コラム:シリア現体制存続の条件
2007年10月03日付 al-Quds al-Arabi 紙
■ シリア体制は短期的には崩れず、イスラエルとの全面戦争も発生しない
2007年10月03日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP論説面
【ムハンマド・アジュラーニー博士(在パリ、シリア政治生活研究センター長)】
シリア・イスラエル全面戦争が起きるかのような予測が幾つかなされているが、以下の理由によりそれは発生しないだろう。
1.ダマスカス政府は、もしそうなれば、自身が倒れるような戦争に突入するつもりはない。
2.それがイスラム的体制に対抗する政府である故に、イスラエルはその崩壊を望んでいない。
3.体制崩壊により空白が生じるのを恐れているアメリカ、欧州、ロシアは、、シリアで新たな混乱を引き起こすつもりはない。
4.全面戦争により無用の物的人的損害を被りたくはないイスラエルは、シリア内の限られた標的を叩く事で満足している。
5.シリアはそのような戦争にかける経費を用意しておらず、また、戦争が長引いた場合を懸念している。イスラエル側も同様で、こちらは短期決戦であっても及び腰である。
シリア体制の崩壊が外的要因からは生じない理由としては以下があげられる。
1.後を引き受けられる反体制組織、あるいは外部のバックアップを受け、空白を埋められるような真の反体制勢力が存在しない。いずれにしても各方面は、ダマスカスを第二のイラクにするつもりはない。
2.ダマスカスは触れられるべきではないレッドラインであると宣言しているロシアが、既に介入している。ソ連時代の両国関係、ロシアによる軍事支援は未だに続いており、ロシアは常に、その影響力を復帰させる鍵がダマスカスに隠されていると認識している。従って、現体制を揺るがそうという如何なる試みにも、モスクワは力を行使して立ちはだかるだろう。
3.米仏はじめ西側は、ダマスカス体制が予測された程弱くはなかった事を認識した。それどころか、ダマスカスは未だに使えるカードを有している。それが望むような使い方ではなく、かつてと同じ力を持っているわけではないが、各方面を苛立たせるには充分なカードである。
4.レバノンで現在起きている混乱とその国の将来は、欧米にとって難しい問題となるだろう。かの地での火事を鎮火するにはシリアの支援が不可欠である。従って欧米はダマスカスに対して飴と鞭的政策を実施することになる。
5.全般的に見ると、ダマスカス体制は枕を高くして寝られるわけではない。地域情勢、その中の嵐、そこから吹いてくる風は全方面にとり凶兆を宿している。安全圏にいる者はない。パレスチナ人、シリア人、イラク人、レバノン人、全員が安全ではない。
全方面が嵐の中にあって何かを期待するのだが、短期的にダマスカス体制が、外的あるいは内的要因により崩壊、もしくは変化することはないだろう。それが確固とした力を有するからではなく、幾つかの条件がそのしばしの生存に手を貸している。その生存、存続が、健全で公正な基盤の上に成り立っているわけではないのだが。
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( 翻訳者:十倉桐子 )
( 記事ID:12066 )