スレイマニイェ計画、ユネスコを怒らせる
2007年09月25日付 Milliyet 紙

ユネスコ (国際連合教育科学文化機関)のイスタンブル世界遺産実行委員会メンバーは、スレイマニエで来年以降、2800の建物が取り壊され、代わりにオスマン朝時代の建築様式を用いた新しい建物の建設を目的とするイスタンブル広域市とエミニョニュ区のプロジェクトに対し、反発をあらわにした。

■「イスタンブルに悪影響を及ぼす」
イスタンブル世界遺産実行委員会メンバー、ヌル・アクン教授とデニズ・インジェダユ准教授は、この計画でオスマン朝木造建築の最もすばらしい事例をも含む多数の建築が完全に撤去されるだろうと主張した。同委員会メンバーは、市が過ちを認め、(イスタンブル世界遺産実行委員会と)協働することを呼びかけた。さもなければイスタンブルは、ユネスコの世界遺産リストからはずされてしまうだろうと述べた。

ヌル・アクン教授は、「ユネスコ世界文化遺産」リストに登録されているイスタンブルで行われるリニューアル事業が注視されていることを指摘し、次のように述べた。「我々はスレイマニエでどのような施工がなされるのか、ミッリイェト紙から知りました。少なくとも市が我々に状況を知らせてくれ、計画について説明してくれることを期待していましたのに」

■「これは殺人行為」
エミニョニュ区のネヴザト・エル区長が建て直し計画について公表した詳細を、恐れおののきながら読んだというアクン教授はこう述べた。「トルコも署名した2005年のユネスコのウィーン覚書(訳注1)では、歴史的建築物を取り壊して再建することは問題外であるとされ、そしてこういった行為を慎むよう求めている。(彼らが)このことについて知らないのであれば、我々からこれについて学ぶことができますし、相談することもできますし、意見聴取や支援を求めることもできたでしょうに。しかし今日まで誰も私たちに何も相談しにきていません。なぜ(彼らが)相談しにこないのか、理解不能です。我々が聞いたところによると、キプタシュ社を媒介にして建造物を壊し、鉄骨構造を内部に使って建設するのだそうです。これは殺人行為です」

■「ディズニーランドのよう」
同委員会と国内木造建築連盟のメンバーであるエミネ・エルドウムシュ氏も次のように話した。
「これは、大型のミニアチュルク(建築模型が展示されている公園)、あるいはディズニーランドを建設することと同じです。我々は(市が)ゼイレキでリニューアルをどのように行ったかを目の当たりにしてきました。(市は)同じ方法で2800もの建物を(スレイマニエに)建設するのでしょう。スレイマニエにはせいぜい100軒のオスマン時代の木造建築があります。(市は)それらすべてを取り壊し、鉄骨構造をもつ(しかし外観はオスマン風の)新しい建造物を建設することを考えています。こういう精神で、市壁を修復していると見せかけて、舞台セットのようにしてしまったのです。こういった考えをしている人を誰が、どういう理由があって信じるというのでしょうか。すべてが秘密裏に行われているのです」

■「コストもかかりすぎ」
ルドウムシュ氏は、市により明らかにされた30億ドルの費用も誇張されていると言い、次のように話した。
「国内木造建築連盟は、ゼイレキにある2軒の建造物を修復しました。ひとつは1万9000新トルコリラ(約183万円)、もうひとつは2万5000新トルコリラ(約241万円)を出費しました。この場合でも木材を使いました。木材を使うことが大変困難だから「取り壊して、新たに建設します」とおっしゃるのでしょうか?スレイマニエにある木造建築の魂を、鉄骨で維持するというのでしょうか?保存委員会もユネスコもこれには許可を与えませんよ。保存委員会から許可が下りなかったと聞きました」

訳注1:「歴史的都市景観を管理する上での世界遺産と現代建築に関するウィーン覚書」を指している。

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( 翻訳者:小野寺香織 )
( 記事ID:12008 )