのです。なぜならトルコはクルド問題を解決していません。解決せずにいれば、他者がやって来てこれを利用するのです。クルド人は、自分たちに暴力を提案するものたちに対し、疑いの目をむけていかなければならないのです。暴力は、トルコを民主化から遠ざけ、深層国家、権威主義、民族主義を助長するのです。

■ 暴力とおっしゃられましたが、道路に地雷を埋め兵士を殺すことは、クルドの人々のためになるのでしょうか?

(M.U)いいえ、何の利益もありません。多くのクルド人がそう言っているのを聞きました。何万人もが私を訪ねてきました。病院で意識があるとき私は彼らに、「あなたたちはこの種の行為に何を期待しているのか?」と尋ねましたが、彼らは何も期待していません。南東部の人々は暴力が完全に無くなることを求めているのです。彼らはあまりにも苦しみました。だからこの行為が無意味で結果をもたらさない暴力であると考えているのです。少数の兵、伍長、大尉が殺されたところで一体何が変わるでしょう?何も変わるはずがありません。クルド労働者党が暴力に訴え始めたのは1980年代の軍政時代でした。ディヤルバクル県軍刑務所では人々が便を食べさせられていました。しかし当時は状況が全く違っていました。現在、我々は全く違う立場にあるのです。全世界もトルコも、トルコにおいて深刻なクルド問題が存在していることをもはや知っているのです。

■ クルドの人々は平和と民主主義を求めているのでしょうか?

(M.U)彼らは心からそれを求めています。基本的に私の見るところ感じるところは、もし政府が少しでも民主主義や、同等の権利、法の下の自由を押し広げれば、クルド労働者党は山から下りてくるでしょう。そして問題は解決するのです。彼らの名誉を傷つけずに闘争をやめることができ、政府は恩赦、または他の手かわかりませんが、措置を講じなければならない。なぜなら彼らもまた、もはやそうした時点に至っているのです。少しでも門戸を広げればクルド労働者党の問題は解決するでしょう。こうして彼らは山から降りて自らを変え、市民生活に適応しようと努めるでしょう。このためにはトルコを民主化することのできる、勇敢に行動する政治家が必要なのです。

■ クルドの人々をよくご存知だと思いますが、彼らは何を求めているのでしょうか?民主的に解決策を模索したいのでしょうか、もしくはこの緊迫、武力闘争の継続でしょうか?

(M.U)クルド人に関し多くの小説を書きました。彼らを理解しようと努める人間として、こう言います。トルコの文化人や権力者は、80年間もクルド人の気持ちを理解することができませんでした。(4月の)軍部の声明では、「トルコ人であることは幸せなことだ、といわなければならない。言わないものは我々の敵である」と述べられた。しかしクルド人にとって「トルコ人であることは幸せである」という理由がありません。山の羊飼いさえ、祖国や文化遺産、何千年もさかのぼる歴史、そして言語が自分自身のものであると自覚しているのです。彼はこれらを学問的に知ることや文化を分析することを知りはしないが、彼の精神状態はそうなのです。彼に向かって「トルコ人になれ」ということは恐ろしい虐待となるのです。受け入れられるはずがないのです。恐怖から、または生活のために「私もまたトルコ人です」ということがあるかもしれません。しかし彼が心からそう感じることはないのです。トルコ民族主義はオスマン朝の終焉時期に現れた、100年程の歴史を持つイデオロギーです。このイデオロギーを作り上げたのも大半はトルコ人ではありませんでした。オスマン帝国領の僻地からトルコへ逃れてきた人々や、移民たちが生み出したのです。それはボスニア人、チェルケス人、グルジア人、アブハズ人、ユダヤ人、タタール人でした。

■ クルド問題はどう解決していくべきでしょうか?

(M.U)未だ、クルド人が住んでいる場所において、クルド語で教育を受けることは禁止されています。特に共和人民党(CHP)デニズ・バイカル党首の支持者は、イラクのクルド人を蔑むため「族長」との表現を用いているのです。法の下の平等という観点からイラクのクルド人について例を挙げましょう。彼らが蔑む族長たちは現在、クルディスタンに住む全少数民族に、特にチュルクマン人にあらゆる権利を与えたのです。チュルクマン語のテレビ・ラジオ放送や学校や政党の設立は自由であり、議会や内閣には彼らの代表者たちがいます。イラクでは近代史上初めて、チュルクマン人たちがクルド人のおかげで、権利を手にしたのです。このためもあって、チュルクマン人の90-95%はクルド人との共存を望んでいるのです。

クルド人にはどんな権利が与えられるべきでしょうか?イラクのクルド人らがチュルクマン人に与えた権利の全てを、トルコ国内のクルド人に与えるべきです。そうすればクルド人はトルコ共和国の国民であることを喜ばしく思うでしょう。しかしこの諸権利の僅かでさえもトルコはクルド人に与えていないのです。キプロスでは15万人のトルコ人のために国家を要求し、そのためにあらゆる手を尽くしているにもかかわらず、自国民である1500-2000万人のクルド人には全く権利を与えていません。ひとりとして将軍がクルド人のために何か発言したのを聞いたことがありますか?逆に退役将軍たちが常にテレビ局を回ってクルド人を侮辱し続けているのです。この侮辱は終わりにしなければなりません。

■ トルコ政府に対し、クルド問題解決のために何を提案しますか?

(M.U)バスクン・オラン氏を始めとした無所属の人たちが多く当選し、公正発展党(AKP)も彼らと同盟を組み連立政権を設立し、その協力をもって新改革に踏み出す、これが私にとっての理想です。国会の門をくぐるクルド人は、賢明なクルド人です。アフメト・チュルク氏を筆頭に、彼らは過去の出来事に学んだ人々なのです。彼らのうち大半と会談しましたが、トルコのため貢献しようという彼らの意思はとても確固としたものです。彼らは挑発に乗ることなく、問題を解決する力と落ち着きを持った人々です。過去に起こったことが二度と起こることがないように、としばしば強調し、また将来に向けた計画を立てているのです。クルド人が暴力や武力から手を洗い市民的な政治に引き戻されること、トルコの民主化、そしてEU加盟の加速化のために、彼らが選挙に当選することが非常に重要です。クルドの人々にも私は、クルド人候補者を支持することを提案します。武力から手を洗った市民的政治がクルド社会で広まるように、そう望んでいます。彼らの議会入りはクルド人にとってもトルコ人にとっても、よい機会なのです。

(後略)

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( 翻訳者:上田悠里 )
( 記事ID:11409 )